« 土浦日大中等教育学校 リベラルアーツな文化祭(了) | トップページ | 聖学院 男子校の文化祭 「創立105周年記念祭」 »

教育関連市場の方向性(2)

☆教育制度や政策は、音を立てて変わるという大きな動きが見られないのは世の常であるが、教育関連市場は大きく変わるときがある。それは政府や文科省が、制度や政策ではなく教育実存を変えるときである。

☆教育内容が時代の新しい人間の生活の近未来を開くことに結びつくことを教育実存と呼びたいのだが、その教育実存の変化がいよいよ生まれる兆しがあちらこちらに見られる。

①東大の「第三の道」の入試もの模索

②大学キャリアセンターの20世紀型産業社会支援からのパラダイムシフト

③大学教員による「脱講義」の動き本格化

④21会に集うグッドスクールの提言準備の動き

⑤就活を応援するコンサルタントはリベラルアーツ推奨(東洋経済)

⑥文科省、内閣府の戦略(認識)は、ガラパゴス化形成の大学入試と就活をグローバルなIB型プログラムにシフト

⑦就活における大学生の学力低下と幼稚化進行を阻止するスキルや知力の再形成待望論

⑧日経新聞編集者の論調によると、弱いエリート育成の教育の反省と「考える力」強化

⑨大学入試で国内IBを認可する兆し。秋入学、秋採用の動向が連動

⑩公立中高一貫校の適性検査、学力調査テストでPISA型の定着

⑪中学受験業界の「ロジカルシンキング」志向性へシフトの予兆

☆以上のような動きは、すでに本ブログ≪私学研ホンマノオト≫で論じてきたことだが、今日の日経新聞の記事でさらに活発化すると予想できる。

☆その記事のタイトルは、「高校生の論理思考テスト――来年2月 全国の2年生5500人抽出」。すでに本ブログ≪私学研ホンマノオト≫では、「学習指導要領を世界標準に」というエッセイを掲載しているが、OECD/PISAの結果で、日本の生徒(高1)は、知識(情報)の想起や確認、整理のレベルまでは卓越しているが、論理的思考や批判的思考、創造的思考のレベルは他国の生徒に比べて弱いのは、学習指導要領が生み出しているに過ぎないということを論じている。だから、学習指導要領を世界標準にシフトしたほうが良いよと。

☆その動きをやっと文科省もしようというのだろう。日経記事では

調査に乗り出す背景には、企業活動や社会のグローバル化がある。日本人同士ならはっきり言葉に出さない「あうんの呼吸」で乗り切れても、国籍や文化が異なる人々と接する国際社会では通用しない。論理を積み重ねてたどり着いた意見をはっきり伝え、相手の主張も的確に理解する力が必要になる。複雑に利害が絡んだ問題を整理をし、解決法を導くにも論理的な思考が欠かせない。

☆とある。半分歓迎だが、半分は、なんて「適応主義」なんだろうと。グローバルであろうがなかろうが、論理的思考は、民主主義を標榜する限り国民一人ひとりが身につけねばならない基礎力である。それを論理的思考は難しいとか、日本人は不得手だと言ってまかり通っていたこと自体、いかに学歴エリートにコントロールされてきた官僚近代社会と言いながら、封建的精神が脈々と流れてきたことか。

☆だから、論理的思考を浸透させるためのリサーチに税金を使うことは、承認しようではないか。しかし、グローバルな舞台での交渉は、論理的思考では乗り切れない。グローバルな仕事の事務処理はできるという程度である。だから、必要ではあるが、乗り切るにはクリティカルシンキングやクリエイティブシンキングの養成が急務である。

☆しかも、そのためには、高校2年生からロジカルシンキングを養うのでは遅いのである。21会のメンバー校=グッドスクールである先生方と話していると、ロジカルシンキングは小学校段階でイメージをつかめるように育成し、中学段階でスキルを鍛えクリティカルシンキングもできるように成長させる。そして高校になってからはクリエイティブシンキングをトレーニングするのであると。

☆それなのに、高校2年生からとは・・・。PISAで、他国の高1はすでにロジカルシンキングは日本に比べ強いのである。それなのに・・・。まっ、競争すればよいというものではたしかにないが・・・。

☆ともあれ、やらないよりやったほうがよいが、高2からというのは、6・3・3制の限界が導いたことなのであるということは、文科省も仮説ぐらい立てておいたほうが良い。

☆中高の思春期を、高校入試で分断するために、思春期を自らの状況を論理的に把握しながらクリティカルシンキングで、自己相対化していく成長過程を分析できないでいる。文科省は態度主義的道徳で、乗り切れると思っている。認知科学的な道徳理論が必要であるというのに。しかし、それは中高一貫になっていないからしかたがない。教育実存がそうなのだから、しかたがないのである。

☆ならば公立中高一貫校があるではないかというかもしれないが、文科省の研究や調査を超えて新しいプログラムを作る体制は、法制度上出来ない。

☆だから、21会のようなグッドスクールの動きがでてくるのである。21会に集うグッドスクールは、

①帰国生の受け入れが本格的である。

②中学入試問題は骨太の論理的思考を問う問題を作成している。

③海外大学への進路を本格的に開く準備をしている。

④中学段階で体験から新しい知識や概念を自ら哲学するプログラムを作っている。

⑤高校からはIB型のプログラムの環境を設定している。

⑥グッドスクール同士、教育の質の競争する。競争的なコラボをする。

⑦学校サイトで、教育の質を公開し、教育のヒントをシェアしている。

☆日本の学校すべてが、このようなグッドスクールににわかには成長できないが、教育実存が大きく変わる動きが、2012年に重なり合うことは確かだろう。

|

« 土浦日大中等教育学校 リベラルアーツな文化祭(了) | トップページ | 聖学院 男子校の文化祭 「創立105周年記念祭」 »

教育と市場」カテゴリの記事