世の中「知識方法論」が変わる[02]
☆「知識の方法論」が変わるというのは、3月11日14時46分から72時間にグーグルが形式知化したのである。それは、「IT時代の震災と核被害」(インプレスジャパン)の序「グーグルの72時間」に映し出されている。
☆グーグルは地震発生直後、72時間のあいだに、さまざまな震災救援サイトを立ち上げた。パーソンファインダー、震災特設サイト、避難所情報公開、被災地の衛星写真公開、募金受付、自動車・通行実績情報マップなど、震災後の危機管理システムをネット上に速やかに構築したのである。
☆このスピードはいったいどうして可能だったのかというと、グーグル日本法人川島優志氏はこう回答している。
「あまり深いことを考えていたら、きっと前に進めなかったでしょう。深く考える人には向いていない状況だったかもしれない。周囲と相談して、じゃあ、これはナシにして、こっちにしよう・・・・・・いや、やはりこのやり方ではダメだ、こっちのほうがいい、みたいな進め方でしたね」
☆これは、謙遜でもなんでもなく、知識尊重のシステムがグーグル内にできていることを示唆しているのである。
☆知識尊重がゆえに、権威やお役所的壁という官尊民卑のストレスがないのである。ある意味その権力を空気にして縛るメディアの空気もはねのけている。ここに新しい「知識の方法論」が明確になったといえよう。
☆ただし、じゃあグーグルは権威と闘ったのかというと、むしろ闘いをスルリと回避したのである。知識はその形式と内容からなるが、実はもう少し複雑で、それぞれ外延(denotation)と内包(connotation)の両側面をもっている。
☆今までは、この知識の方法論が明確でなかったために、同じ知識を使ってもズレが生じてディスコミュニケーションが生じていた。そこに不用意な葛藤が起こる事態が発生していたともいえる。
☆しかし、今回の緊急事態では、グーグルは不用意な葛藤を起こすロスタイムをできる限り切り詰めたかった。そのために、良かれと思ったことが、真逆の反応を引き起こすとか、いちいち認可を取らねばできないようなことは、さっさと回避したのである。
☆だから、「深いことを考えて」いなかったというのは、レトリックにすぎず、実によく考えていたのである。
☆さて、その回避したコトとは、上記の「知識の方法論」のカテゴリー表にあるように、「外延・形式×外延・内容」に知識の範囲を絞り切ったのである。内包部分を切り捨てたから、そういう意味では外から見ていると、「深いことを考えて」いなかったように見えるが、何が外延で内包かを見極めていたということ自体、深く考えていたといえよう。
☆従来は「知識の方法論」が「形式と内容」という大雑把な切り口でとらえられてきたから、同じ知識でも、どのカテゴリーのスタンドポイントで述べているかによってズレが生じ、そのために葛藤が生じていた。
☆大臣の失言問題は、緊急事態発生のときに、グーグールのように「外延・形式×外延・内包」の領域で話さねばならないのに、「内包・形式×内包・内容」の領域で話して、レトリックに過ぎなかったのにと言っても後の祭りである。
☆しかし、この「知識の方法論」が学習指導要領できちんと学べないから、日本人は、そのような大臣のことを空気が読めないという表現をしてしまう。これでは、すぐに大臣は辞任するということにならない。
☆方法論が間違っているのだから、戦略がぜんぜん遂行できなかったわけだから、これは大きな判断ミスであり、判断を間違ったのだから、それはリーダーとして辞任するのは当然であるという議論にならないのである。
| 固定リンク
「教育イノベーション」カテゴリの記事
- 【八千代松陰】千葉から世界を変える(+1) 生徒の内なるトルネード(2018.06.27)
- 【八千代松陰】千葉から世界を変える(了) 教師力と先進的なティール組織(2018.06.26)
- 【八千代松陰】千葉から世界を変える(3) 知のトルネード(2018.06.26)
- 【八千代松陰】千葉から世界を変える(2) 知性と感性の空間(2018.06.26)
- 【八千代松陰】千葉から世界を変える(1)教育のキーワード(2018.06.25)
最近のコメント