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大学入試から見る中高一貫校[23]

☆「ダイヤモンド・オンライン 3月2日(金)8時30分配信」は「私立中学受験バブルは崩壊私大付属も中下位校も大幅減」という記事を発信。

2007年をピークに減少を続けてきた首都圏の私立中学受験者数は今年さらに減少、中学受験バブルはまさしく崩壊の状況にある。森上教育研究所の調査では、一都三県(東京、神奈川、千葉、埼玉)の2月1日の私立中学受験者数は3万7568人と、07年の4万3716人から5年で14%強もの減少で、対前年比でも3%減だ。08年のリーマンショック以降の景気低迷で、私立中学受験者数の減少は続いており、今年も受験者減に歯止めがかからなかった。しかも、この間に私立中学の募集定員は3万9721人から4万1688人と約5%も増えている。これは、私立中学受験ブームを受けての定員増や、中高一貫体制強化による付設高校の募集定員の縮小・廃止によるものだ。この結果、09年以降、一都三県の私立中学受験者数は募集定員を下回る状況が続いている。

☆この中学受験市場の状況は、本ブログでもすでに、総務省の統計データや86年以降の中学受験史グラフで見てきたのとほぼ一致する。

参考①)2012年転機の背景

参考②)2012年転機の中学入試の背景

☆しかし、この「中学受験バブル」は、あくまでも高偏差値=大学進学実績=高就活力=GDP右肩上がり=優勝劣敗格差社会の一元的市場経済観という単純化したわかりやすい思考の破たんにすぎない。同記事で、森上教育研究所の森上展安代表はこう指摘している。

 「景気が回復しなければ、私立中学の志望者は増えない。受験の高校回帰も進んでおり、志望者を減らした早慶も高校の志望者は増えている。公立の中高一貫校人気や首都圏の高校入試改革もあり、私立中学は当面厳しい状況が続く」

☆たしかにその通りである。しかし、優勝劣敗格差社会の一元的市場経済観で景気は回復しない。無理やろうとすると第二次世界大戦の二の舞である。

☆実は、すでに6年前に中学を新設したり、教育改革を行った私立中高一貫校の中には、この厳しい受験の中で、きっちり生徒を獲得しているところがある。そこは格差なき成長戦略のビジョンを現実化してきたからである。大学進学実績を戦略的に出しつつも、受験カリキュラムではなく、リベラルアーツカリキュラムで豊かな教育の生態系を学内外に広げているのである。

☆バブルが崩壊するという意味は、あくまで優勝劣敗格差社会という一元的市場経済観に乗らざるを得ない受験市場とそれに便乗したり巻き込まれたり、引力に抗えなかったりした私学市場の一部である。この条件が露わになったのが、2012年中学入試の転機であろう。

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