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2011年4月

私立学校と公立学校の違い 「座談会」で(了)

☆20世紀型教育と21世紀型教育の違いは、前者は、学力の上下が、自信格差につながるが、後者の学力の上下は、相対的かもしれないが、自信格差につながりにくい内面的座標軸が育成される確率が高いということである。

☆公立中と私立中の違いは、この違いがはっきりでるわけである。しかも私立中学にとって、21世紀型教育とは、実はもともと明治維新以降の優勝劣敗発想の官学と権利の闘争をしてきた私学の教育の一部にすぎない。近代の矛盾を受け入れつつ、その痛みをどう解消していくかという近代という枠組みの中では時代を超える普遍的な理念教育が私学の教育なのである。

☆だから、公立中の中における20世紀型教育と21世紀型教育以上に、公立中と私立中の教育の違いは大きくなるのである。

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私立学校と公立学校の違い 「座談会」で⑤

☆紹介した「神奈川県の公立中学校の生徒と保護者に関する調査報告書」から、本田教授は、次のような相関ランキングをデータ化している。「学力」重視の教育。つまり20世紀型教育を受けていると思っている中学生の学校生活における相関項目のランキングは、次のようになるという。

①日常生活満足度

②授業満足度

③文化祭・体育祭取り組み度

④学校生活満足度

⑤友人満足度

⑥部活動に満足

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私立学校と公立学校の違い 「座談会」で④

☆今回の座談会では、「20世紀型教育」と「21世紀型教育」というキーワードというかメガネを通して展開がなされたわけだが、それは東大教育社会学本田由紀教授が中心となって、ベネッセコーポレーションのシンクタンクが協力支援したアンケートなどの調査結果である「神奈川県の公立中学校の生徒と保護者に関する調査報告書」を活用したからである。

☆それと1つ明かにしておかねばならないことは、この報告書を私立学校と公立学校の違いという対比メガネで見ない限り、「20世紀型教育」でもない「21世紀型教育」でもないそれ以上の教育を実践している「私立学校の教育」というのが本当のところ見えてこないということなのだ。

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私立学校と公立学校の違い 「座談会」で③

☆座談会のテーマは、制度的違い、偏差値の違いの次に3つめのテーマに進んだ。偏差値や学力スコア主義で生じる意欲格差だとか自己肯定感をもてる組みと自己否定感を持ってしまう組みの格差を吹き飛ばし、自信を持って学園生活をすごせる教育力そのものの話だ。

☆この違いを理念的に私学の先生方が語ると、我田引水として受けとめられかねない。そこでよいデータがないかなと探してみると、東大の本田由紀教授とベネッセのシンクタンクが協力して分析した「神奈川県の公立中学校の生徒と保護者に関する調査報告書」がホームページで閲覧できるのを見つけた。

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私立学校と公立学校の違い 「座談会」で②

☆座談会の2つ目のクエスチョンは、偏差値で学校を選択することは意味があるのか?だった。その前に、全国の中学生で私立中学に通っている割合はどのくらいか、会場に訊ねてみた。

☆するとやはりほとんどの保護者が認識していなかった。偏差値は母集団によって、まったく異なるのだから、相対的な結果に過ぎない。私立中学に通っている生徒はおよそ7%である。さらに首都圏に限れば、およそ3%。

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私立学校と公立学校の違い 「座談会」で①

☆昨日17日、聖学院ホールで、4校の私立中高一貫校が集い、受験生の保護者に「座談会」を催した。参加校は、聖学院、洗足学園、富士見丘、女子聖学院。

☆テーマは「私立中高一貫校とは何か」であったが、公立学校と比較しながら、まずは制度的な違いや教育の質の違いについて語りあった。その違いについて、4校は一致しながらも、具体的な取り組みの違いも出て、興味深い座談会となった。

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白鴎東大5名輩出についての記事

☆都立中高一貫校である白鴎(東京都立白鴎高等学校・附属中学校)の1期生から東大合格者が5人輩出されたことについて、マスメディアは注目しているが、比較的詳細に書いている記事に「都立中高一貫に期待高まる 白鴎の初卒業生、東大合格現役5人 Jcastニュース 2011/4/11 19:59」がある。

