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突破口 量的リサーチから質的リサーチへ

☆あらゆる経済領域で、変化が起きている。もちろん相変わらず、GDPという量的リサーチがベースになっているが、この優勝劣敗競争原理を支える量的リサーチでは、人間の幸せを測りきれるものではないというのは、地球規模で共通の認識に到達しているだろう。

☆そう納得せざるを得ない事態である紛争、混迷、革命は、毎日のようにニュースで流されている。日本も3・11という自然災害が原発事故という人災へシフトした時、そのことを痛みとして感じる流れになっている。

☆教育も例外ではない。量的リサーチの象徴である偏差値や大学合格実績という優勝劣敗競争発想は、まだまだ使われているが、その経済的・精神的効果の実感が薄れてきていることも確かである。

☆もちろん、その量的リサーチ手法にしがみつく模擬試験業界やそこをニュースソースとしている教育関連メディアではある。しかし、その業界いずれもが苦戦しているのは日々刻々と明かになっている。

☆そこにしがみついていると、大変なことになるというのは、消費者はそろそろわかってきている。だから、面倒見のよい学習塾に流れが変わるかというと、実は面倒見はよいけれど、結局ベースはまだまだ量的リサーチ手法で、生徒の学力や成長を測定し判断せざるを得ないから、何がかわるかというと、コストが安いというお得感しかなくなる。そうなると、学習塾業界はジリヒンになる。

☆やはり、突破口を見つけなければならない。それは質的リサーチの手法を導入することである。量的リサーチは、結局工業の品質管理や大量消費のマーケティングを支えるメソッドだった。

☆それをサービス業やデフレ時の消費マーケティングにそのまま重ね合わせても、解決しないのは当たり前だったのである。ここには、コミュニケーションという量的リサーチでは把握できないシステムがある。

☆ところが、当然ながら、サービスやデフレ時の消費者の心理は、コミュニケーションの充実・安心・意欲などへの欲求が高くなるのあるから、コミュニケーション行為や能力の質的リサーチが必要になってくる。

☆教育もコミュニケーションの充実がその根底にあるのは誰も否定しないだろう。教育が20世紀型から21世紀型になるというのは、コミュニケーションも20世紀型から21世紀型になるということだ。

☆ところで、21世紀型のコミュニケーションとは何か?それはリサーチをしてみないとわからないのである。垂直的コミュニケーションから水平的コミュニケーションへというのは、雑駁過ぎる。そんな簡単なものではない。

☆そこで質的リサーチを真剣にしなければならない。クリエイティブクラスのサービスワークは、すでに質的リサーチが行われているし、医療介護では、1960年代から粛々と実行されている。よく「見える化」という言葉が使われるが、これは量的リサーチを象徴する用語である。質的リサーチを象徴する用語はもしかしたら「測る化」かもしれない。ポートフォリオも質的リサーチの手法を象徴する用語として定着している。

☆それはともかく、医療倫理が問われている背景には、医者とクライアントのコミュニケーションをどのように組み立てるかという話があり、それを知るためには質的リサーチが必要だという話なのである。

☆初等中等教育段階の教育業界で、このことに挑んでいるところはまだまだ少ない。大学ではやっとはじまった。中高一貫校でこのことを無意識のうちに行っているのが、適性検査という名で中学入試を行っている公立中高一貫校である。この適性検査のシステムを授業や定期試験に反映しているとなると、それは本物であるが、そういう話はまだ聞こえてこない。つまり、まだまだOECD/PISAを表面的に真似しているだけである。

☆しかし、PISAはもともと質的リサーチを行っている。あの膨大なデータ集は、もちろんスコアで表現されるが、そのスコアのカテゴライズやコーディングは質的リサーチの手法である。だから、表面的であっても、いずれ公立中高一貫校は必然的にそこにいきつくのである。

☆一方さすがは私立学校で、それに自覚的に取り組み始めたところがある。かえつ有明、聖学院、白梅学園清修、八雲学園、佼成学園女子がそうだ。特に八雲学園は、質的リサーチをチュータ制として確立し、学園の「教育と経営」において成功を収めて久しい。

☆しかし、まだまだ、このような学校の質的リサーチの手法の探求の重要性に世の中は気づいていない。

☆時代が転換する事態が生まれるとき、必ず先達者がいるものである。明治の近代教育以来、つねに教育のフロントランナーは私学だったが、21世紀型教育においてもやはりそうなのだ。そのことを忘れないように誰かが記録しておかねばならないだろう。

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