大学入試から見る中高一貫校[20]
☆今年の東大前期入試の現代文の一問め、と早稲田大学の教育学部の入試の現代文の一問めで出題された素材文は、同じ作品からだったし、抜粋場所もほぼ同じであった。
☆この場所はおそらく模擬試験などで的中させた予備校があったのではないだろうか。
☆というのも、その作品というのは、昨年7月に出版された「意識は実在しない」(河野哲也氏)だったからである。しかも、抜粋部分は、その作品の中の「環境問題と孤立した個人」というトピックの箇所で、今回の3・11を経験した私たちが、もはや要素還元主義的、あるいは機械論的近代科学主義のものの見方に引き返すことができないという決意とホーリスティックで関係総体をとらえる時代がやってきたのだという思いの両方を語っている場所であるからなおさらである。
☆転機の大学入試を語っているのだが、そのものずばりを入試問題で語られているのに驚いてしまった。両大学は素材文だけではなく、問いもほぼ同じである。ただし、東大はすべて記述で、早稲田大学はほぼ選択肢問題。両大学の頭を使う部分の差異がはっきりしていておもしろいといえば、おもしろい。まさに記述形式の方は包括的で、選択式の方は要素分解主義である。
☆東大は読解力のみならず思考力も包括的であるが、早稲田は、読解力では全体把握の理解を要求し、解答においては要素分解的ものの見方しか期待していない。
☆それはともかく、残念なのは、抜粋箇所が、アマゾンで検索すると、本書の中身をみることができるサービスが使え、そこで公開されている場所と全く同じでることである。東大―早稲田―アマゾンというつながりは、さすがは第2のIT革命を象徴しているが、あまりにストレートな選択に戸惑いを感じないではいられない。しかも、本文には次のような表が載っている。入試問題では削除されているから、本文を読まねばならないが、もしもこの表を見ることができたなら、本文を読まなくても、両大学の問いはすべて答えられてしまうのである。
☆しかし、もっと言うならば、この表は読まなくてもポストモダニズムと脱ポストモダニズムの学びをしてきた生徒は、見なくても頭の中に記憶されているから、結局この問題は思考問題ではなく、記憶のDBを作成してきた生徒にとっては、知識問題であったことだ。
☆これでは、ベネッセの語彙読解力テストなどでトレーニングをつめば、十分ということになる。では、この素材を読んで、社会をハッピーにする戦略や政策について述べなさいという小論文にすればよいのか?
☆これもまた、ベネッセのロジカルシンキングでトレーニングを積めばできてしまう。
☆ベネッセのような外部知識DBを活用して、さらに何が問えるのか?大学入試問題の限界が露わになった。なるほど転機の大学入試でなかろうか。
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