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グッドスクール研究[01] 広尾学園①

☆転機の2011年中学入試も終わり、グッドスクール方程式={家庭の高文化資本×学校の高文化資本×創造的能力選抜=新公共的な人材輩出}を満たす私立学校が生徒募集戦略を成功させた可能性が高い。成功した私学がグッドスクールであることを検証していきたい。

☆2011年中学入試で、新しい選抜試験である「特待IS入試」を実施し、思考力・表現力・応用力のある人材の確保に大成功した広尾学園をまずはご紹介したい。

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(新築校舎のファサードが倍の大きさになっていた。新中1は完成した新校舎で入学式を迎えられるかもしれない)

☆1月20日、東京の私立中高一貫校の出願初日。同日昨対比は86.3%。多くの私立学校で激震が走った。5%から7%ぐらいの減少は覚悟していたものの、その倍以上の出願減少状況だったからだ。

☆しかし、そんな中にあって、広尾学園自体は、同日対比は昨年と変わらなかった。1回から4回の総応募者数もあまり変わらなかった。それどころか、実受験者数は過去最高となったという。

☆その勝因の一つは、高文化資本を有している家庭力、特に父親の了解度の高さにあると大橋学園長は語る。たとえば、中1の段階で50%近くの生徒が英検3級を合格する勢いであるが、それは中3までに全員が2級合格という目標があるからだ。

☆そして、この準2級ではなく2級でなければならない理由を了解できる見識の高い父親やグローバルな世界で闘う仕事を日々動かしている父親がたくさんいるということである。準2級と2級では、たんに難度の差があるというのではなく、英語を学ぶから英語で学ぶという「を」から「で」にシフトする転換の差異があるのである。

☆そしてその学びの転換を、中3の英語のプレゼンテーションを見学することによって、父親は実感・体感するのだろう。

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☆学校の高文化資本であるが、これは同校のサイトを開けば、溢れるほど豊かであることがわかる。たとえば、サイエンスラボのサイエンスコミュニケーションの環境を訪れる保護者は、決まって感嘆の声をあげる。もちろん、それだけではない。多様で多角的な視点を身に付けられるプログラムが目白押しなのである。3月12日の慶應義塾大学SFCで開催される「新しい学びフェスタ」においても、広尾学園の講座が紹介されるほどだ

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☆もっとも、その日は、キャリア教育の一大イベントのスーパーサイエンスデーであり、最先端と最前線の科学への知的興奮で同学園のキャンパスは満たされてもいるはずだ。

☆しかし、大事なことは、これらすべての教育活動の軸があることだと語るのは池田副学園長。それは学園長講話であると。この講話のシステムと内容が実に奥深い。「自律と共生」「論理によって根拠づけられた倫理観」を養うプログラムであり、このプログラムは生徒のみならず教職員全体も学ぶ態勢になっている。講話終了後、生徒たちがクラスで廊下で議論している姿は、感動的瞬間であるようだ。さらに家庭に帰ってからも、父親に議論を挑む生徒がいるという。この学園長講話の詳細は別の機会に考察したい。

☆創造的能力選抜としての入試問題は、そのような同学園のアグレッシブな教育活動がそのまま反映していて、まさに入試問題は学校の顔であるという人口に膾炙されたフレーズがそのままあてはまる。思考力と記述力というより論述力を、すべての教科で問いかけている。作問者である若手の教師に、このような問題をつくるのはたいへんでしょうと尋ねると、生徒が考え抜くような問題を組みたてるのは大好きですからと、なんて愚問をきいてくるのかとたしなめられたが、気概が伝わってきて、小気味好かった。

☆そして、今年の入試で導入したさらに思考のレベルの高い問題は、私の力では説明しきれないほど興味深い思考論述型の問題であった。もしもこの思考論述レベルの生徒がたくさん入学してきたとしたら、近い将来中学受験のパワーポジションは転換せざるを得ないだろう。

☆さて、このような家庭と学校の高文化資本とそれを拡大再生産する創造的能力選抜システムは、「自律と共生」「倫理と論理の弁証法的統合」を身に付けた新公共的な人材が輩出されることは間違いない。進学実績という点からいっても、広尾学園になってからの中1生が高3になって卒業するのは2013年でありながら、今年、はやくも目覚ましい実績を生み出している。国公立の発表が終われば、全貌が明らかになるので、期待したい。

※)校舎の写真以外は、同学園のサイトの写真から。

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