首都圏中学入試2012[86]
☆首都圏中学入試2012[76]の要領で、東京の共学校を見てみよう。
☆共学校は、大学進学に力を入れているところばかりではなく、「思春期学」に相当するプログラムを構築して実践している学校が、上位に位置している。
☆和光のように「大学進学実績」よりも「思春期学」に相当する教育に力を入れている学校は価値観がはっきりしていて、一定のファン層がいるのであろう。同校の小学校からあがってくる生徒も多いはずだから、それはそれでよいわけである。
☆共学校は、実は新しい時代時代によって生まれてきているから、その歴史性を反映している。和光はその時代の変わり目の葛藤の中で生まれたような学校である。大正デモクラシーとキリスト教的宗教主義の玉川学園とは違う道をめざしたのであろう。しかし、その道を歩みだした当時、太平洋戦争勃発期と重なった。
☆当時の新しい民主主義的な教育を模索して戦後歩むことになった。その根底は、歴史的拘束性を乗り越える価値あるものであるが、その運営方法はたしかに戦後のスタイルである。そこをどうするかは、学園の課題かもしれない。
☆オイルショックの後、高度経済の低迷から再びバブル経済に向かうときに、渋谷教育幕張は登場するが、このときに公立とは違う方向をとりながらも、教育政策の情報を読みながらサバイブした。この渋幕モデルが、1997年ぐらいまで続き共学化する私立中高一貫校が生まれる。これは男子校のミニ開成化の動きと似ている。
☆しかし、98年・99年のバブル崩壊後の経済の空白20年の間にできた共学校は、渋谷教育幕張モデルが東京で大成功を収めた渋渋モデルを後追いする共学校と21世紀型教育を実践し、今までにない共学校にチャンレジする広尾学園、かえつ有明のような新しい共学校がでてきた。
☆東京都市大等々力は渋渋モデルを追い、広尾学園とかえつ有明は、それぞれ独自の路線を切り開いている。広尾モデルは、まったく新しい路線で、ジョブスのような起業家精神とサンデル教授のような哲学が統合されている理念が興味深い。
☆かえつ有明は、横井小楠や吉田松陰などの江戸時代の私塾の流れを汲む創設者嘉悦孝の精神を保守しつつ、そこに米国のプラグマティズムのプログラムを自前で構築しながら、新しい不易流行型の共学校路線を邁進している。
☆広尾学園とかえつ有明は、そのリソースが一見すると違うのだが、米国型である点では、実はかなり似ている。ジョブスが武士道に親近感をもっていたこと、嘉悦孝がアダムスミスを原書で読んで、建学の精神を儒学と重ね合わせていたことなど、どこか時代を超えてシンクロするところがある。
☆しかし、両方ともサイエンスに力を入れていながら、そのプログラムは大きく違う。ここに着目すれば、広尾モデルとかえつ有明モデルは、新しい共学校の2つのモデルになるのかもしれない。独断と偏見でもう少し言えば、広尾は起業家精神というプロテスタンティズム倫理がベースだし、かえつ有明は、未規定性理念原理に基づく宇宙論的精神のカトリシズム倫理がベースである。
☆≪私学の系譜≫というのは、どこかに儒学とキリスト教精神の統合があり、その配分が違うというところがある。キリスト教主義を標榜して成功している学校は、キリスト教精神が圧倒的に大きい比率を占めている。
☆こうしてみてみると、プロテスタント校で成功していない学校は本来あるべき起業家精神を喪失しているし、成功していないカトリック学校は、理念を規定し、無限の宇宙論を固定化してしまうコぺルクス的転回以前の宇宙論に縮小してしまっているともいえるかもしれない。
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