新しいタイプの中学受験塾
☆2004年に設立された「学習塾ロジム」代表苅野進氏の書籍「小学生からのロジカルシンキング」が出版された。
☆本書を読んで、苅野さんとは面識はないが、新しいタイプの中学受験塾(もっと対象は広いのかもしれない)がすでに誕生していたのだと感じた。
☆ロジカルシンキング自体は、それこそSAPIXでも日能研でもどこでも授業の中で活用されているだろう。ただし、その方法論は、どこか受験テクニックという古風なイメージを払しょくできないのも確かだろう。
☆しかし、本書の冒頭に例として取り上げられている麻布や東大の問題をはじめ、良質の入試問題は、受験テクニックとは名ばかりで、本当はロジカルシンキングが求められている。塾の古風な戦略がそう名付けてきただけなのであって、当局はもとからロジカルシンキングを要求していたのだが。
☆ところが、学校と受験生の間に、媒介として介在している塾が、それを「受験テクニック」と名付けておいた方が、消費者がありがたがるのではないかという商品戦略をたてたのだろう。今となっては、それが学びのバイアスになってしまっている。
☆政府と企業がベースの生活世界では、このロジカルシンキングが必要であることは、誰もが知っている。そうそう苅野さんの本の中では、ロジカルシンキングは結局クリティカルシンキングであることも語られていることを見逃してはならない。
☆それはともかく、塾という世界では、それが「受験テクニック」であったのである。語呂合わせで覚えることでさえも、実は音韻と名称のイメージの結び付きのロジックがあるのかもしれないのだ。ここは脳科学にまかせるが。
☆またまたともかく、「学習塾ロジム」はそのバイアスを矯正する役割を果たすかもしれない。とするならば、「学習ロジム」のようなニュータイプの塾と私立学校は、学びにおいてカップリングができる。受験市場と私学市場のシナジー効果が生まれるのである。
☆たとえば、かえつ有明の「サイエンス科」という授業は、中身はロジカルシンキング及びクリティカルシンキングを養うプログラムである。しかし、この言葉を使って学校説明会で語ると、受験生や保護者は了解してくれないのではないかという配慮から、サイエンス科の授業の試験科目をわざわざ「作文入試」という表現で実施したのである。
☆しかし、訪れた父親は、すぐにマインドマップやロジカルシンキングのプログラムであることを見抜き、担当の先生に鼻をふくらませて質問していたシーンもあったほどだ。
☆多くの塾で、思考力と表現力を訴求する。しかし、それはまだまだ「受験テクニック」と置き換えられてしまう。それを苅野さんは、もともとコンサルタントだったということもあり、あっさり「ロジカルシンキング」という表現で講座を立ち上げてしまったのであろう。
☆苅野さんは東大出身。東大の「知識の構造化」と「自律分散協調系」の知の路線の影響を受けているのかもしれない。
☆このタイプの学習塾は、対話やディスカッションが必要となるから、マスプロでも個別対応でもない本物志向の学習環境を形成する可能性がある。
☆学校でも大手塾でも家庭教師や個別塾でもない学びの環境。21世紀型教育の拠点作りは、いよいよシフトするのかもしれない。
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