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首都圏中学入試2012[06]

☆学校選択動向を探る視点⑥・⑦について考えよう。

⑥教授法と学び方の差異化と最適化に対する教育の見識

⑦イノベーティブティーチャー(iTeacher×Leader=iTL)の存在理由を認識している学校の見識

☆この両視点も、切り離せない密接な関係にある。教授法と生徒の学び方の差異を認識する時点で、すでにその教師は、イノベーティブティーチャーである。

☆というのも、1989年ベルリンの壁が崩壊してから、ようやくこの差異が強調されるようになったからである。それまでは、教師の教え方がよければ、あとは生徒の能力の問題で、生徒の学力やタレントが伸びるのは、生徒ががんばったかどうか、自主的に勉強したかどうかにかかっていた。

☆しかし、89年以降の新しい学習理論は、生徒自身が学びの方法を知らないのに、どんなに教授法がすばらしくても、伸びないのはむしろ当然であるという認識が広まった。それまでは、教授法を示す言葉は「ペダゴジー(pedagogy)」と呼ばれてきた。ところが、学び方を示す言葉は存在してこなかった。

☆そこで、MITラボのシーモア・パパート教授は、“Mathetics”という言葉を創った。ペダゴジーは「読み書きそろばん(3R)]を教師が教えこむ方法であり、マセティクスは「探究・議論・発表(3X)」を生徒が学ぶ方法である。教師と生徒の間にある知の格差を生み出していた壁が崩れたのである。

☆そして、パパート教授が3Xを推進する道具として活用したのがITである。IT自身、教えられるのではなく、3X型の学びで自らそして仲間と話し合いながら、技術を獲得していくイメージの強い道具であったし、今ではますますそうである。

☆だから、電子教材や電子黒板が広まっても、実は教授法の道具として活用されているうちは、まったく20世紀型教育なのである。学び方であるマセティクスを促進する道具でなければ意味がない。もっとも、今では、教えると学ぶが同時になっているというのが21世紀型教育で、ペダゴジーとマセティクスは生徒にとっては、両方とも学びに内包されるようになってきている。

☆さて、このようなマセティクス型あるいは3X型の21世紀型教育は、従来型のペダゴジーしか知らない教師は遂行できないのは言うまでもないだろう。教職課程や教員資格テストの教材や問題は、依然として89年以前であるから、授業の中でマセティクス3X型の授業が行われるはずはないのである。

☆では、マセティクス3X型の授業ができる教師はどのように生まれるのか?それは実に簡単なことである。留学経験や帰国生の経験をしている英語の教師を雇うことである。ところが、日本の大学で教職をとってから海外の大学院に留学したという場合は、問題ないが、学部から留学してた場合、単位の互換をめぐって、教育委員会が迅速に処理できないから、優秀な英語の教師も、日本で教員資格を得るのに時間がかかり、途中でほかの仕事についてしまう場合が多いという、人材リソースの活用ができないのは、相変わらずお役所仕事である。

☆それはともあれ、グッドスクールには、留学経験や帰国生だったという英語の教師が多い。とくに英文学や心理学、社会学を海外の大学院で学んできて英語の教師になったという人材の場合、他の教科に良き影響を与える。

☆というのは、海外の教育というと、IBとか、プロジェクト学習とか、ディスカッション授業とか、リベラルアーツとかが話題になる。あるいはTOEFLやIELTSという話がよくでるだろう。留学体験や帰国生体験は、これらのいずれかを体験してくるわけだが、これらの中にマセティクス3X型の授業がすでに内包されているのである。

☆そして、そのような英語の教師は、シーモア・パパート教授と同じような感覚でITを活用する。ITというよりWebと言った方がよいかもしれない。

☆それゆえ、そのような英語の教師は、iTLなのである。もちろん英語の教師だけがそうなのではないし、留学経験がなくても、iTLである教師はいる。どのような場合か、それは新人類世代(今の40歳前後の教師世代)に多い。というのは、マセティクス3X型の学習法の理論のベースは、現代思想や現代数学、ニューサイエンスの影響を受けているからである。

☆これの学問は、新人類世代が習得した学問である。といっても新人類世代がすべてそうだというのではない。80%は、むしろこれらとは無縁の金融経済の夢を追っただろうし、今もまだ追っているだろう。しかし、教師の道を選択する場合、むしろ金融経済を生んだ近代社会やポストもダニズムを批判する現代思想や現代数学、ニューサイエンスの志向性を選択する場合が多い。そして、そういう志向性は近代社会の象徴である公立学校とは葛藤を起こすから、私立学校に自然と流れてくる。

☆えっ、なんかラジカルではないかと思うかもしれないが、大学受験の問題がすでに新人類世代の学問をベースに出題されているし、グローバリゼーションの光の部分は、すでにそのような学問が支配している。

☆だから、iTL教師が存在するかどうかは、その学校が21世紀型教育を遂行しようとしているかどうか、つまりグッドスクールであるかどうかの試金石でもある。

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