私立学校に望むは、批判と打開策の統合
☆毎日新聞(2011年3月29日)によると、
東京電力は28日、東日本大震災で被災した東京電力福島第1原発1~3号機のタービン建屋外にある「トレンチ」と呼ばれるトンネル状の穴の中に水がたまり、2号機では1時間当たり1000ミリシーベルトを超える高い放射線量が検出されたと発表した。建屋地下の汚染水がトレンチに漏れ出した可能性がある。また同日、敷地内の土壌から毒性の強い放射性物質のプルトニウムが検出されたことも明らかにした。いずれも炉心内で作られる放射性物質や放射線量で、11日の被災以来指摘されていた核燃料や格納容器の損傷の可能性が高まった。
☆風評被害など生みだしている場合ではなさそうだ。冷静に情報をすべてオープンにして、アメリカやフランスからなどの原発専門家の智慧も結集して、解決しなければ、ことは日本だけの問題ではない。ここでもドメスティックからグローバルへ・・・。
☆そんな中、ジャーナリスト広瀬隆氏(ダイアモンド・オンライン 2011年3月16日)は、「破局は避けられるか――福島原発事故の真相」で、すでにこう批判している。
津波そのものによる天災は、避けることができない。これは日本の宿命である。しかしこの悲惨な原発事故は人災である。それを起こした責任者は、電力会社だけではなく、これまで何もこの事態を警告をしなかったテレビと、テレビに出てデタラメを解説している専門家と呼ばれる大学教授たちである。
☆と批判するが、一方で、未曾有の放射線量の中で、原発事故修復作業に挑む方々に敬意を表し祈るようなエールを送ることしかできない無力感に支配されている私たちは、この批判をどのように受け入れ切り返せばよいのだろう。ことは政府やメディア、学問知の問題というより、人類が近代の道を選んだ時、その矛盾を放置しておいたツケであるというところまで、議論できる時はまだ先のような気もする。つまり、田辺元によると、批判は結局他者も自己も含んだ絶対批判でなければならないが、現状では相対批判で終始するしかない。二重の無力とはまさにこのことなのか。
☆そんなとき、永松 伸吾氏(関西大学准教授)は、≪今回の震災復興は従来のやり方が通用しない「キャッシュ・フォー・ワーク」日本版の提言≫を日経onLine(2011年3月29日)に掲載。
☆広瀬氏が言うように、津波の大惨事の次に起こった原発震災の被害は、従来のあらゆる価値観や方法論が通じない次元を拓いてしまったのだろう。松永氏はこういう。
多くのエコノミストは復興需要に期待し、楽観的な見通しを立てる。一時的に日本の経済成長は失速しても、やがて発生する復興需要によって経済は成長軌道を回復するというわけだ。だが、今回の震災のようなかつてない規模の災害からの復興事業は、困難を極めるだろう。建設市場の規模が縮小し続け、建設業の従事者が減少していることからも、相当な時間がかかることは間違いない。
☆したがって、増税や公債発行によって乗り切ることはできないのだと。では、どうするのか。被災者の方々の雇用を生み出す政策が大事なのだと。ただし、労働という源泉徴収のシステムを機能させないので、あくまでも活動であり、それによって利益ではない費用が支払われるシステム。協力して活動することこそ心に燈をともすエネルギーであると。
☆政府が主体ではなく、あくまで民間委託事業である。政府や海外、企業、NGO、NPOの支援をコーディネートし、その活動メンバーに被災された方々を受け入れるというシステムである。このCFW構想は、
勝間和代氏や稲葉振一郎氏(明治学院大学教授)、本田由紀氏(東京大学教授)、飯田泰之氏(駒沢大学准教授)など多数の論客に加えて、ジャーナリストや都市計画の専門家、一般市民を交えてこのCFW構想について活発に議論している。
☆ということである。第一段階は、とにかく被災地に不足した物資やエネルギーを届けることが最優先である。今もまだそれは十分に達成されているとは言い難いのが現状である。
☆しかし、次の段階としては、CFWのような構想がデザインされるようになるのであろう。
☆ただし、これは、従来の経済や政治の価値の転換を意図するものではない。むしろ反復の回復であるから、広瀬氏の批判に回答するものではない。
☆解釈や批判より実践であるのもわかるが、その実践の正当性や信頼性、妥当性を議論する時間をどこでつくるのか。それも現実的問題である。
☆この時間を創ることができるのは、学校という教育の時空だろう。しかし、ここでは、科学と宗教と哲学と倫理の関係総体主義的な基礎がなければならない。この基礎がある学校の多くは私立学校に集結している。
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