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大学付属の場合、大学が英語教育に力を入れているかチェックせよ

☆英語にではなく、英語教育に力を入れる学校を探そうと言うわけだが、大学付属校の場合、その大学自身が英語教育に力を入れていなければ、付属校は独立採算とはいえ、グループで動いているから、影響を受けないわけにはいかない。

☆大学の所轄庁は、私立学校と言えども文科省である。したがって、新しいことをやろうとしても、どうしても国立大学と歩調を合わせざるを得ないところ(認可の問題)があるはずである。私立中高は知事であるから、教育委員会の影響からある程度自由であるから、その分新しいことをしようとすると学習指導要領や学校教育法の枠を超えなければチャレンジできる。

☆共立女子の理事長石橋先生とお会いしたとき、時の首相鳩山一郎の第一秘書として日ソ交渉に同行し(よく載っている教科書の写真では鳩山首相の後ろに付き添っているのが若き日の石橋理事長である)たときのお話を聞いて、なるほど共立女子中高は21世紀型教育を推進できるし、英語教育に力を注げるのだと合点がいった。

☆だいたい、ドラマにあるように吉田茂と鳩山一郎は犬猿の仲でもなんでもない。むしろ、戦後の外交を平和創出のためにどのように歩を進めていくか、互いに命をかけて米国にソ連に行ったという話をお聞きした。

☆両人とも英語は達者だったし、世界の平和という状況と戦後日本の状況を、自らの知恵で何とか打破しようとしていたわけだから、すでにそこに21世紀型教育の原点があるというわけだ。

☆鳩山一郎の場合その刺激を大いに受けたのは、クーデンホーフ・カレルギーというEUの父の壮大な思想との出会いである。そのとき共立女子は、校訓に「友愛」という信念を加えることになる。フランスやアメリカは自由のための革命をやってのけた。ロシアは平等のための革命をやってのけた。しかし、まだ友愛という人類愛と平和のための革命は行われていてない。唯一の被曝国である日本こそ「友愛革命」をという発想に共鳴したのである。

☆だから、その信念を共立女子グループ全体は抱き続けるのはあまりに当然である。友愛外交によるグローバリゼーションをという発想(石橋理事長は政治的な概念ではなく教育的な概念として理解しなければならないという見識が必要であると)は、共立グループ全体の理念でもあると。だから、共立女子が英語教育に力をいれているのは、また当然なのである。

☆しかし、大学法人が、必ずしも共立女子のような見識を持っていない場合どうなるか。しかもそこそこ就職などがよいとなると、20世紀型教育以外なにを望むのだろうか。ここに大学側と中高のギャップが生じる。そこでは葛藤が起こるが、多くの場合、大学側が強いに決まっている。

☆したがって、大学付属の場合、大学法人のレベル(偏差値ではない)や21世紀型教育に熱心かどうかチェックしたほうがよい。

☆たとえば、東大、京大、一橋は、日本では最もがんばっているほうだろう。慶応大学、早稲田大学はまずまず(でも世界大学ランキングいえばまだまだドメスティックだろうが)。上智大学はどうだろうか?イエズス会が新しいとは思えないが、どうだろう。ICUはもともと21世紀型である。東京理科大は、改革の最中だから、注目しておきたいところ。MARCHでは、立教は21世紀型か。青山はどうだろう。明治や法政は、ルーツはグローバルだったけれど、果たしてどうだろう。中央はまだまだ国内の資格試験がベース。ただし、この資格がグローバリゼーションに対応しなければならなくなったとき、すぐに転換するエネルギーは持っている。何せ一番動かなかった大学。でもそれは戦略的な時代を読む眼があるからともみなすことができる。

☆日本最大の規模の日大は、学祖山田顕義の精神を掘り起し、再びグローバルな時代に対応しようとしている。山田顕義は、最年少の吉田松陰の弟子で、五稜郭を落としながらも、海外の視察をし、軍事力から法の支配によって国を創ろうとした幕末そして維新の天才革命児である。もちろん、山田顕義の時代の法の支配とは、国際レベルの話だった。山田顕義の理念は、民法典論争に見られるように≪官学の系譜≫に駆逐されるが、それは今や≪私学の系譜≫の一つの流れとして脈々と継承されている。

☆大学進学実績の目安になっている、以上のような大学の中にも、21世紀型の教育に転換すべきだという積極的見識が怪しいところもあるのだから、他の大学は推して知るべしである。共立女子のように時代を動かす多くの人々が形成してきたようだ大学は別である。

