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Future Skills Projects主催シンポジウムで未来つかむ

☆昨日10日(木)、日経ホールで「産学協同就業力育成シンポジウム」が開催された。基調講演は、鈴木寛氏(民主党政策調査会副会長・文部科学前副大臣)。その後、企業人と大学人によって共同就業力育成プログラム実践の報告があった。

☆この段階で、大変興味深かったのは、鈴木寛氏の歴史科学的公共社会像と今回の就業力育成のゴールイメージのGAPが浮き彫りになったことだった。

☆鈴木寛氏自体は、20世紀型産業社会から21世紀型クリエイティブ社会へのシフトを歴史科学的に検証し終え、それに基づいた政策立案をして、実践してきた。それは、資本主義的経済の矛盾を熟議型民主主義で補い、不可能性原理にいきつく民主主義のジレンマを、21世紀型クリエイティブクラスによる資本主義によって補うという優れたしかし複雑系のビジョンである。

☆もっとも、政治家であるから、企業人からも大学人からも協力を得られるようにわかりやすくしかし複雑な理論構築をしているのは言うまでもない。

☆しかし、今回の協同就業力育成プログラムを実行した企業人や大学人は、いままだ20世紀型産業社会の壁を乗り越えようとしているわけだから、鈴木寛氏の政策立案においついていない。

☆鈴木寛氏は、あらゆる協力を得ながら、富の公共的な配分を考えているから、人材育成方法は、すべてがコミュニティ発想である。実際コミュニティスクールも着手して一定の成果を上げているし、科学技術、アート、スポーツ、経営、医療などの分野で、イノベーションを起こす人材育成の環境を整えてきた。スポーツ基本法も成立し、とくにサッカーの大事業はその成功を物語っているといえよう。

☆しかし、企業にしても大学にしても、そのようなイノベーターやクリエイティブ・クラスを生み出す環境は整っていない。そこを突破しようとしたのが、今回のFSPというプロジェクトであるという課題先進性が、基調講演と報告の対照によって、あたかも判じ絵やトリックアートように演出された。さすがは、事務局ベネッセコーポレーションのプログラムである。

☆さて、第Ⅱ部は、これまでの話や報告を受けて、みんなでディスカッション。鈴木寛氏も座席最前列で耳を傾けていた。TPPの行方は本当はもう決まっているのだなと思いつつそのシーンを眺めていた。

☆それはともかく、議論は終わり間際にヒートアップした。実は大学人が20世紀型産業社会の知の在り方から自由になっていないなァということが明らかになった。それに比べ、企業人は21世紀型産業人育成づくりに費用対効果を熟慮しながらチャレンジしているということが明らかになった。

☆実は鈴木寛氏は、2つのキーフレーズを投げかけていた。「智識コミュニケーション文明をめざした学びの創造と学びの共同体」「労働・仕事中心からの卒業=活動中心」というのがそれである。

☆前者は、戦略的コミュニケーションと生活世界コミュニケーションというハーバマス的二元論のコミュニケーション行為論を換骨奪胎したビジョン。後者はハンア・アレントの人間の条件にヒントを有した鈴木寛氏の着想(ハンナ・アレンとは、労働・仕事・活動を要素還元はしない)。

☆ところが、大学人は、観想的な研究から思考の枠組みは一歩も出ていなかった。おかねは国や企業や学生が支払ってくれるものであるというかつてのヨーロッパ型専門知養成の大学の枠組みとでも言おうか。

☆それに対し、企業側は、現状はたしかに労働と仕事が中心で費用対効果が優先されるけれど、大学とのコラボによって、その都度解決していきたいという現実的理想論を掲げる宮野原氏(日本オラクル株式会社)の発想はシャープだった。そんな中、鈴木寛氏の見識と一致している考え方を披露したのは深澤氏(株式会社資生堂)だった。

☆2単位で正規の授業に組み入れるのは、教授会ではなかなか難しいとか、学問を軽視するような人材を講師として送らないでくれという大学の企業側に対する要望に、十分に耳を傾けたうえで、活動という次元でコラボできるように互いに努力していくことを望むと語られた。

☆これは座長の安西前慶応義塾長の言葉とも共振していた。つまり、さまざまな矛盾を解決し、労働や仕事のレベルまで持っていくために、まずは活動というところからこのFSPは船出したばかりなのだと。

☆人材育成のポイントは、3Rから3X・3Tへとシフトしている。そこに向かってFSPが向かっていることは確かである。

☆このFSPのプログラムを理解できる大学人は、21世紀型である。このプログラムを理解できる企業人は21世紀型である。このプログラムを理解できる学校人は、21世紀型である。このプログラムを理解できる人材は、21世紀型である。

☆今回参加した大学生が、このプログラムを通して21世紀型の発想の重要性に気づいたけれども、主体的に21世紀型の智識コミュニケーションをとることはなかったというような旨を松本氏(ベネッセコーポレーション)は、事務教側から報告された。

☆みな21世紀なのに飛べない20世紀型社会の価値観や枠組みに規定されているのは当然であると改めて思った。

☆会終了後、名刺交換会があったが、西武文理の江沢先生やかえつ有明の石川教頭から、「主体性」というキーワードについて対話を求められた。「主体性」という言葉の語用論的意味が語られた。語用論とは、ハーバーマスのコミュニケーション論のエンジンであり、鈴木寛氏の見識である。

☆グッドスクール、グッドユニバーシティ、グッドカンパニー、グッド公共人、グッド専門家、グッド政治家、グッド政策官僚、グッド人材のミッシングリンクが一瞬見えた。トライアングレーションの機能したシンポジウムであった。

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