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大学入試から見る中高一貫校[03]

☆首都圏では、中学入試・高校入試・大学入試が何もなかったかのように進んでいる。もうすぐ昨年から1年たつ3・11を迎えるのに。

☆教授法から「学び学」だ、進路先教育から「起業学」だ、道徳主義・心理主義から「思春期学」だとか言いながら、結局両方のベクトルの合力とか、バランスを考えなければならないのが日常である。

☆しかし、カタリバからのメールマガジンを読んで、被災地では、「学び学」しかないし、「起業学」しかないし、「思春期学」しかないのである。

☆教授法は、学校がなくなり、そもそも存在しないエリアがある。進路先もなくなり、「起業学」しかないエリアがある。心理主義も道徳主義も、目の前に何もないのである。自分の身体だけが存在している。このかけがえのない身体を成長させるのに、「思春期学」しかないエリアがある。

☆そこに迷いはない。やるしかないのである。こうしてカタリバは、コラボスクールを提案した。学ぶ場所、行き場所、教える場所のなくなった人たちが集まって、企業やNPOの人たちの協力も得ながら、学びの共同体を作っている。

☆あるのは、人間の愛情と知性、感性。そしてその逆の気持ち、と狡知。これらが真面目に臨んでエネルギーを生み出す。それがコミュティを結成する基礎である。

☆こう語るのは簡単すぎる。どんなにイメージを広げ、思いを馳せても、現地の事態には及ばない。でも、伝えなければならない。

☆カタリバの山内さんからの今回のメールをそのまま、すべて紹介させていただくことにする。そこに登場する今井さんに二度ほどお会いしたことがある。今井さんは笑わない人である。今井さんの悲しみは笑いにまさる。憂いの表情が見ている「いまここ」に喜びは生まれているが、今井さんは笑わない。その意味は、深くもほかの意図があるのでもない。今井さんは、喜びが生まれるために笑わない。それだけのことである。

こんにちは、NPOカタリバ山内です。

本日は冒頭から本題へ。カタリバは被災地で、
放課後学校「コラボ・スクール」を運営しています。
http://sfml.jp/?c=35020&o=00Q10000005qWoJEAU&v=e224dde0

これまでメルマガでは、頑張る生徒さんに焦点をあてて
レポートしてきましたが、震災があったからといって、
そこに通うのは普通の子どもたち。

中学生となると、友達や家庭など悩みも出てくるし、
「勉強を頑張るのは、ダサい」「授業中でもはしゃぐのが
カッコいい」といった思春期特有の空気が
生まれてしまうこともあります。

> > > > > 

女川向学館で、特に元気の良い子どもたちが集まった、
あるクラス。そのクラスが、授業中の“おしゃべり”で
収集がつかなくなったときがありました。

今回話を聞いたのは、そんな“荒れた”クラスにサポートで
入っていた、カタリバ代表理事(女川向学館の校長)の今村久美。

彼女が緊張しながら教壇に立ったのは、今年1月のことでした。

「このクラスは、今いい状態じゃないと思う」

 今村が発した言葉に、それまではザワザワしていたクラスが
 シーンと静まり返りました。
 
「前回の授業、私もこの場にいたけど、支えてくれている人たちに
  正直、見せられないと思ったんだ」

 授業が始まっても、おしゃべりのザワザワが
 止まらないこのクラス。

 みんなで勉強しているときも、お菓子を散らかす子や、
 勉強しようとしている人の邪魔をする生徒、なかには、
 授業が始まっても、ケータイで音楽を聞き続けたり、
 先生にゴミ捨てに行かせる生徒もいるくらい。

 “自由”という名の無法地帯になりかけていました。

 宮城県女川町では、多くの子どもたちは狭い仮設住宅
 などで暮らしています。
 
 たくさんの家が津波で流され、11あった学習塾も
 1つを残してすべてなくなってしまいました。

 「勉強したいけど、そのための場所がない」

 そんな子どもたちのために設立したのが、女川向学館です。
 http://sfml.jp/?c=35021&o=00Q10000005qWoJEAU&v=62d4caff

 避難所として使われていた小学校を教室として借りて、
 町や教育委員会とも連携しながら、失業した元塾講師など
 地元の住民の方々を雇用。

 地域みんなで創り上げる“コラボ・スクール”という
 理念を掲げたものの、運営を担う私たちカタリバは設立当時、
 「学校経営」という面では“素人”に近い状態でした。

 「正直、子どもたちを強く叱るべきか、迷っていた」

 今村は話します。

 「被災地の子どもたち」といっても、普通の中学生。

 震災があっても子どもは素朴だから、甘やかせば甘えるし、
 厳しく言わなければいけないときもある。
 
 一方、向学館には、震災で傷ついた子どもたちの心をケアする、
 彼らの“居場所”という機能もあります。

 震災後は、放課後に学校に残って、部活をしたり、
 友達とおしゃべりをしたりも満足にできない・・

 そんな子どもたちを厳しく叱った方がよいのか?
 葛藤もあったそうです。

 それでも、頑張ってくれている生徒を我慢させたくない。

 かといって、勉強のできない生徒を初めから排除して、
 「優秀な子だけを集めました」というクラスにはしたくない…

 子どもたちのその様子が、何かのサインにも見えた今村は、
 3つの“ルール”を全員の前で提案しました。

 1.向学館にいる時間は、勉強に集中しましょう
 2.友達が頑張ろうとしているのを、応援しあいましょう
 3.沢山の人たちに支えられていることに、感謝の気持ちをもちましょう

 はじめは、 今村が教壇に立つと、
 「『なんなんすか、この人?』みたいな視線」を向けた生徒たち。

 荒れた学園ドラマのように、おしゃべりを続けていた彼らに、
 今村が語りかけていきます。

「向学館は、どうやって成り立っているか。皆は知ってるかな?

