英語教育に力を入れている学校はなぜグッドスクールなのか?
☆開成にしても桜蔭にしても英語に力を入れている。しかし、必ずしも英語教育に力をいれているとはいえないかもしれない。私立学校というのは、教師一人ひとりが自己練磨して、創意工夫して授業を行うのが基本である。
☆ところが、最近は様子がちがっている。教師が一丸となって、学力保証や成長を見守っていくスタイルの学校が増えているのである。それでも、開成や桜蔭のように優秀な生徒が集まり、大学進学実績が破格によい学校は、1人ひとりの先生ががんばればよいのであると伝統的に思っているだろう。
☆だから、たとえば、こんな感覚が通説になる。東大の現代文(東大に限らないが)は、なかなかどうして現代思想の色の濃いものが出題される場合が多い。
☆しかし、与えられた文章の中で解答を作ればよいのだから、現代思想全体の勉強などする必要がないのだと。大学に入ってから専門でとれば研究すればよいと。
☆なななんて恐ろしい・・・。たしかに、別に現代思想学をやる必要はないけれど、現代思想は、現代社会の問題を考えるヒントになるものの見方のヒントになる領域であって、入試に出る出ないにかかわらず、触れておくことはよいことなのである。
☆もちろん、開成とか桜蔭とかの教師は、さすがにそんなことは考えない。しかし、かといって、灘の奇跡の教室で話題になった橋本武先生のように3年間たった一冊の本から世界へ広がる授業をするというわけにもいかない。
☆現代思想は嫌いだ、心理学が好きだ、いや化学がすきだなんて会話も生徒から聞く。しかし、なんということだ。全部つながっていて、どこからはいっても、私たちの周りをとりまく環境や状況を読み解く目を養ってくれるのである。
☆しかし、従来の教育だとそうなってしまうのはやむを得ない。ところが英語教育に力を入れている学校は、しぜんと教科横断で連動型になる。というのも英語教育に力をいれると、文法だけではなく、それ以外のものの見方を身に着けるが、それが横断型というか複眼思考型のエンジンになる。
☆英語ではなく、英語教育に力をいれると決めた学校は、英語の教員だけではなく、教務のトップがその感覚をもっていなければ導入出来ない。
☆だから、教務に影響力のある教頭や教務部長と話をすると、英語教育の波及効果を意識しているかどうかわかってしまう。
☆ネイティブスピーカーをたくさん雇っています。会話にも力を入れています。リーディングやライティングにも・・・などという説明は英語に力はいれているが、英語教育には力を入れてはいないのである。
☆統語論・意味論・語用論の文脈をはなしているかどうかがカギである。もちろん、これらの用語を使っていなくてもよいのである。
☆これらの意味するところをはなしているかどうかである。これらの視点は、言語というものが知識と知識のリンクだけでなく、知識とリアルやイメージとの状況的なつながりが、歴史的にも未来的にも現在的にも語られているかどうかということである。
☆英語教育に力を入れると、統語論・意味論・語用論が海外研修やTOEICでも活用されるし、社会や世界を理解する切り口でも活用される。ストレスを解消するコミュニケーションでも活用される。科学的なものの見方や感じ方、好奇心を育成するのにも活用される。小論文指導でも大いに活用される。
☆もちろん、英語教育でなくても、論理的思考などのプログラムを導入するのもよいのだが、できれば教科を増やすことなく、コンパクトに行うとしたら、英語教育とはいかなるものかを共有する方が一石何鳥にもなる。
☆英語教育に力を入れている学校がこのことに気づいているかどうかは別であるが、英語教育に力を入れれば、自ずとそうなっていく。英語教育とは背景に社会言語の文脈がぶらさっがっているからなのである。
☆さて、そういう意味で英語教育に力を入れている学校は、たとえば、
麻布、武蔵、聖学院、慶応普通部、海城、世田谷学園、明法、八雲学園、富士見丘、東京女子学園、共立女子、佼成学園女子、洗足学園、田園調布学園、湘南白百合、立教女学院、鴎友学園女子、かえつ有明、広尾学園、桐光学園、土浦日大中等教育学校、慶応湘南藤沢、慶応中等部・・・・・・
☆特に語用論(pragmatics)が、すべての教科や教育活動をつなぐ鍵である。文脈を構造的に呼び覚まし、構造をメタファで自在にシフトし、その過程で新たに構造をつくりかえる、単語一つひとつに内蔵された思考脳であるから。
P.S.
「語用論」というとコミュニケーション行為の切り口の「ことば」かもしれない。社会学の切り口でいえば、要素還元主義ではなく「関係総体主義」的ものの見方をあらわす「ことば」になるのかもしれない。学習理論的には、3Rから「3X」へということになるのかもしれない。教育の時代認識を表現する「ことば」としては、20世紀型教育から「21世紀型教育」へということになるのかもしれない。
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