都立としては初となった中高一貫教育校、東京都立白鴎高等学校・附属中学校。2005年の開校から2011年3月に一期生たちが卒業を迎えたが、東京大学への合格者を現役で5人と「躍進」した。専門家は「目標通りの成果が出せた」と指摘する。・・・・・・朝日新聞出版「週刊朝日」(4月15日号)によると、都立高校の東大合格者数は、進学校の日比谷高校と西高校の29人、国立高校の13人、戸山高校と八王子東高校の7人で、白鴎高校の5人はそれに次ぐ人数。白鴎高校の東大合格者は直近が10年前に1人だったというから、現役で5人を輩出したのは「大躍進」と言える。また、東大以外にも、一橋大2人、筑波大4人、早稲田大38人、慶應大15人、上智大13人の合格者を出した。

 

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かえつ有明の教職員さらに一丸となる

☆3.11。この日、東京では多くの帰宅困難者がでたのは、誰も忘れはしないだろう。そして原発事故。地震と津波と原発事故は、強烈に自然と科学と倫理の分断の凄惨な結末を私たちに表現した。

☆この重要性を、かえつ有明の教職員は、100人の生徒と夜を共にする中で、痛みとして感じた。そして、その痛みを共有したもののみが立ち上がれる何かをしようと、果敢に共にいる生徒の命を感じながら、決意したという。

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立教女学院の卒業の在り方

☆今回の震災と原発事故は、わたしたちの日常の生活を変えようとしている。震災による犠牲を直接被らなかったわたしたちは、それをどのように受けとめ、どう被災された方々を支援し、亡くなられた方々のご冥福を祈ればよいのか、悩まない日はない。

☆イギリスの知人の留学生たちが、義援金を集める活動を開始してくれた。しかし、その活動の最中、彼らは議論し続けた。遠くの不幸は、自分たちにとって美しく見えているだけではないのか、私たちはここでこうしていることは偽善ではないのか、自分たちが出来ることを懸命にやるというので、よいのだろうか・・・。

☆自分たちが考えたことを行いに移すことが、主体的で積極的で、アクティブですばらしいことなのだというのは、平常時のビジネストークに過ぎないのではないか・・・。

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2011年度桐光の大学訪問授業のラインアップ決まる

☆桐光学園唯一の試みと言っても過言ではない「大学訪問授業」。毎年そこで語られたレクチャーが書籍化されるようになってから5年目を迎える。年間18回の知の最前線の講義プログラムである。今年も顔ぶれが決まった。

東京大学大学院情報学環 立花 隆 特任教授 ヒロシマ・ナガサキ・アウシュビッツ
東京大学先端科学技術センター 御厨 貴教授 日本の政治 ―歴史と展望―
東北芸術工科大学副学長・現代美術家 宮島 達男教授 ART IN YOU
慶應義塾大学・多摩美術大学・建築家 妹島 和世客員教授 環境と建築
京都大学人文科学研究所 岡田 暁生准教授 指揮者はどうして必要なのか
東京大学法学研究科 藤原 帰一 教授 民主化とピープルパワー ―フィリピンからエジプトまで―
"東京外国語大学大学院・サンパウロ・カトリック大学客員教授" 今福 龍太教授 学問の殻を破る ―〈人類学〉から〈群島〉へ
東京外国語大学大学院前学長 亀山 郁夫教授 ドストエフスキー「罪と罰」と現代
立教大学現代心理学部 香山 リカ教授 心ってどこにあるんだろう?
東京大学大学院情報学環 吉見 俊哉教授 大学って何だろう?
愛知淑徳大学現代社会学部 山田 登世子教授 シャネルのモード革命
東京大学名誉教授・東洋英和女学院大学学長 村上陽一郎教授 科学の二つの顔
女子美術大学 杉田 敦教授 アートという知のあり方
甲南大学文学部 田中 貴子教授 説話の面白さ
"明治大学大学院理工学研究科新領域創造専攻
ディジタルコンテンツ系" 管 啓次郎 教授 アメリカインディアンは何を考えてきたか
明治学院大学国際学部・小説家 高橋 源一郎 教授 人生で一度だけ使うことば
東京大学総合研究博物館 遠藤 秀紀 教授 死体から身体の秘密を解き明かす
"横浜国立大学教育人間科学部マルチメディア文化課程・情報認知システム講座" 根上 生也教授 計算しない数学
"JT生命誌研究館館長・元早稲田大学人間科学部
元大阪大学連携大学院" 中村 桂子教授 生命誌 ―新しい自分が見えてくる知
明治大学国際日本学部 高山 宏教授 「パノラマ島」とは何か 

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外国人教師 春休み終わっても帰ってこない?

