西武学園文理の思慮深き冒険
☆3月12日、SFCの「新しい学びのフェスタ」で実施する予定だったが、前日の大震災で中止になっていた「思考表現行動の基礎プログラム」が、9日、西武学園文理で行われた。
☆このプログラムは、ベネッセコーポレーションと西武学園文理がコラボレーションして行う新しい学びのプログラムで、21世紀型教育に属する。
☆しかし、正確に言うと、20世紀型教育にも21世紀型教育にも属さない。というのも、両方の教育で、「聴く・話す・書く・読む」は重要であるといわれながら、本格的にこの4つの力をトレーニングするプログラムは開発されていないからである。
☆たとえば、漢字を覚えるときにどのように覚えるかそのプログラムは実際には開発されていない。辞書で調べるとか、何回も書くとか、覚えられない漢字を書きだしてトイレの壁に貼っておくとか・・・。それもトレーニングプログラムの一種であるが、関連性や創造性が育ちにくい。そんなことはないと言われても、過去を振り返って、多くの子どもたちが、漢字の書き取りで関連性を見出し創造的になっているかというとそんなことはないのはすぐに了解できるだろう。
☆聴くということもそうだ。聴くことは重要であるが、なぜ重要か体感するようなプログラムは開発されていない。集中して聴きなさい!とはよく言われるだろうが、集中するとは何か?よく聴くとはなにか?そしてそのためのプログラムは?
☆今の生徒たちはモチベーションがないから、それをアップしなければとはよく言われるが、モチベーションをアップするプログラムは開発されていない。ほとんどがニンジン理論である。内側からモチベーションの灯がともることはない。よくスイッチを入れるというメタファが使われるが、実はとんでもないメタファである。生徒はロボットではない。
☆情報を整理しなさいともよくいわれるが、そのためのプログラムはやはり開発されていない。自分の意見を自由に言いなさいとはよくいわれるが、そのためのプログラムはやはり開発されていない。
☆読み方はまあまあ開発されているが、ヘルメノイティク的な解釈学や読者中心主義的読み方は排除されているから、実はものすごい偏った読解プログラムである。まったく20世紀型で、これでは世界を読み解くことはできず、グローバリゼーションに直面してコミュニケーションもとれない。
☆実はこのようなまだまだ開発されていないプログラムをベネッセと西武学園文理はコラボして開発しているのである。だから、静かにしろとか集中しろとか、勉強しろとか叫ばないのである。このような叫びを教師から聞くたびに、自分はプログラムを作れないと言っているようなものなんだがと寂しくなる。
☆プログラムなんて必要ないと大きな声でいう人もいる。なんて恵まれた人なのだろう。自分はなくても平気だと自慢しているにすぎないのだが。つまり、中高で、要約や論述や論文を書くときに、調べ方や書き方は教えるのだが、回答が1つに定まらないものをいったいどうやって調べたり、書いたりすることができるのかは教えていないところがほとんだ。
☆型を教えても、流し込むエネルギーやリソースがない場合、つまり訴えたい何かがなければ、どうしようもない。型を教えて、そこにリソースを流しこめるのは、そのリソースを小学校までの間に、自然に身につけている場合が多い。
☆中高でも自然に身に付けばよいではないかと言われるかもしれないが、それは出来る生徒は出来るし出来ない生徒は出来なくてもよいと言っているわけで、教育放棄なのである。
☆20世紀型教育であろうと、21世紀型教育であろうと、記憶力を豊かにするプログラムを開発しておくこと、聴く力を豊かにするプログラムを開発すること、集中力を自在に発揮できるプログラムを開発しておくこと、書く力を強力にするプログラムを開発しておくこと、議論する力を鋭くするプログラムを開発しておくこと、発表する力=説得力=雄弁力を磨き上げるプログラムを開発しておくことが大前提である。
☆この大前提があれば、すべての生徒が才能を開花するだろう。開花しないのは、プログラムに欠陥があるだけなのだ。そしてそれを前提に知識や知の強化トレーニングプラグラム(カリキュラムやシラバスと言われているもの)があれば、在校生が進学においても将来の仕事においても大活躍すること間違いなしである。
☆西武学園文理は、次なる躍進のために、知の深層を思慮深く掘り起こしているのである。何を言っているのかわからないと思う人も多いだろう。だからこそ、ますます西武学園文理は先行するのである。
☆そしてなんといっても、多摩エリアの受験生層は、そのような知の深層の洞穴を冒険する本物の教養教育=リベラルアーツを好む。西武学園文理が、多摩エリアのプログラムなき伝統校やブランド校から高偏差値というだけでなく豊かな知恵を有している生徒を奪取していくだろう。
☆私学市場において、教育の質の競争は大いに歓迎である。
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