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海城学園 大きく変わる準備できた

昨年6月、海城学園が高校入試を廃止し、中学から帰国生を30人募集することになった話を書いた。

☆その背景に、世界のパワーポジションが変化する予兆があることに触れた。世界の変化がなんで中学入試に影響するのかと思われる方もいるだろう。

☆しかし、一方で世界の変化の波動を個人が生活世界の中で感じとれる世の中であることも実感・体感しているのも確かだ。

☆経済市場システムを形成する企業資金回収システムと雇用システム、保険や年金、医療などの社会保障システム、システムを動かす知の再生産をする教育システム。

☆1989年以前までは、経済市場システムが持ちこたえていたし、バブルがはじけ日本型経営が変わるといわれながらも、大企業では、結果的に逆に強化してしまう動きになり、雇用システムや社会保障システムは、21世紀に入っても動かなかった。この判断は大雑把と言われるかもしれないが。。。

☆ともあれ、政権交代をもたらすほど、その動かないことに対する抑圧感が膨らみ、大議論にはなったし、今もなっているが、会議は踊れど政策は紆余曲折で、一貫しない。それゆえ、湖のさざ波ほどの影響しかないのがガラパゴス日本なのだろう。

☆しかし、世界のパワーポジションは変わり、それに対応するには少子高齢化が加速化し、対応できない日本。未来を支える人材輩出は必至である。

☆つまり教育システムは変わらざるを得ない。海城学園が、完全中高一貫体制と帰国生門戸開放に踏み切ったのは、そういう時代精神を汲み取ったがゆえであろう。

☆それは、実際に今年の帰国生入試の問題に反映されている。海外の日本人学校出身者は一般入試と同じように、算数・国語・社会・理科・面接という入試(Aコース)だったが、現地校やインターナショナルスクール出身者は、算数・総合・面接という試験(Bコース)だった。

☆このBコースの「総合」の入試問題が、海城学園が今後大きく変わる準備を映し出していたのである。グローバルスタンダードの教育を受けてきた帰国生を、どのように受け入れるか。国際学級のようなパーツを創るのか、海城学園全体を国際学級なみにするのか、つまりグローバルスタンダードを換骨奪胎するのか。

☆海城学園は、後者を選択したようだ。「総合」の入試問題は、それゆえOECD/PISAの読解リテラシーのクライテリア(考えるレベルの基準)を参考にして組みたてられている。丁寧に、PISAの作問デザインの手法にそって、「①情報の取りだし②解釈③熟考・評価のカテゴリー」の問題を作成しているのである。テキストも文章だけではなくグラフや図を解釈、熟考評価するものも扱われており、まさにPISA型である。

☆しかし、素材の難度や考えるレベルは批判的思考まで問うもので、15歳対象のPISAに比べ12歳の中学入試問題の方がはるかに難しくなっている。

☆これはたんなるクリティカルシンキングではなく、リベラルアーツとしてのクリティカルシンキングとは何かについての学内研究の成果の表れでもあろう。

☆1992年から海城学園は、将来委員会を発足し、様々な教育改革を行ってきたが、今年の中学入試の動きは、2008年からはじまった3rdステージの委員会の成果の一端である。

☆外部の人間がこの端緒から、学内の全貌を予測することは不可能だが、ともかく小手先の入試改革ではなく、中長期の将来委員会の智慧と実践的取り組みの賜物であることは推測に難くない。

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