入試問題を視て学校を選ぶ①
☆首都圏の中学入試シーズンは、もちろん受験生と私立中高一貫校の活動がメインであるが、小学校低学年の生徒やその保護者も大いに興味関心を抱く季節でもある。
☆塾の選択、学校の選択の話でもちきりである。実際には、この時期は塾の方はとりあえずは選択し終わっているケースが多いのだが、学校の方はまだまだで、学校選択によっては塾を変えるケースが多いのもこれからだ。
☆塾側から見れば、退塾率予防のシーズンでもある。医療の世界でも、セカンドオピニオンは権利として認めなくちゃという話が当たり前になりつつあるのだから、塾は変えない方がよいなどという話はある偏りがあるのも否めない。
☆子どもが塾を選ぶポイントは、体験入学の質の差。ある塾の体験ワークショップは見事で、すっかり気に入ってしまう。しかし、だからといって塾のカリキュラムやプログラムがよいとは限らない。そこをどう見るのか。そんな話になったりして、保護者と大いに盛り上がるのも今のシーズン。
☆しかし、そんな時も、ときどき急に真剣な話になる。それは今時の低学年の保護者の中には、というか私と話そうなどという保護者はと言った方がよいのかもしれないが、いわゆる受験勉強には疑問を抱く方が多い。
☆海外で活躍する仕事をしている家庭やデザイン、建築、コンサルタントなどの仕事をしている家庭が多いからかもしれないが、ピアノ、バイオリン、バスケット、絵画、英語なども続けながら塾も行きいたいという家庭の文化遺伝子が内側で活発に動くようだ。
☆そのような家庭だけでなく、ここまでは、低学年のうちは、どこの家庭でも思うものだが、実際に高学年になったときには、受験勉強一筋になりやすい。おそらく塾側もそのように指導するだろう。
☆なぜそうなるかというと、ピアノや絵画、英語・・・などがオケイコの域から抜け出ていないから、横断的な思考力や連動する有機的つながりを実感できなくなるからである。
☆それで、そんなとき、中学入試問題を視ることをオススメする。今年もすでに四谷大塚のサイトでは、続々公開されているから、視てみるとよいと思う。
☆麻布や開成、武蔵、桜蔭、雙葉の国語の問題は、ほとんどが記述問題である。文章テキストのテーマも、近代の矛盾やその中で葛藤する人間のドラマを描いているものが使われる。
☆今年は麻布と桜蔭の国語の問題で、昨年亡くなった井上ひさしの文章が使われていた。今なぜ井上ひさしなのか。そんなことも考えさせられる。
☆桜蔭の国語の一番の問題と、麻布の社会、武蔵の社会、開成の国語の二番の問題は、近代の矛盾を問う問題。なぜ近代を問うのか?それは≪私学の系譜≫であれば当然だという意識が現れているからだ。私学人として、市民として、身近な問題が、個人的問題ではなく、富国強兵・殖産興業時代から続いている優勝劣敗思想の煽りを受けているのではないかということを問いかけている。≪私学の系譜≫は、どちらかというと自己責任論主義ではなく社会構成主義的なものの見方をするから、なるほど当然ではあるが。
☆ともあれ、低学年の受験生の保護者が悩むのも、そこにつながっている。
☆そこで、このような入試問題を出題する学校を選べば、受験勉強はいきなりリベラルアーツになるのである。模擬試験のような問題を出題する学校を選ぶと、受験勉強になるのである。慶應大学のように、大学入試センター試験から離脱し、テストの中身を真剣に考える時代が到来している。欧米のテストというのは(システムが違うからここではざっくり)、やはり思考力や表現力をベースに作成されている。リベラルアーツの伝統があるからである。
☆それが良いか悪いかは、また検討しなくてはならないが、少なくともグローバル人材が要請されている日本にあって、いくらなんでも従来の模擬試験のようなマルチョイ(選択肢)ベースであってよいはずがない。もちろん、マルチョイ型でも、非常に巧んであるものもある。ラフな記述の問題よりも、はるかに才能を試すことができるマルチョイもある。しかし、それはレアケースであるのも事実である。
☆入試問題そのものよりも、解答欄を見れば、マルチョイ型か思考力=表現力型かがすぐにわかる。
●麻布の国語解答欄
●開成の国語解答欄
●桜蔭の国語解答欄
●雙葉の国語解答欄(漢字の書き取りの解答欄は略)
☆それから、麻布の社会は、東京湾をめぐる都市デザインの問題。問いの本質は、いかにして近代の矛盾を乗り越えられるのか?である。桜蔭の国語の1番、武蔵の社会も同構造の問題であり、国語と社会が連動しているということがわかる。この連動とか横断というのがリベラルアーツのポイント。この視点があれば、芸術やスポーツは結びつく。この視点を学べる入試問題を出題している学校を選べば、受験勉強一路にならない。合格一路ではあるが、受験勉強一路である必要はない。
●麻布社会の最終問題。かえつ有明のための問題かと思ったが。
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