脱偏差値! 「座談会」で②
☆理念なき時代と言われて久しいわけだが、1人ひとりが理念をもたなければ、自分の判断基準は、結局他人が設定したものに拠ることになる。
☆理念といっても、自分理念というエゴなものもあれば、国家理性みたいなものもある。おそらくそういう歴史的な反省が、大きな物語を捨てた理由なのかもしれない。
☆しかし、試行錯誤するたびに、人間を捨てよと言っているようなものだ。人間の思考の構造として、クリティカルシンキングをしながら、理念を磨きあげることは捨てられない。理念の中身が、自分の気概と世界と時代の要請に一致しているかどうかを批判的にあるいは解釈学的にクリーニングしていこうということは重要である。
☆公立学校の制度は、そこが宗教教育につながる恐れや戦後民主主義教育の反動になりかねないから、議論されないまま進んできた可能性がある。この点について、しっかり議論した方がよいが、どうしても感情的になり、ルサンチマンの怒号が激しくなるので、できないでいる。
☆その点私立学校は、建学の精神という理念が教育の座標軸になっている。この座標軸が生徒1人ひとりの内なる座標軸とシンクロしたり、あるときは革新的な座標変換をする。
☆難関大学進学のみ考えて学校選択すると、この共鳴共感ができなくなり、せっかくはいった学校も去らねばならない事態になることも少なくない。
☆だから、私立学校を選ぶとき理念は大事なのである。ただし、文言としての理念だけではなく、その理念がどのように具体化し、生徒1人ひとりの心の座標軸形成やシンクロや座標変換というイノベーションが生まれるのか、そこに注目しなければ、理念をしることにはならない。
☆富士見丘の大島先生は、「安心して学校生活を送れるよう、数々の安全対策を実施しているわけですが、それはエコシステムを形成するというベースがあってこそです。上下・中水の確保、またアリーナ下部に災害時対応汚水処理槽を設け、ライフラインを整備しているのですが、これもエコの発想で、コストも手間もかかります。生徒たちのリサイクル活動は、富士見丘のトイレットペーパーになって、自分たちのエコ発想とその活動を毎日実感できるようになっています。太陽光発電、風力発電もずいぶん前から実行していたのです」と。
☆このコストや手間がかかる教育活動に生徒が参加することこそ、理念を持続することであり、経済優先・効率優先社会に対する改善という貢献を果たすことの重要性を心の座標軸として据えることになるのである。経済優先は質の追求とはま逆の合理性の欲求願望である。3・11以降しかし、この経済優先社会は反省を迫られているわけだ。
☆聖学院の平方先生は、「とにかく聖学院は体験型の行事が多いのです。中学の時の農村体験は、村の人々との絆や自然の命の循環の重要性、人間の存在の小ささとかけがえのなさを実感してきます。気づきとかなぜだろうという好奇心は、自分の周りにいる人々とは違う人びとと寝食を共にするコミュニケーションの関係の中で実感しなければうまれてくるものではない。本物に触れるとはそういうことなのです。海外研修も多いですが、それも同じ思いです。こういう関係の中で自分でできることを発見した時、only one for othersという聖学院の理念に共感した心の座標軸を生徒は形成していきます。」
☆洗足の玉木先生は、「謙虚にして慈愛に満ちた女性に育って欲しいというのが理念です。この理念の重要性に気づく環境を数多く作っています。中1から社会の様々な問題に関して考える宿泊型の研修やホームステイをベースにした海外研修の環境を用意しています。国際医療支援機関で活動している医師の講演などもその一つです。多くの体験と多くの先輩たちとのコミュニケーションによって、世界の痛みに気づきます。その気づきこそ謙虚で慈愛に満ちた自分の判断や思考の基準を形成する原動力です。」
☆いずれにしても、お金だけではなく教師の労力という意味でコストがかかっている。平方先生は、点だけ見ればコストがかかっているかもしれないが、最終的にはそのコストが良き社会を形成することになるわけだから、視野を広めなければならないと。
☆なるほど、座談会終了後、富士見丘の理事長校長である吉田先生が、「6月23日の文科省や経産省が開催している「グローバル人材育成推進会議」で公表された「グローバル人材育成図」を使って、「今までは入試の壁、就活の壁が、本当の意味での優秀な人材をつくれない「悪循環」教育社会だった。これからは、私立学校の教育の質が、好循環にシフトさせるテコになります」と語っていたのに重なる。(つづく)
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