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大学入試から見る中高一貫校[09]

☆東大の提起した秋入学にしても政府・官僚が提示しているグローバル人材育成にしても、本来であるならば転機の大学入試につながるはずであるが、相変わらず「受験に勝つ!学力が上がる!最強の塾&予備校」(週刊ダイヤモンド2012.2.25)という特集記事が組まれ、優勝劣敗主義をお受験から大学まで強化する時代認識に退行するようなものの見方が発信されている。

☆経済誌であるから、しかたがないといえばしかたがない。リバタリアニズム的な発想であるのだろうから。

☆しかし、≪私学の系譜≫は、建学の精神という普遍的個別の理念を持っているから、そのような優勝劣敗主義発想に与することはできない。今年入学してくる新中1が6年後に卒業するときには、学習指導要領の改訂話はでているだろうし、第2のIT革命の成果を教育でも活用できるようになっているだろう。

☆そうはいっても、まだまだ優勝劣敗主義はなくなりはしない。価値は自由だし、そこは神々の闘いである。ただ、どうも優勝劣敗主義の発想は21世紀にはメガトレンドにならないだろう。man for othersという共に学び、共に生きるコミュニケーションシステム革命がメガトレンドになるはず。

☆その時代認識をしっかり持っている教育機関を探すのが近未来においても大事である。たとえば、かえつ有明。中学入試や大学入試という<いま・ここで>踏ん張らなければならない局面を突破しながら、未来を見据えて教育活動を開始している。

☆同校サイトによると、「聴解力」というプログラムにチャレンジしている。

1月31日(火)、高校1年生の2クラスを対象に「聴解力・読解力」と「授業理解力・学力」との相関を見る新たな試験を実施しました。また、今回の試験を受け、教科学力に加え進路実現の土台となる「聴解・読解」スキルを高めるためのワークショップの実施を3月に予定しています。

☆「聴解力」というとリスニングのことかというと、そうではない。読解力中心の授業では、知識記憶とテキスト分析に生徒の思考が集中してしまい、批判的・創造的思考が養われにくい。これでは20世紀型教育である。そこで目に見えるテキストだけではなく、聴覚でテキストを再構成したり想像を膨らませたりしながら、思考するチャンスをつくろうというのである。もともとサイエンス科という独自プログラムを構築し、そこでクリティカルシンキング(CT)を育成してきたから、さらにそのCTを強化したいということのようである。

☆また、同サイトによると、今年入学してくる帰国生のために入学前学習講座も開講している。 同校に設置されている国際交流センターの所長久保先生によると、ひとつは、帰国生の日本語を整えようということのようである。そしてもう一つは、中学からCTを英語で授業するTOKプログラムの実施ができる準備をしておくということのようである。

☆これらの活動は、実はある意味中等教育におけるイノベーションである。かえつ有明が、メガトレンドを読み切っていることと言葉の壁を超えるケアの精神にも富んでいるということを示唆している。

☆石川教頭は、「21世紀型教育では、生徒一人ひとりの「気づき」を大事にするコミュニケーションこそが重要であることは、誰しもわかっています。SNSに象徴される第2のIT革命は、米国の大統領選挙、エジプトなどの革命、AKB48の選挙などを可能にしているわけですから。興味深いのは、これらの出来事が、グローバルな時代の私たちにとって、同じ次元で起きてしまっているということです。肩書や権威だけで、価値観を育んできた20世紀と大きく変わっていることは、肌感覚でもわかります。一人ひとりの気づきによる判断こそが重要になってきているわけです。しかし、この気づきはいかにして生まれてくるのでしょうか。このプロセスを自らプログラム化しない限り、自分で気づいたと思わせられていることに気づかないとういうパラドクスの危うさの可能性が、一方で第2の情報革命にはあります。それゆえ、CTを鍛えることは、21世紀において重要です。「気づき」は大切ですが、それが生まれてくるプロセスを教師も生徒もシェアしなければ、「気づき」は道徳主義や態度主義に陥ることもあるのだと思います。」

☆大衆誌がいかに優勝劣敗コードで編集しようとも、このようなCTコードが養われれば、未来には希望があるというものだ。それにしても、私学人とは、サイード的な知識人でもある。

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