首都圏中学入試2012[78]
☆東京男子の多くが、ミニ開成化しているという話は以前したが、そのミニ開成化の過程で、大切なものを補えていない。それは開成自身は明確には「思春期学」を意識していないが、あの全集で埋め尽くされた図書室の環境や教材で出てきた作品を丸ごと一冊読むという読書プログラムは、質量ともに破格で、今のところ麻布、武蔵以外に真似はできないだろう。それに、いわゆる男子御三家に共通しているのは、ポップスからクラッシックまで幅広い音楽素養があることで、体育祭や文化祭だけではやはり見えない部分もある。
☆武蔵が東大の実績が麻布、開成に比べ振るわなくなっても、御三家の中にとどまっている理由は、実は「思春期学」の潜在力が強烈だからである。「思春期学」という認識や自覚はもちろん当局も学校選択者もないのであるが、雰囲気で感じるのである。これは理念とか建学の精神、校風とはまた違った雰囲気である。シンボルとかキャラクターとかとは違うということ。システムと言った方がよいかもしれない。
☆ともあれ、麻布はそれ以上に論集に象徴されるように、すべての教科で表現による思考作業であふれている。情報収集や整理で終わるものではなく、批判的・創造的思考がベースで、それを論理と言語によって形にしていくわけだから、自己探究がやがて公共的アイデアに結実していく。それが将来政治家としてうまくいくかどうかは、現状不安ではあるが、とにかく、その過程を教育でサポートしていることこそ思春期学そのもの。
☆武蔵は、自己探求が公共的アイデアに発展するかどうかは、実はわからない。とにかく勉強が楽しくてしかたがない教師集団。しかし、説明会などでは、やや自己完結的な雰囲気が見え隠れしている。
☆芝浦工大は、コミュニケーションの講座があったり、チーム学習にチャレンジしたり、「思春期学」に相当するプログラムがあるが、教科の授業全体であふれているほどではない。ただ、潜在的なままにしておくのではなく、プログラムとして形にしているところは、ミニ開成化しない独自のシステムを形成しているといえる。
☆海城学園は、学内でミニ開成化を打破しようという動きが20年前からあった。その改革の道筋こそ、「思春期学」の形成だったといえる。
☆聖学院は、聖書の授業、礼拝の言説が、論理とパラドクスのロゴス思考の経験を促すプログラムになっていて、JGや普連土、鴎友学園女子と同質の「思春期学」がすでに文化となっている。この優れた教育が、キリスト教教育への偏見で、なんとなく避けられる風潮が男子校選択者の中にはあるが、その先入観は捨てたほうがよいだろう。
☆いずれにしても、「思春期学」という認識が世間では広まっていないがゆえに、結局大学進学実績の結果スコアや期待値の序列で、選択がなされているのが、東京の男子校の現状である。メディアは、開成の世間からは見えていない「思春期学」をクローズアップするとよい。すると、学校選択者が、併願を組むときに、「思春期学」も有している学校は、ほかにどこがあるのか探すようになり、多くの男子校がその方向に動き出し、日本の男子教育の改革の動きが、東京から生まれることになる。何せ多くの男子校が存在しているのは、今や東京なのだから。
| 固定リンク
「中学入試」カテゴリの記事
- 2019年中学入試の新フレーム(184) キャリアガイダンスは必読!聖光学院の取り組みをきっかけに考える。(2018.07.14)
- 2019年中学入試の新フレーム(179) 大きく動き出したグローバル2.0へのリフォーム(2018.07.12)
- 【首都圏模試保護者会レジュメ】2018年7月1日(了)学校個別情報(2018.06.30)
- 【首都圏模試保護者会レジュメ】2018年7月1日③併願情報(2018.06.30)
- 【首都圏模試保護者会レジュメ】2018年7月1日②「成績表」×「解答解説」=戦略×戦術(2018.06.30)
最近のコメント