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首都圏中学入試2012[63]

☆2012年は、転機の中学入試となった!1月31日までは、応募者数動向だけで判断するしかなったため、転機となるかどうか一喜一憂していたが、はっきりとそのターニングポイントが見えた。

☆それは中学受験市場が変わったということである。そしてその転機は、21世紀型教育を唱えてきた私学市場の中の新しい(というか古いというか)動き=≪私学の系譜≫の教育出動を支える動きになるという点で転機である。

☆つまり、今までのように、塾が大学進学実績や偏差値という偏った尺度で、なかば暗黙の恫喝(中にはあからさまにしていた方もいたが)をし、新しい教育出動をする私学の行く手を阻んできたが、今後はそのようなことはなくなる傾向が進む。むしろ一線を画して、塾は塾としてペダゴジーではなく学び学(マセティクス)のリサーチをし、独自の子供観を公立の教育学を超えて確立する時代になった。

☆もちろん、今までのような塾もまだまだあるだろうが、何と言っても中学受験最大手の日能研が、従来の塾ではなく、学習指導要領というドメスティックスタンダードを超えて、グローバルスタンダードの学びを展開できる条件がそろった。

☆やはり、先日書いたように、弱体化の大ウツケ演戯を昨年はやってきたのだった。塾が学び学だって!そんなことを言っているとSAPIXにやられるぞ~!と言われ続けてきたが、そのビジョンを変えることはなかった。

☆ただし、従来の中学受験観の象徴であるいわゆる御三家などの合格実績において、SAPIXの攻勢をどう交わすかが一つの課題だっただろう。そのレベルの私学に合格させられないから転換したという認識が広がったのでは、新しいビジョンは生きないし、かりに一時できても持続可能にならない。

☆そのためには、どうしても偏った合格実績を出すのではなく、まんべんなくリーズナブルな実績を出さねばならなかったはずである。

☆今回、SAPIXに比べ、従来型の中学受験観による難関校合格者の数は少ないかもしれないが、発表を診ていると、たとえば、最終的には300名定員の開成や麻布に80名前後の合格者を輩出することになるだろう。麻布が応募者を161名減らした原因のひとつに、やはり日能研生の受験の仕方がナチュラルになったということがあったのだ。このような私学の合格者は、まんべんなく50名だしていれば本当は十分である。

☆なぜなら日能研は、日本全国の私立中学への道を開いている。どこの学校でなければならないではなく、その子が行きたいという中学に進学するサポートをしているのである。今回の実績によって、そのことが完全に可能になった。だから、開成に行きたければ合格の手伝いをするし、今までの中学受験観で足をひっぱれてきたが、それに屈せず良質の教育をやってきた富士見丘(笹塚にある私学)の教育に共鳴し、行きたいと表明すれば、受験生をどこまでもサポートする。

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  2月3日午後入試。富士見丘の入試風景

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 受験生はどんなに心強いだろう

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 門を入るところからは、よろしくお願しますと大島教頭にゆだねる。もはや従来型の塾のスタッフではない。学びの礼法を身につけているのである。

☆完全に子ども中心主義の思春期進路支援を行える条件がそろったのである。もはや誰も、SAPIXと同じ土俵で比較することはないだろう。SAPIXがどんなにがんばっても、御三家の学校を100%制覇することはできない。学校自身が望まないだろうが、学校に制限する権限も権利もない。しかし、多様性は重要である。その多様性の防波堤は日能研が支援するが、それは子どものためである。開成にこんなに合格させたと喜ぶのは、企業都合なんだよと、≪私学の系譜≫倫理を保守しつつ、しかし、私学に迎合することも、恫喝することもない。

☆ただし、今度は日能研は、私学に要求するだろう。大学進学実績を出せばよいというものではない。生徒のタレントを引出し伸ばす学び学をやってほしいと。今のカリキュラムのままではドメスティックスタンダードだし、20世紀の学歴社会を作ってきた知識の体系を詰め込んでるだけですよ。こんな社会にしたのをいつまでも塾や受験のせいにしているのは、とても科学的思考とはいえないよと。

☆学校の理科で、ニュートンとゲーテのインターフェースを学べますかと。学べなければ、リベラルアーツなんて全くできませんよと。何をバカなことを言っているのかと言われようとも、日能研自身は、日能研WAYを行きますよと。グローバルスタンダードの学びの環境を形成し、あとはそこで学んだ子どもがどこの学校を選択するかは、家庭の問題。出した結論を精いっぱいサポートするだけであると。

☆ただし、学び学を軽視するような学校は、世界で通用する知を形成できないから、だんだん選ばないようになるのは必然であろうと。

☆中学入試において、水は、放っておけば、偏差値と大学進学実績の偏向主義という粗悪な学校選択の方向に流れてしまうが、それを阻止する流れを日能研はつくることができる条件ができたのである。どこの学校でも、志望すれば応援するシステムとグローバルスタンダードな学びの環境のプラットフォームということ。

☆これによって、21世紀型教育を推進する私学にも、進学者が増えることになるだろう。今までは足を引っ張られてきたが、これからはそういう学校はウェルカムだという中学受験市場ができるからである。

☆となれば、代々木の資本があるSAPIXも黙ってはいないだろう。いよいよ中学受験市場は転機の流れを本格的に生み出すだろうし、そうなれば21世紀型教育を推進する学校は、ますますグローバルスタンダードなリベラルアーツを稼働するだろう。

☆ここから日本の教育は変わる。

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