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中学入試2011トピックs ⑤ かえつ有明の挑戦

☆昨年の今頃、かえつ有明は2つの危機を感じた。2006年に校名変更、キャンパス移転、新校舎建設、共学化、サイエンス科というイノベーションなどを果たし、多くの共学校化した学校のように、一気呵成に生徒募集を成功させた。

☆しかし、昨年5年目、応募者数は伸び悩んだ。2006年当時すでに話題になっていたジェフリー・ムーアの市場や組織のライフサイクル論を読み返し、これがキャズムという溝の時期かもしれないと、広報部隊はアンテナを再び高く広げた。この溝を乗り越えて成熟期に臨もうと会議の日々が始まった。

☆2月4日の国算選抜の入試を新設したり、2日目の午後入試に国算と作文を組み合わせる選抜試験も開発した。

☆応募者数は微増だったが、実受験者数は増加。首都圏受験生が減るという今年の流れに足をとられることはなかった。一つ目の危機は回避。

☆もう1つの危機は、反動的な教育政策の影響。経済不況の影響を救済するための教育政策という名のもとで、都立高校の露骨な進学重点政策、公立中高一貫校の小学校の囲い込み政策。

☆中学受験の大衆化は、無償化や大学進学実績志向に脆い。特に政治的大衆ではなく消費経済大衆は理念で人生設計をしない。損得勘定という経済人バランスで選択判断をする。

☆その判断が臨界点に達すると経済秩序も崩壊するという体験を振り返ることはない。後は野となれ山となれ、いまここで自分がどのポジションにいるかが最重要である。

☆すでに啓蒙時代にアダム・スミスはそのような虚栄による市場の臨界点を理論化していた。そして、最後はそのむなしさに気づき、バランスを保つように「胸中の公平な観察者」が見えざる手を使うのであると。十牛図のメタファーを使った臨済宗の禅の教えにも通じる、市場の悟り。

☆かえつ有明は、創設者嘉悦孝の教えを大事にした。孝こそ原書でアダム・スミスを読み、言うまでもなく東洋思想に通じていた道徳経済同一説の考えを徹した私学人であった。「怒るな働け」という孝の思想は、「怒るな」=「道徳」、「働け」=「経済」の統合を象徴した言説である。

☆嘉悦孝が最も影響を受けた幕末の思想家は、横井小楠である。元祖富国有徳論者であり、グロチウスさながらの国際法的視野を持っていたという。嘉悦孝の精神は、嘉悦がケンブリッジと提携しているというところにも継承されているが、大量消費経済大衆に対し、公立と私立の違いを明確に表現するために、建学の精神の具現化を行った。ケンブリッジ大学における海外研修プログラムの新規開発がそれだ。

☆そして、そのイギリスのパブリックスクールやアメリカのプレップスクールとの交流の文化資源を、2006年以降温め、具現化してきたサイエンス科を進化させた。その証明を「作文入試」で試みた。9月以降の学校説明会で、毎月のように「作文入試」の体験授業を行った。1月までに参加した実受験生は101名。そのうち65%が作文入試に応募。そのうち半分は併願していた1日目のかえつ有明の入試で合格したから、2日目の作文入試はその約半分の34名。そのうち、82%は合格。特待合格者の42%は作文入試の受験生だったということだ。

☆この作文入試は、ディスカッション、ショートエッセイという英米の私立学校の肝をベースにしているということだ。というのも「サイエンス科」とは、高校で実施ているインターナショナル・バカロレアベースのプログラムを中学生が理解・活用できるように再構築したものだからだ。中学入試は学校の顔である。かえつの「作文入試はサイエンス科の顔である」という信念で臨んだ。

☆公立と私立とは、経済的な面だけではなく文化的な価値という面で大きな違いがあることに共鳴・共感する保護者との出会いの場が、かえつ有明の学校説明会であった。2つ目の危機は、不測の世界の経済社会の動揺であるが、それに対処するのは内なる光である理念に準拠する誠の道にほかはないのだと。

Kscience

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