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質的リサーチを学ぶには?

☆質的リサーチは、ビジネスやマーケティング、組織論でも活用されている。大量生産・大量消費・大量移動の時代はもはや過去のものとなり、クリエイティブ・クラスやプロシューマーと呼ばれる人々が質を求めるコミュニケーションを形成しているからである。

☆彼らがどんな質を互いに形成し、新市場を創出していくのか、そこで経済を牛耳る組織を構築するのか、それらを読み解くためには質的リサーチが必要ということ。

☆これは教育という、教師と生徒、保護者などのステークホルダーの言語活動の質、つまり、コミュニケーションの質を形成していく教育拠点でも同じことである。

☆教育であれ、医療の分野であれ、ビジネスの領域であれ、質的リサーチの基本書は、

「質的研究入門―“人間の科学”のための方法論」ウヴェ フリック (著)

最近では新版が出版されて手に入りやすい。

☆良き入門書ではあるが、1人で読むには辛い。というのも現代思想や物語や言語分析の手法の知識が必要だからである。

☆つまり、質的リサーチが広がらないのは、世間や進路ではまったく流行らない哲学や思想系のトレーニングが少しないといけないからだ。逆に言えば、質的リサーチの手法を学べば、理念や思想について考える視点が身につくのである。何も高級な哲学や現代思想の原点に触れることなしに、コンセプトについて思い描いたりデザインしたりすることができるようになるのである。

☆それゆえ、読書会もよいが、実際に授業やテスト、評価などを質的リサーチを意識して構築する共同作業をしていくと、本書の有効性が了解できるだろう。

☆下記の図式は、ウヴェ・フリックの著作よりはるかにマニュアル的なまとめをしてくれている“Qualitative Research in Business & Mnagement”(Michael D. Myers)を参考にアレンジしたが、一般にリサーチというと、データ収集から始まって、その前提になっている暗黙の思考の特性や探求方法の選択判断については、無頓着なまま。

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☆質的リサーチは、価値中立に立つためには、価値中立ではないことを明らかにしてから進むのである。ここが隠されたままだと、リサーチ結果に操作性が忍び込んでいる可能性がある。どんなフィルターを通しているのか、互いに明かにしつつ、合意を形成していくプロセスも質的リサーチの大きな特徴。

☆量的リサーチは、そのようなフィルターはないのか?いや大いにあり得るのであるが、客観的という思考停止用語が、それを覆い隠してしまうのである。

☆量的リサーチと質的リサーチの併用こそ、クリティカル・シンキングを支えるデータベースを形成するのであるが、従来の日本社会や教育は、前者に偏ったデータの扱い方をしてきた。クリティカル・シンキングが忌み嫌われてきた理由はそこにあるのではないか。

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