麻布学園の図書館通信「衣錦尚絅」のススメ
☆麻布学園のサイトには、図書館通信がオープンにされている。麻布学園に興味のある方や受験生のみならず、私学中高一貫校の教養知とは何なのか知りたい方も必見の通信である。
☆特にメディアは、読まなくては。私立学校がどのような知を育成しようとしているのか、ちゃんと知ったうえで情報を発信してほしい。「知」なんてわかりにくいし、ウザッたいと学校案内を制作する側が平気で言うのをよく耳にするが、それは天になんとかだろう。
☆私立学校の本質をゆがめて、もう閉塞状況におちいっているポストモダンな大量消費賛歌をいつまでも歌っていてはいけない。麻布の化学の先生が「内田樹著『下流志向―― 学ばない子どもたち働かない若者たち』」を紹介しているコラムでこう語っている。
家庭で何もすることがない、むしろ何もしないように言われる子どもたちですが、生産活動がほとんどない一方で、消費活動へはあまりに早い時期から参加することになります。そしてそのはじめての社会経験で子どもたちが感じることは何かというと、全能感なのです。子どもでも、お金さえあれば大人と同じサービスを受けることができるのですから。その結果、学校でも子どもたちは「教育サービスの買い手」というポジションを無意識のうちにとり、授業という商品の価値やその商品が自分にとって必要かどうかを考えるようになるのです。教育というものは、受けてすぐにその価値が分かる、あるいは成果が出るというものではありません。自分にとって本当に役にたつかどうか、意味があるかどうかは、しばらく勉強してみないと分かりません。「そんなの自分にとっていらない」と購入しないのは簡単ですが、それには「連帯保証人」が必要になるのです。それは「未来のあなた」なのです。「未来のあなた」のためにも、とりあえずは授業を聞いて考えてみることをお勧めします。
☆市場の原理は、必ずしも功利主義を意味しないが、その原理を損得勘定という一面的な考え方で規定するようにしてしまったのは問題である。功利主義的な教育理念を持っていないのが、≪私学の系譜≫なのである。このことを理解し、広めてほしいものだ。
☆それにしても、図書館読書会などというなんて高邁な教養主義が、いまだに継承されているのだろう。大学受験指導をはるかに超えた学びの環境。偏差値に関係なく、どの私学でも実践してい欲しいが、必ずしもそうではない功利主義的私学も見受けられるのは残念である。ともあれ、図書館通信にはこうある。受験生も気にしておいた方がよいかもしれない。
第6回“「戦争」と「平和」を考える”図書館読書会
伊勢崎賢治著『紛争屋の外交論』(NHK出版新書、'11年3月刊)を読む
・日時:10/8(土)、13:15~15:30 ・場所:記念館1階小教室3
ムンバイ(インド)のスラムでの活動をはじめ、NGO・国際連合職員として世界各地の紛争現場で、紛争処理、武装解除などに当たった実務経験を持ち、「紛争屋」を自称する伊勢崎氏の最新刊を読みます。現実遊離の理想主義でもなく、現実追随の現実主義でもないところで、著者とともに「戦争」と「平和」を考えてみたいと思います。標題の本を必読としますが、昨年に刊行された『国際貢献のウソ』(ちくまプリマー新書)や『アフガン戦争を憲法9条と非武装自衛隊で終わらせる』(かもがわ出版)も読んでみてください。
☆独りで読書するだけではなく、仲間とワイガヤしながら本を読むのは実に刺激的で知も興奮するのは間違いない。
*図書館通信の表題の由来については、同冊子にこう書かれている。
図書館入り口のギャラリーには、創立者・江原素六の筆になる「衣錦尚絅」という扁額が掛けられています。この言葉は、『中庸』を出典とするもので、一般には奥ゆかしさを意味しますが、図書館では、知識や学問を身につけてもそれをひけらかさないという、衒学を戒める言葉として受け止めています。
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