「PISA型学力」対応教科書登場!?
☆産経新聞(7月6日 0時15分配信)によると、
日本の児童生徒が国際的に弱いとされる、知識や経験を活用しながら自分の考えや思考内容を筋道立てて表現する「PISA型学力」。来春からの教科書では児童生徒の考察を表現させた欄を大幅に増やす趣向がこらされている。中には、実験に基づき科学的な物の見方をしっかり定着させるためあえて専用ノートを作成、理科教科書と一体で検定合格させた今までにない取り組みも出てきた。児童生徒の学力低下が嘆かれて約10年。「PISA型学力」の巻き返しに向けて随所に工夫を重ねた教科書はこの夏、全国の教育委員会で採択される。
☆どこか変だなぁと感じるのは私だけだろうか?日本人の子どもたちなのか学習指導要領なのか教科書なのかわからないが、PISA型学力が相対的に弱いのはどうやら間違いない。
☆だからといって「PISA型学力巻き返しのため」ということはどうなのだろうか?
☆PISA型学力は、そもそも限定的。批判的な思考力は少し測れるけれど、創造的な思考や判断力はそもそも測っていない。それ以下の思考力しか養えない学習指導要領に対し、PISA型学力を比べるのは意味があるが、だから、PISA型学力を目標にするのはピンとこない。
☆記事にはこんな箇所がある。
啓林館は理科の教科書と専用ノートを一体にして検定合格させた。専用ノートには普段の授業の狙いや必要なスキルを身につけるポイント整理や基本のチェック、考察の自由記述欄や演習問題などを盛り込んでいる。教科書とセットで授業に使い、自学自習にも使える、今までに例のない教科書だ。
☆悪くはないが、ノートの創意工夫こそ思考力を要するのに、そこは補助輪をつけたままはずさないつもりだろうか?だいたいねらいを明確にしろとよくいわれるが、人生そんなものかなぁ。3・11は予想をはるかに超え、防波堤のねらいを打ち砕いてきたではないか。100歩譲って、あくまで参考程度ということにしよう。しかし、次の箇所はどうだろう。
同社では「現状指摘される理科授業の問題点はまず黒板の丸写しに終わること。もうひとつは実験はやるが、考察を経ずにやりっ放しで終わること。いずれも科学的な物の見方に結びつかない」と指摘。「この教科書は教育現場に授業改革をうながすとともに、生徒にも科学的な考察作業を課しており、PISA型学力の向上という日本の課題解決に向けた私たちなりの提案だ」と胸を張る。
☆おーい!だいじょうぶかなぁー!考察しても科学的なものの見方には結びつかないよ。やりっ放しにしても、考察を経ても、既に誰かがやった実験を追認していることには変わりなく、好奇心やモチベーションや科学好きな生徒を作るには効果があっても、科学的なものの見方は養えないのである。
☆科学的ものの見方ってなんだろう?新たな疑問を見出し、それを解決すべく仮説を立て、それを証明する条件を試行錯誤しながら設定し、最終的には解決のための目に見えない基準を形として見出す視点の集合体。
☆既成の実験をマニュアル通り追認してもそれがなんだというのだろう。
☆それに思考のレベルが、学校教育法によって規制されているから、中学までは思考力の一領域しか養えない。そしてまたPISA型学力も思考の一領域しか測定していない。ただ、PISA型を1とすると、日本の中学までの学習指導要領の思考力がカバーする領域は、0.6ぐらいである。だから、問題なのだが、かりに1にしても、それは15歳までの話であって、そこから先はどうするのだろうか。。。
☆偏差値が万能だと幻想をいだいてきたときのように、今度はPISA型学力が万能だとでも言うのだろうか?たしかに偏差値よりは良き指標ではあるが、PISA型学力に対する科学的なものの見方をまずはしなければ・・・・・・。
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