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首都圏中学入試2012[58]

☆このブログ「私学研@ホンマノオト」は、受験市場と私学市場を区別し、私学市場の立場から21世紀型教育をリサーチしているが、もちろん受験市場が私学市場をサポートする関係になることは望ましいと考えている。そのため、この時期受験市場、ここではもちろん中学受験市場なのであるが、これについても少し考えてみたい。

☆中学受験市場には大きくわけて二つある。それは中学受験塾が高校受験塾や大学予備校のグループの傘下としてあるタイプと中学受験専門塾(純粋なスタイルのものはほとんどないが)のタイプである。

☆そして前者のタイプで飛ぶ鳥を落とす勢いなのはSAPIX、後者は日能研である。さらに、日能研は二つに分けられる。ソフト重視とハード重視のタイプである。前者は脱偏差値路線の21世紀型を志向し、後者は偏差値で学校を恫喝する昔ながらの土建国家的20世紀型感覚のタイプである。

☆SAPIXは知性的には日能研の前者タイプであるが、高校入試のビジネスを行っているために、思春期学を無視するタイプで、結局日能研のもうひとつのタイプと変わらない。偏差値主義やGDP主義、学歴主義から脱皮しようとは考えていないのかもしれない。

☆21世紀教育型日能研は日能研グループから見れば、少数派である。それゆえ、受験業界的には20世紀型資本主義を支える知性で、今回のダボス会議で改革せねばならないタイプの志向性が受験市場を支配している。

☆それゆえ、私学は、受験市場と私学市場を区別し、その支配に巻き込まれないようにしているのである。受験生の保護者はそこの差異を十分認識したうえで、塾と付き合い(中学入試の学びは小学校でできないから、中学受験塾は必要悪として存在意義はある)、学校選択をしなければならないわけだ。

☆受験市場と私学市場の違いは、どういうところでわかるかというと、中学受験生の数の算出の仕方でわかる。受験市場の側に尋ねると、市場を冷やしたくないから、実数は正確には言えない。つまり少し多めに言っているのである。マスコミはそれをもとに流すから、少々困ったものだ。ところが私学市場は、現実をしっかり観察するから、結構厳しい数字をはじきだす。もちろん、その数字を公開することはない。そこは受験市場のシンクタンクの性格を知っているから、うまく活用する。ある意味、ここは政治的駆け引きが行われているといえるかもしれない。

☆しかしだ。その少数派のはずのタイプの日能研は、ソフトを握っている。ある意味知の生産手段を握っている。土建国家的には、そんなものはまかせておこう。そうするほうがコストがかからないということになる。しかし、資本主義のセオリーは、生産手段というソフトを握ることが覇者になるのである。

☆というわけでこの少数派と多数派の力学がねじれているところが、弱体化をまねいていると外部からは思われている。

☆なんでこんなだれでもわかりきっていることを改めて言っているのかというと、開成と広尾の塾の応援団の姿をみて、あれっと感じたことがあるからだ。たしかに両方ともSAPIXの応援団がたくさんいて、日能研はすくないのである。だがしかし、日能研の立ち位置が、奥なのである。日能研の生徒が正門をくぐったとき、SAPIXの応援団にすぐ出会う。しかし、試験会場に入るぎりぎりのところでは、日能研のスタッフが待っていてくれるのである。

☆しかも、開成の場合、日能研西日暮里校は、開成の裏庭同然のところにある。陸橋をわたって、左におりていけば開成の正門なのに、左におりずに、まっすぐわたって行くのが日能研生だ。つまり開成に直接いくのではなく、まず西日暮里校で決起集会をやるわけである。そして日能研のもう一グループは、開成の正門の中の奥で待機している。

☆これは。ウム。変だ。何かある。思い過ごしかもしれないが、これは、大石内蔵助か織田信長か?まさかの大ウツケの演戯なのか?弱体化というのはそういうことにしているだけなのか?

☆たしかに、東京と神奈川以外の実績をみると、日能研はSAPIXを圧倒しているところが多い。特に灘や愛光、ラサール、西武文理、土浦日大中等教育学校といったそのエリアの良質私学において圧倒しているのだ。

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☆ある意味東京と神奈川の局地戦では、SAPIXに押されている。しかし、全体から見ればそんなことはない。ということは、どこか変だというのは、この両エリアの局地戦で、日能研は奪還のきっかけを作ろうとしているということではないのか。

☆そんなことはもはや考えていないとか、弱体化したとかそういう雰囲気は、業界で確かにあるけれど、それはトータルで見れば、正しいとは言えないのかもしれない。

☆たしかに、応援していた日能研のスタッフの雰囲気は静かな自信に満ちていた。互いに目と目だけであいさつしたけれど、ムムムと感じるものがあった。

☆ということは、もしかしたら、麻布が161名減少したのは、日能研生が麻布から開成にシフトしたのかもしれない。開成はSAPIXが何人いれようと、日能研が50名さえ合格させ続けていれば、いずれ勝機は訪れる。同じことが神奈川エリアでも聖光から栄光シフトという形でおこっているのかもしれない。

☆仮に灘に合格した65人が開成を受験していたらどうだろう。そういう無理なことはしないだろうが、十分に余力が日能研には残っているということだ。

☆日能研の中の2つのタイプの葛藤は、パフォーマンスということかもしれない。いずれにしても、戦略と戦術しだいで、奪還は可能である。それよりも21世紀型日能研は、21世紀型教育のタイプの学校と相乗効果を作ることができるか?もし奪還したらという条件付きだが。

☆今のところはできないだろう。というのも21世紀型教育というのは、方法多元論なのだが、日能研の場合方法が一元論的で、多様性がない。それゆえ、その志向性に合えば相乗効果は生まれるだろうが、マッチングは結構難しいだろう。

☆しかし、それでよいのである。その断絶が中学受験市場と私学市場の差異を高いレベルで形成してくれるからである。

☆いずれにしても憶測にすぎない。明日以降はっきりするからそれでよいのだが、結果が出てから語るのではおもしろくないので、書き留めておくことにした。

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