東大合格発表の季節2012 [03] 開成・灘・麻布
☆開成は、東大合格者輩出数連続32年トップ。形上は伝統を守っている。そのあと灘、麻布と続くのだが、常連ということで驚きはないだろう。
☆しかし、東大合格発表の季節は、3・11の思いが刻印された時期に重なることによって、重みを増したのである。だから、そのストレスから逃げようというのが秋入学のアイデアではないとは思うが・・・。
☆それはともあれ、まず開成であるが、初代校長高橋是清は、たしかに理念あるいは目標として、東大に多数合格させることを掲げた。そういう意味で、形上伝統を保守しているのであるが、高橋是清は、今だったら、東大というだろうか。ケンブリッジとかハーバードとか、スタンフォードというかもしれない。
☆というのも、高橋是清は、近代国家成立のための高邁な人材を輩出する意味で、東大にといっていたからである。近代国家といっても軍事力ベースの近代国家ではない。そうでないからこそ銃弾に倒れてしまったのだろう。
☆今日であれば、格差なきグローバル近代社会成立のためのグローバル人材輩出のために海外の大学へと言っていたかもしれない。3・11以降、開成は、建学の精神の不易流行はいかにして可能かについて議論しなければならないのであるが、それは外には発信されていない。
☆灘に関しては、日本の酒造連合の日本文化を守るという気概が背景にあるから、日本を守る人材輩出でよいのかもしれない。それゆえ、サンデー毎日3・25では、東大・京大の合格ランキングの隣接ページに奇跡の国語教師橋本武先生の記事が載っている。先生の授業を受けた弟子たちの多くは、政財官学でリーダーシップを発揮している。だから、彼らの活躍に期待したいという記事。
☆橋本武先生の授業はたしかに究極である。しかし、格差なきグローバル人材を輩出するプログラムを開発しているかというと、それは期待はもてるが、直接的ではない。明治国家を建設した吉田松陰の弟子たちとはアナロジーで結ぶことには無理がある。
☆そういう意味では、開成も灘も領域ⅠではなくⅡに位置し、そこでトップ・オブ・トップなのだろう。えっ、それでは、Ⅲの可能性もあるのではと言われるかもしれないが、それはない。橋本武先生が自ら語るように、「自分のような教師が存在できる自由な雰囲気がある」というのが両校の特色だからである。この自由とは、授業における創意工夫がかなり幅広くできるという意味。
☆自由と言えば、麻布であるが、麻布ももちろん領域Ⅱに存在しているが、Ⅰの領域にも半分はいっている。実際東大はone of themで、マルチタグド・ライフというキャリア教育が麻布の建学当初からの基本だからである。
☆また、現在の氷上校長が南原繁の孫である、つまり内村鑑三の系譜であり、≪私学の系譜≫に位置しているから、強烈である。
☆ただし、この気概がどこまで浸透し広がっているか持続するかはわからない。創設者江原素六の精神を全学挙げて大切にしているのはわかるが、橋本武先生のように社会の多様な領域で活躍している人材が語り伝える様子もないし、まして吉田松陰やその弟子たちのように歴史ででてくるというわけでもない。同世代人の福沢諭吉や新島襄、板垣退助のような派手さがない。
☆それゆえ麻布らしいのだろうが、最近の受験生の親には、栄光や駒場東邦の方が安心であるというトレンドに流されなければよいのだが。
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