☆また聖学院大学のように、内村鑑三、新渡戸稲造と同時代のストイックなキリスト教派が運営し、明確に20世紀型教育を批判し21世紀型教育をすでに実践しているところも異例であろう。

☆嘉悦大学のように、SFCの流れをくむ教授陣が、学祖嘉悦孝や孝が影響を受けた横井小楠のグロチウスの国際法やカントなどの発想を見通していた思想を掘り起し、ケンブリッジと連携しながら新しいことをやろうとしている大学も、中高とのアイデンティティにGAPはない。

☆それ以外の大学付属校は、中高ばかりか、大学のイノベーティブな姿勢をチェックすべきである。たとえば、山脇学園の短大は今年閉校した。大学が21世紀型教育にかじを取れないことを潔く認め、中高に新しい路線を託したのであろう。したがって、もはや山脇学園は、言うまでもなく大学の状況をチェックする必要はないのである。

☆逆に京北の場合はどうだろう。完全に東洋大学の傘下にはいったわけである。それまでは、京北中高は、きわめて斬新な教育心理学と丁寧なコミュニケーション学による興味深いプログラムを実践してきたが、今後東洋大学の影響を相当うけることになる。

☆東洋大学の学祖井上円了の世界の中の日本をどうするかという独創的な思想を、言葉の上だけではなく、状況に埋め込むレベルまで研究や講義を行っているかと言えば、それは教授会の性格上不可能だろう。そうすると、中高と大学のGAPは生まれざるを得ないだろう。

☆桜美林が人気なのは、中高と大学はそのGAPをなくすように努力しているし、その説明を行っているからだと私は考えている。

☆桐蔭が少し停滞し始めたのは、おそらく大学が新しいことをやろうというダイナミックさがないからではないか。外から見ていたらどこの大学付属も大学と中高は関係ないように見えるが、理事会とかアドミニストレイション的なところを眺めれば、それはまた話が違ってくる。

☆だから、大学付属中高は、大学との関係について説明責任がある。何人指定校推薦があるのだという話は、その責任を果たすような内容で全くない。

☆大学がリソースを21世紀にむけて活用しようとするか、21世紀型教育のお荷物になるのか、私立中高一貫校の選択は、そこも見定めなければならない時代になっているのである。

☆塾予備校が、この手の話をしないのは、それは受験市場のマーケティングの制約があるから保守主義的経済原理上当然である。

☆しかし、2012年、世界を動かす経済原理が保守主義的発想でいくのか、リベラリズムに基づくのか、リバタリアニズムに基づくのか、コミュニタリアニズムに基づくのか、態勢が明らかになるが、どうやら保守主義的な経済原理は敗退する時代の流れがきているだろう。サンデル教授が今さら日本で騒がれたのは、そういう兆しがあるからだろう。

☆「リーマンショック2」が6か月後以降に起きるといわれている。海外移転はもはや空洞化ではないと認識したほうがよいという考え方もでてきた。

☆私立学校中高にとって、この動きは帰国生が雪崩のように増えることを意味する。帰国生は英語に力を入れてほしいのではない。海外で経験してきた学習環境と互換性があることが重要なのである。つまり21世紀型教育!英語にではなく英語教育に力を入れている学習環境!。

☆海城学園が必死に帰国生対応の戦略を立て、ダイナミックに動いている。まだまだ公開していないとっておきの戦略・戦術が来春披露されるだろう。

☆海城学園がその戦略をどこから学んでいるか、それはかえつ有明であり、聖学院であり、富士見丘であり、洗足学園であり、茗溪であり、世田谷学園であり、広尾学園であろう。聖光学院や渋谷教育学園グループ、攻玉社も当然研究しているが、これらの学校は、すでに海城学園が到達している東大合格実績アップのための戦略であるから、海城学園が望む21世紀型教育の戦略を学ぶべきことは何もなかっただろう。

☆麻布や開成の新しい教養主義レベルも海城学園は凌駕している。そういう意味では、学ぶべき学校は、知られざる未来を拓く叡智が集まっている学校なのであるが、それを見抜く慧眼の持ち主が、海城学園にはたくさんいるのだろう。

☆そして、最終的に行きつくのは、結局、ケンブリッジとアメリカ西海岸だろう。そこに未来を拓く学びの環境があるからである。そこでは、八雲学園と土浦日大、そして再び洗足学園、かえつ有明と出会うことになるだろう。その四校は、すでにその地に深く豊かにつながっているからである。

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