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首都圏中学入試2012[83]

☆先日広尾学園理事長大橋先生とお会いした。ちょうど中学入試の合格者の手続きがきっちり見えてきたときだった。

☆私立学校の経営の論理と教育の倫理の両ベクトルを最適な合力にするその手腕は、教育界だけでなく各業界からリスペクトされ、IT関連をはじめとする各企業や国内外の大学の識者たちが訪れる。

☆今年の中学受験市場に関しては、冷静に現実的なマーケティングの分析を終えていた。中学入試は、現状では受験市場を媒介にせざるを得ない。受験市場は大衆化しているから、真面目すぎる教育観を訴えていても、市場のニーズにマッチしない。しかし、迎合することは、ご自身の教育哲学を全うできなくなる。それでは本末転倒。

☆そこでポピュリズムのエネルギーを変質させる教育活動広報という戦略をとった。徹底的に同学園の教育の魅力をシェアしようという戦略である。

☆広報のための広報ではなく、ふだんの教育活動の共有を、受験市場としようということである。もともと中学受験を考える家庭層は、向上心があるし、教養的素養に好奇心を抱ける潜在力をもっている。

☆その潜在力に自らきづいたとき、アーリーマジョリティは、ファン層としてはスケールが大きくなる。もちろん、そのためには、少数派であるイノベーターやアーリーアダプターの層に「グッときた」と言わせるものが必要である。それは本物の教育であると同時にイノベーションであることを直感的に感じとれる何ものかであるが、そのヒントは、30代前後の優れた若者、つまり文学者、科学者、編集者、教員、アナリストなどゼロ年世代の心を揺さぶる知である。

☆というのも、40代世代で成功している父親は、団塊・断層・新人類世代に囲まれながらも、<いま・ここで>共鳴共振するニーズを体得しているからである。たいていの学校は、団塊・断層・新人類世代のステレオタイプな行動原理を打破できない。それゆえ、大学進学実績や偏差値のスコアの高い低いで選択されてしまう。

☆ところが、本当の学校選択は、強烈な共感と未来性への高い期待値なのである。それはまた、優れた30代の世代と共有できる質感である。宮台真司、東浩紀、茂木健一郎の次の世代は、彼らの質感を包有しつつも、違和感を感じている。この違和感という差異に気づき、そこから教育を考えようとする私学人の学校に、吸いつけられるように生徒が集まるのである。そのような私学人の一人が大橋先生である。

☆ゼロ年世代の彼らはサイバースペースとリアルスペースを、自由に行き来するし、冷静にそれぞれのリスクをマネジメントする。前者を否定してリアルな安心安全を確保すれば自由が得られるという団塊・断層の世代―テレビに出てくる大方のお年を召した政治家や評論家―の発想は、大いに虚構であることは、3・11以降のリアルな空間によって暴かれた。

☆サイバースペースこそ自由をなどという次の世代の発想も、虚構であることは、相次ぐ金融危機によってみなウンザリしているところである。両方の発想の大きな誤解は、バーチャルがサイバーだと考えたところにあることを0年代世代の優れた見識者は見抜いているのである。

☆あらゆるものは、いったん脳神経系を媒介し、内外環境=世界のつながり諸関係の作用によってバーチャルに創出されているのである。ハイデッガーの間違いは、この媒介物を言語に矮小化したことである。ここから知識が優位になってしまう。

☆しかし、脳神経系(中枢も末端神経もすべて)身体を媒介に、内外環境=世界のつながり諸関係を解釈し編集しイノベーションを起こしていくホーリスティックな知の立場に位置することこそ、現代教育の嚆矢であり、21世紀型教育のアルファーでありオメガである。

☆団塊・断層・新人類世代が気づかない問題。それに気づいているゼロ年世代の視点と世代を超えてシンクロ出来るイノベーターの拠点が、21世紀型教育を実践している私立中高一貫校であり、そこに今度は中学受験市場を変質変容させる私学市場が出来する。その拠点校として広尾学園が評判なのである。

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