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大学入試から見る中高一貫校[01]

☆サンデー毎日(2012年2月26日)「大学合格者 高校別ランキング 2012年入試速報第1弾」が発刊される時期になった。

☆同誌によると、「就職に不利だと見られている文系学部の志願者減が続いている」ということらしい。

☆たしかに、ITの技術者が足りなくて、IT技術取得の新卒ならば、800万から1000万の給与をだしてもよいという時代である。高度経済成長期のように、働き手すべてが金の卵労働者というわけにはいかないが、ソーシャルゲームとビッグデータを扱う技術者は、黄金の人材という時代である。

☆東工大など人気で、難化しているという。学部にもよるが、全体としては、早慶、中央、法政、明治は志願者が減り、青山、立教、同志社、立命館が増加。もっとも明治は微減で、早稲田の総志願者数を3年連続抜いているということで話題になっている。

☆いずれにしても、減少の理由は文系学部。逆に東大などは、増えているから、学費の問題よりも、将来の就活の問題が大きいということなのだろう。

☆昨夜のニュースWBSでも、ソーシャルゲームの企業にとって、必要な人材は、人間性も大事だが、とにかく技術だということのようだ。

☆この状況をどうみるか?やはり日本の経済社会は、変わらないということだ。サンデー毎日でも、やっぱり旧帝大は強いというようなコメントを拾っているているが、「旧帝大」という言説がいまだに有効であるとは驚きである。

☆グローバル人材とかクリエイティブクラスという話は、今年の大学入試や就活という話にはない。企業の人材の姿は、大学における学生の姿であり、初等中等教育の生徒の姿である。日本社会が学校化社会と言われて久しい。どの年齢層の人間関係や社会観も学校で学んだようにか学校でそのように学んできてほしいという両方があるのだろうが、ともあれずっと成長過程は一色なのである。どこに個性が生まれる余地があるのだろう。

☆いやテクノロジーはクリエイティブではないかと反論されるだろう。たしかに、テクノロジーの側面ではそうである。しかし、21世紀型社会のクリエイティブクラスは、ほかにタレントとトレランスという2つの軸も兼ね備え起業家精神を持っていることが条件である。

☆東大を頂点とするピラミッド社会、そこに初等中等教育から企業まで収まっている学校化社会日本!秋入学でゆさぶる東大であるが、こうしてみれば改革でも革命でないこともわかる。グローバリゼーションを取り入れ、さらなら盤石な学校化社会を、つまり東大ピラミッド社会をということだろう。

☆大阪維新の会は危ういけれど、たしかに幕藩体制をひっくり返すアナロジーあるいはパロディーなんだけれど、いやちょっと歴史的に眺めてみれば、あながちフィクションではない。東大はある意味幕府の知の遺産だし、幕藩体制の転移である。

☆その危うさに挑みつづけ、なぜか文科省直轄地にならなかった学校法人が私立中高一貫校である。私立大学は文科省の支配下にあるのに、なぜか不思議である。

☆この歴史の不思議に、筆者は日本の教育改革の夢をかけているわけである。教育改革はなんてったって学校化社会の変化を生み出すからである。

☆大阪維新の会がパロディーで終わるか、信頼性を帯びてくるかは、私立中高一貫校への見識をどうもつかにかかっている。

☆それはともあれ、この東大ピラミッド生態系強化のための大学入試、就活の循環を、グローバル(もちろん光と影はつきものである)な社会でクリエイティブクラスとして活躍する人材輩出のためには、知識の体系を記憶する3R型の教授法から論理的かつ創造的な3X型の「学び学」へシフトすることになるだろうし、大学入試や就活のような進路先教育から「起業学」にシフトすることになるだろうし、心理主義・道徳主義の成長理論から感性教育と理性・知性教育を統合する「思春期学」にシフトすることになるだろう。

☆この「学び学(Theory of Learning)」「起業学(Theory of Entrepreneurship)」「思春期学(Theory of Adolescence)」というLEAを実践する私立中高一貫校が、この学校化社会にどのように影響を与えていくのか。この環境である<いま・ここ>にある以上、影響を与えるか従うかどちらかであるが、文科省の学習指導要領をリスペクトしつつさらに独自の教育を行ってきたわけだから、影響を与える側にすでに立っているわけである。そしてそれが≪私学の系譜≫であることの意味でもある。

☆まったく影響を与えていないようにみえる開成も、初代校長高橋是清の精神は生きている。たくさん東大に進学し、官僚の内側から近代日本を支えていくというアイデアがそれ。立派に今も継承されている。形骸化されているかもしれないが、そのチャンネルがある限り、新しい覚醒に期待したいということかな。

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