受験市場の情況⑤
[気になる男子校]
[気になる女子校]
[気になる共学校]
☆受験市場において塾が鎬を削って合格者数を競う学校(受験市場のブランド校)をみると、SAPIXがいわゆる覇者であるということは間違いない。
☆合格者数も11日の繰り上がり合格者の数も勢いがある。これに対して、日能研は、企業として、経済合理性だけでマネジメントしていくかどうかそのビジョンの行方は興味深い。
☆早稲田アカデミーは、このグループ以外の合格者以外の公表に偏りがあり、偏差値上位校で受験市場を形成していこうというビジョンが明快。これに比べると、SAPIXは、偏向主義からは脱皮しようという方向性はみえる。代々木が背景にあるのだから、経営戦略としては範囲は広くなるのは当然だ。
☆ただし、日能研と比べると、偏差値と大学進学実績を学校選択の指標としている傾向はある。
☆受験市場のブランド校の合格者をいくら比較しても、中等教育の将来性の変化を知る手掛かりはないかもしれない。
☆しかし「気になる学校」として一覧にした学校の合格者の比較は、各塾の特長が表れているし、それゆえ、将来受験市場の質の変化をもたらす可能性が見え隠れする。
☆私学市場としては、大学進学実績や偏差値だけで学校選択されるのでは、教育の質の劣化を意味するので、偏差値という限られた学力の量の競争ではなく、教育の質の競争によって、競争的共在のビジョンを持っている。
☆量の競争は、優勝劣敗思想であり、東大初総理の加藤弘之以降の≪官学の系譜≫の流れであり、優生学的発想で極めて危うい。質の競争は、多様性の競争でもあるから、寛容の原理が働き、アンチ優生学的発想である。これが≪私学の系譜≫であるが、私立学校の中にも、≪官学の系譜≫に流れていっているところもあるし、≪私学の系譜≫を継承し続けているところもある。
☆この私学間の葛藤は、都道府県の私学中高協会の重要な問題であり、今後の私学市場の行方を決定づけるものでもある。
☆この私学市場を≪私学の系譜≫を持続可能にするコミュニティマーケットとして支援するビジネスモデルを明確に打ち出す可能性のある塾はどこだろうか。私学市場に≪官学の系譜≫の流れを注ぎこみ、経済合理的なビジネスマーケットのコントロール下におこうという塾はどこなのだろうか。
☆どちらが良いか悪いかという話ではなく、教育が人をつくり、社会をつくり、国をつくり、世界をつくり、思想をつくり・・・ということは古今東西共通した考え方である。
☆そして考え方である以上、社会的正義を重視するのか、個人の自由を重視するのか、富裕という所有欲を重視するのか、共通善に基づいた人格を重視するのかは、これもまた多様性として個人の選択を尊重しなくてはなるまい。これをうまく整理してくれたのがサンデル教授だったわけだが、大事なことは、このすべての選択の可能性が維持されることなのである。
☆優生学的発想がいきすぎると、ナチの強制収容所の結末を迎えるが、だからといって、遺伝子工学を廃棄するわけにはいかないだろう。むしろ遺伝子工学の重要な知をどのよおうに生かすのか議論しなければならない。
☆また、行きすぎないように社会的正義や共通善をどのように設定するのか議論しなければならないだろう。
☆ことは複雑だし、本当の意味で熟議というディスカッションが必要なのであるが、目先の利益を重視する風潮は、この熟慮を嫌う。結果、価値観の偏向主義が支配する。
☆目先の利益を獲得すために横行するのは、恣意的な基準の神格化である。デファクトスタンダード。簡単に言えば、声の大きいヤツや量の大きいモノが、基準になる。
☆これは民主主義や自由主義に反する風潮。事実からは権利も義務も生まれない。権利や義務は人の多様な生きざまのぶつかり合いの中で、均衡価値が生まれ、それが権利や義務になるはずなのだ。だから熟慮の議論が大事だというのが、伝統的な民主主義の発想である。
☆この発想を無化しようという価値は、結局自由経済をも最終的には無化するわけだから、どこかで気づくし、そこには見えざる手が働くことを期待するが、子どもは生まれる時代を選べない。見えざる手が働くまで、放置しておくわけにはいかないのではないだろうか。
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