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Willナビ おもしろい。海城、渋幕、豊島岡の質差がわかる②

☆中学入試問題に関して、受験生やその保護者に対して、どんなメッセージを込めて作成いているのか?この回答でも、海城学園が圧倒している。

☆豊島岡は、入試問題は、知識を持っているか、理解できているかという点だけを測るものではなく、与えられた条件のなかで、自分なりに試行錯誤して突破口を見いだし、解決に至ることができるかどうかを重視して作問すると語っているが、結局は理解できているかどうかを測っているということ。具体性(具体的な問題を提示ということではない)がないから、そう誤解されてもしかたがない。

☆渋幕は、次世代のリーダーをどう育てるかを常に考えており、入試問題も「自調自考」という本校の教育目標を踏まえて作問しているというが、次世代のリーダーというのは自分のことしか考えない賢ければそれでよいというリーダーのことなのか。もちろん、違うだろうが、リーダー=自調自考だとそう誤解されても仕方がない。

☆それに、受験生が毎年2000名を超えるので、すべて記述問題というわけにはいかないが、発想力や想像力を見ることを念頭に置き、既習知識の多寡 にとどまらない真の実力 を見るというが、2000名も受けるのに、記述問題の出題を制限して、どのように真の実力を測るというのだろうか?そんなことができるのはなぜか?

☆例えば、理科の問題で、一方のコップには水、もう一方のコップにはとても濃い食塩水が入っており、それをなめずに判別する方法を答えさせる問題を出したことがあるが、それは塾で学習しなくても、自分の体験から考えて導き出す問題なのだと。

☆そのようなことが自調自考なのだろうか?理科でも社会でも、どんな教科でも、問題の対象や素材というものは実は目に見えるものなどほとんどないだろう。目の前に何がありますかという問題は、今さら中学入試で出るはずがない。目に見えない原理やルールなどをどのように考えていくのかというプロセスを測りたいなら、体験という個人によって条件の違う問題を出題することは果たして測定なのか?これでは、事前にトレーニングのしようがない。もしそうであるならば、抽選という入試制度を使ってもよいはずだ。

☆もちろん、渋幕が、そんなことを考えてるはずがない。なぜこのような編集になったのかが不思議なだけである。

☆一方、海城は、 「国家社会に有為な人材を育成する」というのが海城の建学の精神であり、現代において有為な人材とは、学力と人間力のバランスが取れている人材であると考えているが、入試で測るのは学力の部分のみになってしまうと正直に理にかなった説明をしている。

☆そのうえで、このジレンマをどう解決しようとしているのか、真摯に語る。学力は、時代が要請する「新しい学力」と、知識あるいは基礎問題を解く能力といった「従来型の学力」があるから、その両方を出題するのは当然ではないかと。

☆「従来型の学力」は、自分の持っている知識と新たに入ってくる知識を関連づけて、広がりを持たせていくことができるかを見るような問題を作るとある。学んできた知識を条件に、関連づけられるかは、公平に測定できるだろうし、すでにこの段階で「新しい学力」にシフトする用意ができていることをも示唆している。

☆「新しい学力」では、クリティカル・シンキングの力を問う問題を出題すると。与えられた文章や図表の中の情報をきちんと分析し、関連づけ、何らかの答えを自分で導き出して記述するという総合的な能力を問うとは、結局のところ、既習の知識を活用するか新しく与えられた情報を活用するのかの違いが、「従来型の学力」と「新しい学力」の違いで、その活用していく思考のプロセスは、共通している。このように明快な学習観を前提にしている問題は、トレーニングを積むことができる。

☆一般入試においては採点時間の物理的制約もあり、受験生の経験や既習知識を総動員して論述してもらう完全自由記述の問題は出題できないとも正直に語っているが、従来型の学力と新しい学力の両方を測るテストデザインによって、その悩みも解決できるわけである。

☆「従来型の学力」を測定できない環境にあった帰国生に対しては、OECDが行うPISAの読解力テスト等に見られる“完全自由記述”の問題も出題していると。この理屈は、やはり学力観をきちんともっているからだろう。

☆このような記事では、まるで豊島岡の入試問題は、「従来型の学力」観に基づいて作成され、渋幕は「新しい学力」観をまだ理論化できず、中途半端なままだから、結局は「従来型の学力」観の入試になってしまっているという印象をうけることになる。一方、海城の入試問題の方は、選抜と教育のシステムと世界標準を有機的にリンクされ、かつ論理的に考え抜いて設計されているという印象を受けてしまう。もちろん、海城の入試問題それ自体はそうなのだが、なぜにここまで質差を明快に編集してしまうのだろう。

☆当たり障りのない編集姿勢をとらないことにエールを送りはするが・・・。スゴスギル・・・。

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