 たくさんの人たちが、自分の生活のために使うお金を、
 寄付してくれています。だから、みんなは勉強できているんだよ

 ここにいるスタッフも、皆ががんばろうと思ってくれる
 と信じて、応援し続けているんだよ。

 今は勉強をする時間。みんながここいにいるのは、
 勉強するためなんだよね?

 もしみんなが、勉強をがんばるつもりがないなら、
 お互い時間の無駄はやめよう。

 遊びたいんなら、遊べばいい。
 私が中学生だったら、大人からいろいろと言われるのはイヤだし」

 冒頭の言葉もあって静まってきたクラスに、今村は続けます。

「このクラスのみんなのことを、学校の先生から聞きました。

 ○○はバスケ部のキャプテンなんだね。
 マラソン大会で○○は優勝したらしいじゃん。
 ○○はテニス部でリーダーシップ発揮しているんだね。

 みんなのことはまだ分からないけど、他のスタッフや
 学校の先生に聞いて、みんながすごい力をもっていることを、
  今日教えてもらったよ」

 そのうえで、「友達同士で頑張っているのを応援しあえる」
 そんなクラスにしたいと伝えます。

「私は立場を表明するけど、皆はどうする?

 この場がもういいと思ったら、帰っていいよ。
 今日の授業を受けて、納得できないなら、
  もうこのクラスにはこないでいいんだ。

 もし1人も残らなければ、クラスも閉めるし、
 でも1人でも勉強したいという子どもがいれば、
 このクラスは続けるから。その人のために、私は付き合うから」

 そんな風に、ある意味「突き放して」終えた木曜日の授業。

 次の週の授業に、子どもたちは本当に来てくれるのか?

 恐る恐る教室に入ったところ、その場にいた生徒は半分くらい。

 「残り半分はやめてしまったのか?」
 そうがっかりしかけたところ、ちょうどその日は、
 学校でインフルエンザのため学級閉鎖になったそうで、
 その影響を受けた生徒以外は全員が出席。

 そして1週間後には・・・

 クラス全員が戻って来ていました!

 「みんな、今日来たってことは、続けるってことでいいのかな?」

 そう今村が問いかけると、皆が「はい」という返事。

 なかには、恥ずかしそうに頷く生徒さんもいましたが、
 皆のやる気を確認できたということで、ひとまず安心でした。

 「結局、子どもたちは見透かしていると思うんです」
 今村は言います。

 生徒たちが気にするのは、
 “自分だけが頑張っていると、カッコ悪い”
 という思春期特有の価値観です。

 そして、「そんな空気が態度にも出てしまうのは、
 “勉強についていけない”“わからない”という
 サインではなかったのか」今村は続けます。

 だから大事なのは、勉強をしていても、皆にからかわれない空間。
 前向きに頑張ることを許容してくれる場づくり。
 「そんな居場所をつくるのが、私たち大人の役割」なのです。

「これまでは学校に伺って、1回1回の授業をしてきたけど、
 自分で学校を運営して、クラスを持って毎週授業をする中で、
 先生方の本当のご苦労を、初めて理解できたような気がする」

 “非日常”のキャリア教育だけでなく、“日常”の学習指導も
 行うことで、今村に生まれた気づきです。

> > > > > 

 この原稿を書いて校正をしていたその間に、
 今村から嬉しいニュースを聞かされました。

 このクラスの生徒の一部は、授業がない日にも
 自習室に通うようになったそうです。

 これまでの一斉講義形式から、プリントを使って
 自分のペースで学習できるようにしたところ、
 わからない点をそのまま残さずに、一つひとつ
 進んでいけるようになったからでは、とのこと。

 進路選択という目標に向けて、子どもたちの主体性を
 引き出しつつ、基礎学力を身に着けてもらう。

 そのための試行錯誤を、コラボ・スクールでは続けていきます。

【被災地の子どもたちのために、できること】

 “津波で家や塾を流された子どもたちに、学びの場を”

  「震災があったから、夢をあきらめた」
  子どもたちに、こうした想いを抱かせないために…

  コラボ・スクールをご支援ください!
  http://sfml.jp/?c=35022&o=00Q10000005qWoJEAU&v=38b5f59f

> > > Web更新ニュース 

 ・女川町での職場体験など、文部科学省により採択されました
  http://sfml.jp/?c=35023&o=00Q10000005qWoJEAU&v=b845e280

 ・大槌臨学舎での開校式をレポートしました
  http://sfml.jp/?c=35024&o=00Q10000005qWoJEAU&v=8c778b5f

 ・日本経済新聞で、「オトナカフェ」が取り上げられました
  http://sfml.jp/?c=35025&o=00Q10000005qWoJEAU&v=0c879c40

 ・カタリ場のキャスト(ボランティア)を募集しています
  http://sfml.jp/?c=35026&o=00Q10000005qWoJEAU&v=56e6a320

 ・Asahi Japan Watchで、「カタリ場」が掲載されました
  http://sfml.jp/?c=35027&o=00Q10000005qWoJEAU&v=d616b43f

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<編集後記>

寒さが続いていますが、元気でお過ごしですか??
私は軽い風邪を引いてしまいました…

皆さまは、ご自愛くださいませ!

本文で紹介した被災地といえば、Facebookの
タイムラインで昨日見かけたのが、
「世界報道写真コンテスト」の記事です。

http://sfml.jp/?c=35030&o=00Q10000005qWoJEAU&v=6fac2002

ぐっときてしまいました。。

よろしければご覧になってください!

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【発行元】特定非営利活動法人 NPOカタリバ
   http://sfml.jp/?c=35031&o=00Q10000005qWoJEAU&v=ef5c371d

【文責】 山内 悠太

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