首都圏中学入試2012[64]
☆中学入試の転機の話をしているわけだが、受験市場と私学市場の相乗効果は、悪貨は良貨を駆逐するような市場をつくらないという効果である。従来受験市場は、偏差値指標のみによる優勝劣敗市場の原理で動いてきたから、グローバリゼーションの流れの中で、気づけば、受験市場自体が衰退する憂き目にあってきた。その流れに現状私学市場は巻き込まれているわけだが、そこから脱却しようという動きが、両市場の中から確実に生まれてきているというのが転機の兆しなのである(※)。
☆中学受験市場でその転機の牽引をしているのは日能研であるが、今年の合格実績で、すべての中学に、リーズナブルな(あるいはナチュラルと言うべきか)成果を生み出しているというところが、偏った受験を造り出す従来型の中学受験市場とは違うのであるということだった。
☆これをさらに決定づけるのが、明日5日の筑駒の合格実績である。120名定員であるから、その20%の24人が合格すれば十分すぎる。リーズナブルだしひとつの塾から進学する人数としては最適化なのではないだろうか。
☆明日の結果がでてからでは、後出しじゃんけんなので、その前に書き留めておくことにする。
(※) 私学市場は、≪私学の系譜≫という倫理にもとづいた市場の原理で動いている。≪官学の系譜≫と一線を画し、明治以来、もう一つの近代社会の夢を持ち続けてきた。それが先月末にダボス会議で議論されたテーマ「新しい資本主義」「古い資本主義の改革」というコンセプトやビジョンに共通している。
新しい中学受験市場も、≪私学の系譜≫こそ自らはないが、その系譜の市場が豊かになるように応援するという新しい公共の立場にたった新しい資本主義の原理で動くという転機を迎えているのである。
新しい資本主義とは、生産手段やアイデアの解放である。従来のワーカーは、ここの部分は貸与されたりコントロールされたりしてきた。しかし、iPhonやiPadのようなツール、ソーシャルネットワークのような協働知の形成プラットフォームは、新しい資本主義のビッグバンを生み出すだろう。その兆しが、3・11以降の社会の動きであり、同時期に起こったチュニジアやエジプトなどの一連の革命である。
☆それゆえ、中学受験市場も、このクリエイティブな生産手段やアイデアそのものを生み出すタレントを形成する私学の資源をすべて有効活用しなければならない。まったくローカルでドメスティックな自らがねつ造した偏差値指標で、学校を分断し、一部の学校にしか進学させようとしない風潮は、許されないし、新しい資本主義のうねりに論理必然的に破壊されるだろう。
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