21会(21世紀型教育を創る会)はじまる in 広尾学園
☆メンバーは、21世紀型教育を実践し、グローバル人材を育成し、そのために帰国生の受け入れを強化している私学人とその支援パートナー。広尾学園大橋理事長、聖学院平方校務部長、かえつ有明石川教頭、(株)スタディーエクステンション(SE)代表取締役鈴木氏である。
☆話題の中心は、
1)グローバルビジョンを現実化する私学人の連帯
2)大学入試を変える私学人の連帯
3)中学受験市場を変える私学人の連帯
☆文科省や経産省、東大は、大学入試と就活のガラパゴス化「悪循環」の鉄鎖を断ち切り、留学生やグローバル人材のタレントを生かせる大学入試制度、就活システムのビジョンを出している。これによって、グローバル人材を育成し、国際的信頼を築きながら経済活動を発展させ、GDPのV字回復を考えている。
☆しかし、それはいつになったらできるのか、震災復興のスピードの遅さに象徴されるように、官僚近代の安定志向性と遅速性は今に始まったことではない。(この記事を書いている今も、東大が入試制度について、従来型の一般入試でもAO入試でもない「第三の道」を探るという記事が朝日新聞からリリースされた。しかし、5年から10年かけてという話のようだ・・・。)
☆教育制度が劣化ないし機能停止し、グローバル人材を輩出するはずの21世紀型教育に迅速にジャンプすることができないということは、本当は子どもたちの未来を考えていないということなのではないのか。21会メンバーの対話は、熱を帯びた。
☆3校とも、英語以外に数学や科学の教育(教育というより教養や研究といった高次レベル)に力を入れているが、それは大学入試問題を解けることを第一の目的にしているわけではない。むしろ、リベラルアーツに近いと大橋先生は語った。
☆広尾学園では、英語と言えば、インタークラスがあるし、サイエンスと言えば、今年から設置した「医進サイエンスコース」がある。
☆それぞれの営みが、いかに生徒たちの中にある未来を引き出しているか、大橋先生から紹介された。また、これらのクラスやコースが立ち上げられた理由は、たいへん興味深く、メンバーも刺激されたようだ。(具体的な内容はここでは公表できないほどいわゆる企業秘密)
☆かえつ有明も、広尾学園開設と同時期に豊洲移転、共学校化した。やはりサイエンス科というクリティカルシンキングと高校の帰国生を中心とするアドバンスクラスは、TOKというインターナショナル・バカロレアのディプロマを参照したプログラムが実践されている。このプログラム開発には、「ニュートレジャー(Z会)」の開発・編集者である2人の英語の先生がいる。
☆石川先生は、ロジカルシンキングは大切であるが、それだけでは世界の舞台では対話や議論ができない。自己相対化できるクリティカルシンキングまで高めておかなければと。
☆そして、生徒たちの未来は、未知なる出来事にばかり遭遇するだろうから、既知の知識から出発するのではなく、仮説から出発しながら検証していけるクリティカルシンキングが必要であると。それはまた本当の意味での教養であると。
☆できれば中学受験の段階で、ロジカルシンキングの基礎をつくってきてもらえるとよいのではないか。そのためには、中学受験の入試問題それ自体を変えていく必要があるだろうと。
☆平方先生は、聖学院でも学校の顔である入試問題の質を、特待選抜入試でかなり思考力重視に変えてきている。多くの私学で、そのような流れをつくることが重要ではないかと。
☆広尾学園もかえつ有明も、思考力をみる入試枠をつくっているので、そこでも対話は盛り上がった。
☆平方先生は、結局授業や試験内容が、学んだ力だけではなく学ぶ力、学ぼうとする力という「学びの三層構造」に適合しなければ、21世紀型教育にならないし、グローバル人材は育たないと。
☆企業や政府がグローバル人材や21世紀型教育と語るとき、どうしてもテクニカルスキルという側面でのイノベーションが語られるが、それ以前に、ファンダメンタルスキルとしての「学びの三層構造」が養われなければならないと。
関連記事)聖学院 知られざる豊かな教育
☆(株)SEの鈴木氏は、リベラルアーツにしても、クリティカルシンキングにしても、ファンダメンタルスキルにしても、結局はIBのディプロマの理念と同じであり、国内で取得したIBを大学進学の適性資格と認定する動きが岡山大学ぐらいでしかないのは、やはり問題であると指摘。
☆鈴木氏自身、IBジャパニーズのアドバイスもしてきているし、大学入試の帰国生のカウンセリングもしてきているから、そのへんの事情通でもある。
☆また、21世紀型教育やグローバル人材を育成する教育の質を形成している「グッドスクール」のコミュニティサイトも開設した。
☆3校は、実際にロジカルシンキングやクリティカルシンキングを導く入試問題を作成し実施している。大学入試制度を変えるような動きとしては、さまざまな人脈によって情報交換をしている。グローバルビジョンを現実化するために、世界ランキング100位以内の海外大学の進路指導も開始している。
☆かえつ有明は、ケンブリッジ戦略を行っているし、聖学院は世界ランキング74位のクイーンズランド大学(オーストラリア)の指定校枠をつくり、すでに動き出している。広尾学園はインタークラスが順調に成長し、海外大学進学者がたくさん出る手ごたえを感じている。
☆アイエルツのファンデーションンシステム、IBのディプロマ、米国のプレップスクールを中心に実践されているAP(アドバンスド・プレイスメント)コースに相当する質の高い授業に挑戦している3校を支えるような私学人は、他にもたくさんいる。
☆そのような私学人同士の連帯として≪21会≫が成長することを誓い合って、お開きとなった。この私学研ブログ(ホンマノオトと呼ばれている)では、語り尽くせぬことが山ほどあったが、おそらく1つひとつ形になっていくのにそう時間はかからないだろう。スピード感は≪官学の系譜≫に比べ、≪私学の系譜≫の方が圧倒的に速いことは確かだろう。
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