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広尾学園 「君はどう思う、君の考えを聴かせて。」

☆米国の債務上限問題はとりあえずぎりぎりセーフ。しかし、依然米国株式市場は勢いを取り戻せない。円高基調も続いている。オバマ大統領も修正法案の上下院通過は第一歩でしかないと語っている。ポール・クルーグマンは、オバマ大統領率いる民主党を批判してもいる。

☆どうやら2012年問題は解決できないまま世界は危機を迎えつつあるようだ。しかし、世界が壊滅するわけではない。いや原発事故はそのリスクを回避していないのかもしれないが、ともあれ世界がすぐになくなるわけではない。

☆大事なことは、何だろう?こういうときはファンダメンタルな側面を視るしかない。なぜかというと、私たちは直接何も見ることができないからだ。私たちは、世界を感じることはできる。世界を語ることはできる。世界を読むことはできる。しかし、世界を直に視ることはできない。

☆なるほど、債務上限問題を議論しているシーンを見ることはできるから、知ることはできる。債務上限問題に横たわる実際の現場を視ることはできない。企業決算が良くないという話を聞くことはできるし、そのニュースを見ることはできる。しかし、実際に個別の企業の損益表やキャッシュフローをすべて視て判断しているわけではない。

☆議会の様子を見ることはできるが、そこに到るまでの与野党の攻防や交渉、調整をすべて視ることはできない。

☆ではどうやって判断するのだろう。それは言うまでもなく、言語が映し出すイメージを視て判断するのである。データや事実は重要である。しかし、それは言葉を介してのみ結ぶイメージを視ることによってデータを読み取れるし、事実の同一性問題を保証できる。

☆つまり、私たちにとって重要なことは、ファンダメンタルな切り口から視れば、言語なのである。それでは言語とは何か?オバマ大統領の一言で、市場が動き出すほどの力がある言語とは何か?しかし、同じ言語で同じ内容を私が語っても世界経済は何も影響を受けない。その違いは何か?

☆言語とは権力の正統性と社会システムの信頼性と現実の妥当性を反映している。同じ内容を同じ言語で語っても、語る人の正統性、信頼性、妥当性の背景によって、パワーは違うのである。

☆大量消費、大量生産、大量移動によって成立しているグローバリゼーションで、生き抜く力は、このような正統性、信頼性、妥当性の背景のパワーを個人が国家を超えて有することができるかにかかっている。

☆日本の教育が、良いか悪いかはともかく、このような正統性、信頼性、妥当性をアピールできる強い個人を育成してこなかったことだけは間違いない。言語は道具であるという教育観は、結局その道具をうまく使えるかどうかの指標しかないのである。その道具の正統性や信頼性、妥当性について問ういことをしてこなかった。だから記憶だけの勉強でよかったのである。

☆しかし、言語は世界そのものである。言語の限界は世界の限界である。そしてその限界を破るのも言語である。この世界について、個人が語れなければ、強い国家にコントロールされるだけである。言語道具説は、道具を使わしてもらっている以上、コントロールされっぱなしであるということを示唆している。

☆しかし、母国語と母国語以外の言語で、世界を語れるようになったら、コントロールされっぱなしになることはない。それでは、このような言語世界説の教育をするにはどうしたらよいのか?

☆それは、広尾学園の大橋学園長のブログがヒントになる。大橋先生は2012年に来るだろう光と影を見通している。だから、3.11以降3カ月間、ブログは書きこまなかった。この3ヶ月間の間に、教師と生徒と保護者と黄金のときを過ごしていたからだろう。

☆黄金のときとは、言語の正統性と信頼性、妥当性を共有する絆の再構築の瞬間を積み重ねることを意味する。それゆえ、3ヶ月後、ブログにはその絆の話ばかりが語られることになる。

☆「君はどう思う、君の考えを聴かせて。」おそらく学園長は、この言葉を教師、生徒、保護者に投げかけているだろうし、これからも投げかけるだろう。この問いを真摯に受け入れ、世界を語れる環境をこの3ヶ月間で構築してきたのであろう。

☆コールバーグやハーバーマス的な視点からみれば、「君はどう思う、君の考えを聴かせて。」というコミュニケーション行為は、脱慣習段階のステージである。ここまで来るのに、前慣習段階、慣習段階を経なければならない。道徳意識の発達段階と思考のレベルが、脱慣習段階に到ってはじめて、「君はどう思う、君の考えを聴かせて。」という言語世界説の正統性、信頼性、妥当性が有効になる。

☆コミュニケーション行為(道徳意識と思考の発達段階の統合)が脱慣習段階に入っている私立中高一貫校を探すことが、2012年問題の光と影を乗り切れることになるだろう。

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