中央大学 転機の教育システム構築へ
☆すでに「中央大学横浜山手中学校・高等学校の学びの構造」で、今月3月8日(火)、中央大学理工学部「段階別コンピテンシー育成教育システム」報告会(就業力育成教育プログラム実行委員会)が開催されたことをお知らせした。そしてこう書いた。
、「中高のリベラルアーツ」と「大学の就業力あるいは学問知(人によって進路選択が違うだろうから)」の内的連関の構造を見える化しようという試みなのだろう。
☆当日、参加することができなかったが、事務局の方から当日配布された資料を送っていただいた。東北関東大震災が起こり、帰宅難民となって次の日帰宅したら、すでに届いており、人のつながりに思わず感謝した。
☆被災された方々や安否の行方がわからない方々の平安を祈りつつも、資料に目を通したら、予想以上に教育ビジョンやコンピテンシーの意味が明快で、なおかつコーディングの仮説が簡明・明快・精緻にできているのに驚いた。
☆震災関連の政府とメディア、東電のやりとりをみながら、資料のコンピテンシーカテゴリー表に照合し、5段階(0~4)のうちレベル1であるのに気づき、今度は愕然とした。
☆それに比べ、被災された方々が、すべてのリソースを失い、親族・知人と連絡がとれなくても、冷静に助け合いながら、前進しようとしている姿が最高レベル4で活動しているのを見て、そのGAPに三度驚いた。
☆「段階別コンピテンシー」はまず7つの大項目に分けられている。
①コミュニケーション力
②問題解決力
③知識獲得力
④組織的行動能力
⑤創造力
⑥自己実現力
⑦専門性
☆そしてさらに、各大項目は小項目(全部で33)にわかれている。そして、項目ごとにレベルが設定されている。レベルは0から4までの5段階。33×5=165のコンピテンシーのカテゴリーがレベル分けになっている。
☆このようなコンピテンシーのカテゴリー化は、すぐにコーディングにシフトできるから、パソコンやスマートフォンから入ってインターネット上で、学生が自己評価するとすぐにレーダーチャートでリフレクションできるわけだ。
☆もちろん、TAが参与的観察をして、評価できる。互いのGAPをどのように読むのか対話ができる。スタンフォード大学のエンパワーメント・エバリュエーションを学生が自ら他者と協働しながら使えるのだから、アイデンティティエコロジカルな発想ではないか(自己組織化という言葉を使いたくなかったので、カタガナ語でご容赦を)。
☆また、このレーダーチャートはポートフォリオになるから、就活のときに人間力をどのように育成してきたかが伝わりやすい(伝えやすいではなく)。
☆コンピテンシーのうち①から⑥の大項目の力はリベラルアーツの構成要素に重なる。そして⑦の力が専門性である。(だから、①から⑥は私立中高一貫校の場合は大学入学前にトレーニングできるのだ。公立学校は相当創意工夫しなければできない。学習指導要領にはリベラルアーツのリソースはわずかしか想定されていないから)
☆よく専門性は高いが賢くない高学歴者の話題がでるが、この段階別コンピテンシーのカテゴリー表(むしろコード)で表現すれば、実に簡明で明快である。専門性のレベルは4だが、コミュニケーション能力のレベルは1ということがあり得るのである。
☆また、大学の入試問題はほとんどが、レベル1か2。小論文試験は知識獲得力のレベルが3で、問題解決力のレベルは2。帰国生入試は、6つの力どれもレベル3以上を測定する選抜試験になっている場合が多い。そんなことまでわかる。
☆偏差値は、知識獲得力レベル2までしか測定できない。脱偏差値とはよく叫ばれるが、このコンピテンシーコード表に照合すれば、偏差値のみの活用という行動特性がいかにおそろしい誤った使い方かがわかる。(偏差値という統計処理自体は良くも悪くもない)
☆偏差値という発想のコードだけで情報が受発信されているとするならば、当然ながら情報は隠蔽され、伝達速度は切断され、カオスが生まれるのは当然だ。ベルカーブの予定調和発想では、今回の東北関東大震災のようなピーキーな変動を予想できないのは当然だった・・・。教訓となるが、それにしてもあまりにも大きな犠牲。。。
☆しかし、今回の震災でわかったことは、上下水、エネルギー、情報、生命などすべての循環を広義の意味で情報生態系とすると、つまり、自然と社会と精神の生態系はもともと断片的で浮遊し、カオスだった。カオスの状態を日常と錯視できる状態だったということだろう。
☆それがコンピテンシーコード表を見れば一目瞭然だ。このコーディング全貌が、情報生態系のシステムそのものであったはずなのに、今までは限られたコードだけで綱渡りしてきたのだから。しかも、この情報生態系とてまだ仮説である。。。
☆中央大学といっても、理工学部からの発信というのが大切だ。理数系的発想があるから、量的研究のみならず、質的研究もできるのだ。文系であると、どうしても主観を排除するから、質的研究はアウトサイダー的存在になってしまう。
☆これからは、被災者の方々のメンタルケアが重要になってくる。そのとき対話することが重要であるが、コンピテンシーコードのレベル4をトレーニングされている人材が必要になってくるはず。なるほど、このコーディングをするのに、IQとEQの座標系モデルで説明している資料があったが、実に興味深い教育システムの開発ではあるまいか。
☆このコンピテンシーコード(情報生態系を反映するカテゴリー)はいかにして可能だったのか。その質的リサーチの手法やエスノメソドロジー的手法、ハーバード大学の新学習理論や教育心理学の手法などなど参考にしながらも独自のコンピテンシー構造分析とその理論、活用技術を開発する知の理解は、私の理解力を超えているが、初等中等教育・大学・社会をつなぐ転機の教育が生まれようとしているのは確かではないだろうか。
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