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2011年度の中学入試のゆくえ② 情報革命

2011年度の中学入試のゆくえ① 草莽崛起たる私学人のつづき

☆チュニジアからエジプトそしてどこまで波及するかわからないが、言論の自由の軛(くびき)を崩壊し、民主化へ向かう運動が起こっている。

☆テレビに映るその様相は、1989年のベルリンの壁崩壊、1889年の明治憲法が成立するまでの下級武士による幕末の革命に相似している。1789年のフランス革命もそうだろう。

☆これらに共通するものは、インターネットを活用したフェースブックこそなかったとしても、常に情報の開放性である。ベルリンの壁では、電話やテレビ、特に衛星放送による地球市民のネットワークによる情報共有であろう。幕末の明治維新は、海上ネットワークによってもたらされた啓蒙書である。自由民権運動に影響を与えた「民約論」は、中江兆民によるJ.J.ルソーの「社会契約論」の抄訳である。

☆万延元年(1860)にアメリカに渡った福沢諭吉は、その後渡航レポートをまとめた。それが「西洋事情」であるが、この書にはアメリカの独立宣言の翻訳を掲載している。英米の政治・経済・科学・文化の事情がまとめられているが、なんといっても独立宣言はすさまじい。ロックの革命権が宣言されているからだ。

☆このルソーやアメリカの独立が、1789年のフランス革命に影響を与えなかったはずがない。そしてさらに1689年名誉革命の大成果である権利章典が成立。そこにはジョン・ロックの啓蒙思想が息づいていると言われている。この革命のルーツは宗教革命やピューリタン革命といった市民革命だが、グーテンベルクの活版印刷が、大航海時代から産業革命を通じて力を発揮したのは間違いない。

☆今、日本の社会でも、熟議だ!ダイアローグだ!カタリバだ!ワールドカフェだ!・・・と叫ばれている。耳を澄ましてその外延的表現の向こうの内包的精神の叫びを聴こうではないか。未来の子どもたちの5つ目の89年、2089年のために。

☆そんなことをずっと思っていたときに、灘中の今年の国語(二日目)の入試問題に出会った。毎年出題される詩の問題で、「新聞」と「新聞紙」の違いを問う問題が出題されていた。

☆情報内容と情報容器の違いのことであるが、5つの89年の流れは、容器のイノベーションではあったが、内容のイノベーションはなかなかうまくいっていない。内容は啓蒙思想(といっても思想家によって考え方はまったく違う)という普遍性であるしかないのだが、常にその内容は空洞化するのだ。だから5つの89年の間は革命後の混乱と戦争が続く。

☆情報内容と情報容器の両方のイノベーションがなければ、コトはうまく運ばない。だからこそ、この「情報内容/容器」の改革こそ時代の要請なのだろう。

☆この情報内容と情報容器は、私立学校にとっては≪私学の系譜≫の精神と理念である啓蒙思想の不易と流行に相当する。

☆しかし経済合理主義的な受験市場は、情報容器の目新しさと流行を重視する。マスメディアも同様である。それに影響を受けた受験生・保護者も消費者という側面では、その影響を受けざるを得ない。

☆私立学校の教師もその影響を受けるが、私学の建学の精神が理念の盾となる。したがって、私立学校の広報活動と教育活動は、「情報内容/容器」という情報リテラシーの革命という意味で「情報革命」の誠の担い手なのである。

☆そういう意味で、中学入試の入試問題が学校の顔であるということは極めて重要な役割を担うことになる。灘中の入試問題のように「情報内容/容器」の情報リテラシーそのものを問うコトができるからである。

☆草莽崛起たる人材が輩出される学校で、そこに入りたいという生徒が増えれば、理念を括弧にいれる塾であるのだから、機をみるに敏である。

☆2011年度中学入試は、「情報内容/容器」というシステムのイノベーションが重要になる。「情報容器」のメイクだけ提唱し、「内容」を無視すると、そこにはバブルが生じる。生徒獲得戦略も同様だ。

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