広尾学園 参加者一万人
☆中1の息子のプレゼンの姿を見て、ある父親は、どうしてこんなに変貌するのか驚き、不思議に思い、大橋学園長に質問したそうだ。
中学受験までは、勉強はどちらかというと受け身だったでしょうが、広尾学園に入ったら、すぐにモチベーションを自ら燃やすために、とにかくチームで議論をして活動する学びや体験が多いから、自ずと前のめりになるのでしょう。
☆そう学園長は回答されたそうだ。たしかに、「けやき祭」の雰囲気は才能と才能のコラボレーションである。各クラスでプレゼンの運営をするには、受付から司会、PR、広告などが必要であるから、1人探求していればそれでよいというものではない。ちょっとしたセミナー企画の多様な空間なのである。
☆それにしても、プレゼンの質はなかなかのものであった。ワクチンが必ずしも良い影響だけを与えるのではなく、感染病などを新たに引き起こす場合もあるという事実を調べ、常識に対し挑戦するというような優れたプレゼンが目白押しだった。パワーポイントもPCも自在に使っていたが、日本語でプレゼンする場合、ペーパーを見ながらスピーチすることはなかった。
☆これは、ほかの学校とはかなりレベルが違う。暗記しているというより、画面をみながら自然と話すべき内容がでてくるという雰囲気だった。
☆さらに驚いたのは、中1のインターのクラスのプレゼン。インターといっても、私が見たのは、アドバンスクラスではなかったから、入学してから英語を本格的に学んだ生徒たちである。半年でここまで成長するのだから、高3時の成長は推して知るべしである。保護者が学園長に「成功ですね!」と話しかけるシーンもあったぐらいだ。
☆それから、これはどう表現してよいのかわからないほど驚いたのは、今年開設した「医進・サイエンスコース」のプレゼン。まだ高1であるが、私がプレゼンを聞いたチームは、遺伝子組み換えの研究をしていて、よりおいしい作物をいかにして作るかというテーマに取り組んでいた。
☆しかし、ただ取り組んでいるというのではない。大学や大学院に進めば、当然研究者仲間の論文は読み漁るわけだが、それを彼らはやっている。となると当然科学論文は英語で書かれているのである。それを読み込んで、先行研究の紹介プレゼンをしたうえで、モデルとして活用できるところは活用しながらオリジナリティを出していくという科学的な取り組みをしているのである。
☆プレゼンが終わったら、東大や理科大の大学院生(おそらく在校生の兄弟)から質問をうけるぐらい会場は興奮気味。指導にあたった(このクラスの担任でもある)木村先生の眼差しは、終始誇らしげに見守っていた。生徒の眼差しと教師の眼差しが交差して、科学の目が生まれる瞬間に立ち会ったような感覚だった。
☆広尾学園はサイエンスを教育の柱の一つとしているから、難関理系に強い学校を目標にしていた生徒も多いという。その父親が学園長に、「広尾学園に入れて、正解でした」とお礼を言っている場面は小気味よい。
☆学園長は、あちらこちらで呼びとめられる。そのたびに丁寧なコミュニケーションをとられる。この「リスペクト」はどこから生まれてくるのだろう。それは、中2のサイエンスクラブの生徒のプレゼンに耳を傾けているシーンで納得。
☆サルから人間への進化の過程を説明しているシーンであるが、生徒は論文を調べるだけではなく、進化の痕跡を見つけにサルの写真を撮りにいったそうである。二足歩行に転じる仮説もおもしろかったが、サルから人間に進化するとき、犬歯が小さくなったというのは大いにおもしろかった。物理的力からギブアンドテイクの経済原理の次元にシフトした時、進化はジャンプしたのだと。この視点は戦争について考察するアインシュタインとフロイドのやりとりに匹敵するかもしれない。
☆もちろん「けやき祭」は祭りである。研究発表だけではない。アートも武士道もクラブ活動もある。
☆広尾学園が活気に満ち、人気があるのは、教科書をはるかに超えた生徒の日々の知的探求に火をつけるこの知の祭りがあるからだと確信した。
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