中学入試 併願作戦を考える時期(1)
☆本ブログの2009年の記事「併願の仕方とクオリティスクール(前10回)」が読まれ始めている。検索エンジンで、「学校名と併願校」のアンド検索をしていて遭遇したのだと思う。つまり、画竜点睛を欠かないように、中学入試の併願作戦を本格的にリサーチし始める時期がやってきたのだ。
☆本ブログ≪私学研ホンマノオト≫の併願に対する基本的立場は、2009年のときと変わっていないが、今年の10月から、クオリティスクールというワードではなく、グッドスクールというワードで明快に立場を私学市場に限定した(クオリティスクールの考え方は受験市場と私学市場のバランスで考えていたものである)ので、その角度からコンセプトについて述べておきたい。
☆受験市場における併願作戦の立場は、先日サイトで公表された首都圏模試の「中学入試レポート№5」でわかりやすく解説されている。まず私立中高一貫校の意義や重要性を次のように述べている。
公立学校の“復権”策が進められるなかにあっても、今後6~7年の間に(つまり、お子さんが中高6年間を過ごす間に)、公立学校をリードする教育展開や、その成果を見せてくれる私立中高一貫校が、これまで以上に増えてくるに違いないということだ。
いま、公立学校も次々と改革を重ね、一部の公立中高一貫校や、都立の進学重点校は、確かに“復活”ともいえる成果をあげてきた(ように見える)。しかし、目立ってそうした成果が見られるのは、まだ、日比谷高校や西高校、戸山高校をはじめとした進学重点校に限られている。それは公立学校全体からすれば一部の学校でしかなく、全体構造の好転にはつながっていない。
☆そのうえで、併願作戦の重要性を説いている。
そうした時期だからこそ、すべての中学受験生の保護者に、あらためて「公立と私立の教育を比較する」意識と、それを検証する視点を持っていただきたいのだ。そして、そうした意識のもとで、数々の学校の教育内容と成果を自ら調べ、比較検討することで、「めざす第1志望へのチャレンジ」を軸に、「第2~第5志望までの併願作戦」をしっかりと固め、最終的に「実り多い合格を勝ち得る」ことが可能になってくる。
☆さて、まずここまでで、私学市場の立場から、以上の見方をみてみると、受験市場は大学進学実績という切り口で、私立中高一貫校の意義を述べていて、それはそれで、同意するはずである。私立中高一貫校で、大学進学指導など関係ないというところは少ないし、理想と現実を一致させたいというのが私学の理念だからだ。
☆しかし、理想と現実を一致させるとは、現状の矛盾を解決する人材を育成したいという精神があるから、東大、早慶上智に進学させることを第一義としているわけではない。矛盾を解決しようという科学的見識や戦略的で革命的なリーダーシップを育成しようとしているという主張をするのが私立中高一貫校であり、そのような現状の社会の矛盾を根本から解決するかどうかは公立学校は教育制度上問うことはできないのである。
☆また、リーダーシップ論は、ともすれば主体性論にすりかえられ、個人の学びの意欲や職業意識の問題としてとらえられてしまいがちなのも公立学校である。大学進学はあくまで就職という進路の枠組みでとらえられるから、社会を支えている資本主義や民主主義のジレンマをメタ的にとらえる視点まで発達させる思春期学を有していないのも公立学校である。いまここでの産業社会に適用することが最重要なはずである。
☆たとえ、明日社会がガラリと変わることがわかっていても、それに対応するには時間がかかる。文科省ではグローバル人材の育成に乗り出しているが、教育制度上それが本格的になるには、2020年の学習指導要領の改訂を待たねばならない。脱ゆとりの学習指導要領が始まったばかりであるが、それは10年前の問題を解決した(ともおもえないが)成果に過ぎない。
☆ところが、私立中高一貫校は、学習指導要領はミニマムであり、それ以上の学びを行っている。そのような学びのビジョンについては「学校選択のミスマッチの回避(3)」を参照していただきたいが、私学市場からの私立中高一貫校の意義は、時代の要請に瞬時に対応できる俊敏力なのである。
☆受験市場は、明快に大学合格実績という量の競争を切り口としているし、私学市場は教育の質の競争を切り口としている。経済社会を編成している市場は、多層多角的であり、単層化することのほうが恐ろしいわけだから、両市場の存在意義は重要。問題は、消費者である受験生の保護者は、そうした多層多角的市場の存在意義を相対化できるようにしておくと併願作戦もうまくいくと思う。
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