☆この春休み帰国していた外国人教師が、新学期が始まっても日本に帰ってこないケースが増えているという。ある私立学校では、外国人教師をたくさん採用しているがゆえに困っていると・・・。

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動きだしたグッドスクール~「わかる」は意味で「わからない」は情報

☆震災の痛み、原発事故の不安はおさまらない。それでよい。被災した方々のことを忘れずに、共に生きていこうと励まし合うためにという意味で。本当は、これが日常だったのだ。東日本大震災が起こる前までは、すべてわかった風な気分でいて安心で平穏な生活を意味づけてきただけなのだ。

☆痛みを忘れず、不安を抑圧せずに、そのネガティブで無力感とともにそれをポジティブに有力感に転換しようという51%の希望を持ちながら生きていくのが命の経済原理なのだろう。

☆ネガティブな領域や無力感のない自己肯定観だけ追い求めてきた上げ底のキャリア教育は、役に立たない。就活の悲惨な現状は、今回の震災によって、とことん否定されてしまった。痛みなき自己肯定観の空虚な姿が露呈した。空虚と無の差異がはっきりしたのである。

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学校を選ぶというコト~心身格の価値形成のリスクマネジメント

☆学校選択というのは、私事の自己決定であるようだが、その選択先の学校文化が形成し続けている価値をシェアしたり、抗ったりする社会的行為なのである。したがって、私立中学の選択指標を、進学実績中心にした場合、自分の価値と選択先の価値のGAPをどのように調整するかは意外と重要なのである。

☆下記の今年10人以上輩出した首都圏私学のポジショニングを、前回書いた「理念なき経済原理と理念のある経済原理という軸と≪官学の系譜≫と≪私学の系譜≫という軸で構成した座標軸」でつくってみよう。

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(今年の東大実績はサンデー毎日4月17日号から)

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学校選び 選択の自律情報生態系のために

☆ある本の記述。

今日のいわゆる原子力時代は、まさに文字通り「死の時代」であって、「われらの日をかぞえる」どころではなく、極端にいえば明日一日の生存さえも期しがたいのである。改めて戒告せられるまでもなく、われわれは二六時中死に脅かされつづけて居るのだからである。しかし、それではわれわれは果たして、この死の威嚇によって賢さを身につけ智慧の心を有するに至ったであろうか。否、今日の人間は死の戒告をすなおに受納れるどころではなく、反対にどうかしてこの戒告を忘れ威嚇を逃れようと狂奔する。戒告を神に祈るなどとは思いも寄らぬ、与えられる戒告威嚇の取消しを迫ってやまないのである。例えば毎日のラジオが、たあいない娯楽番組に爆笑を強い、芸術の名に値いせざる歌謡演劇に一時の慰楽を競うのは、ただ一刻でも死を忘れさせ生を楽しませようというためではないか。「死を忘れるな」の反対に、「死を忘れよ」が、現代人のモットーであるといわなければなるまい。

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当面の子どもの学び支援

文科省、私立中高協会、通信制高校、企業、NPOなどで、子どもの学び支援が始まった。犠牲になられた方、行方不明の方の数は毎日増えていく中、家庭や知人の安否や悲しい局面にぶつかり、悲しみをこらえながら、この厳しい生活状況と不安な状態を一歩でも、前に進め、生き抜こうとしている子どもたちがたくさんいる。

☆あらゆる領域・分野からの支援が進むことはとにかく大事だし良いことである。しかし、時間もかかる。そこで、デル、マイクロソフト、ソフトバンク、スカイプなどがすでに支援をしているが、子どもたちの生活の中に、より一層の支援をしてもらえると幸いである。

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各種資格合格大学ランキングの背景

☆なぜ≪私学の系譜≫に期待するかというと、この系譜は、基本自己を否定したうえで他者の痛みを受け入れ、活動する座標垂平系コミュニケーション=対話知を養う教育を行っているからだ。そして、東大をはじめとする各種資格や大企業就職率の高い大学に進学するため、その対話知に基づいたリーダーシップを発揮してもらえる可能性があるからである。

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2011首都圏私学の東大合格実績

☆サンデー毎日(2011年4月10日増大号)のデータと合わせて、首都圏私立学校で、今年10人以上東大合格実績を出した学校の15年推移表をつくった。フェリスや武蔵は、例年通りまだ公開していない。

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本当に人との絆が生まれる学校の戦略

☆2012年の私立学校の経営は、経済的にも生活世界そのもの在り方にも、地政学的リスクが大きくのしかかっていて、緊張感が高まっている。

☆しかし、一方で被災者の方々の教育の支援に動いている学校もある。図のように20世紀型の「教育&経営」戦略で、成立しているところは、そのような動きをとらないところが多いが、21世紀型戦略をとっている学校は、自らの苦境を何とかしようとしながら、同時に支援活動もしようとしている。

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