首都圏中学入試2012[82]
☆前回、昨年の8月に東京で開催された「第2回男女別学シンポジウム」の内容がPDFで公開されていると紹介した。その中で、國學院久我山中高の教頭今井寛人先生が、次のような重要なコメントをされている。
女子の言語能力はやはり少し高めに出てきますけれども、定義をきちんと言葉で言えるとか、現実には数学の問題を解決するときというのは、言葉による抽象化と具象化の相互の行き来を、ずっとやり続けないといけないし、記号を言葉で理解しなければいけなかったりするんですね。 その部分については、女子は結構丁寧にそのプロセスを伝えないとなかなかできるようになってくれないなという感じが私はしています。男子の方はその抽象化を感覚的にやってしまいますから、逆にそれを言葉で説明してみろと言うと、意外とできないというところがあるような気がしています。
☆これは、女子らしさの言語能力は、演繹と帰納で成立しているけれど、男子らしさの言語能力は、概念の操作で成立しているということを意味している。数学的には、前者は本質主義で後者は直観主義という。
☆だから、これは学としての数学としては、考え方の違いで、前者は女性、後者は男性の特徴というわけではないのである。
☆もっというと、中世の神学・哲学論争でいう、普遍論争の二つの立場である。前者は実念論で後者は唯名論である。近代にはいれば、現代思想的には前者は前期ヴィトゲンシュタインだし、後者は後期ヴィトゲンシュタインである。
☆ヴィトゲンシュタインは、ゲイという現代的な壁を超える存在だったから、両方の考えを考察するのに、歴史的にはアドバンテージが高かったのかもしれないが、それはどちらが女性らしい考え方、男性らしい考え方かをきめるものではない。
☆また、相対性理論は前者で、量子力学は後者であるし、ものづくりは前者で、金融工学は後者である。
☆さらに、カントは、物自体の不可知論で、ヘーゲルは絶対精神に弁証法的階梯を上昇して、むしろ前者と後者の両方の考え方を統一しようとした。
☆こうなってくると、もはやどちらが女性らしいか男性らしいかという議論そのものが怪しくなってくる。しかし、大事なことは、教育現場でそういう見方をしているのではなく、20世紀近代社会がフォームをつくってきた女性と男性のキャラクターが教育現場に持ち込まれているという社会学的事実なのである。
☆これを心理主義的前提として女性らしさ男性らしさを定義し、そこから教育論を組み立てると、今やリフォームしなければという20世紀型社会や20世紀型教育を、その意図に反して強化してしまう矛盾に陥るのである。
☆この矛盾を解消しなければ、21世紀型社会や教育は実現できないわけだから、その突破口に私立のシングルスクールや別学型共学校が立っているということがたいへん大切な確認すべき点である。
☆そして、突破口を開く学の一つが「思春期学」。ほかに、「学び学」と「起業学」がある。「思春期学」は20世紀型の心理主義的態度主義的成長発達論を乗り越えるものである。「学び学」は、20世紀型の教授法の「モラルコード」から「リベラルアーツコード」へのシフトである。「起業学」は、20世紀社会適応主義進路先キャリアデザイン教育から、市場創出型の人間教育へのチェンジである。
☆「学び学」は知を、「起業学」は進路を開発し、それによって、man for othersとして肩書きリーダーではなく、ナチュラルなリーダーを育成するプログラムが「思春期学」である。
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