大学入試から見る中高一貫校[27]
☆浅野学園が変貌しつつあるという話を知人から聞いた。大学進学実績を向上させるだけではなく、教育の付加価値を明らかにするということのようである。
☆もともと≪私学の系譜≫としての本質部分があるわけだから、新しく何かを付け加えるということではない。その本質部分を明確に意識する組織になるということだろう。
☆もしそうであるとするなら、男子校の社会的意義は大きく変わる転機になる。これもまた2012年の転機の契機であり、大いに期待したい。
☆たしかに同学園サイトでは、その兆しが熱い語りに表れ始めている。校長ブログには、こうある。
總一郎は、金儲けといった卑小な目的ではなく、とにかく事業を起こすのが好きでならなかったようで、稼いだ金はすべて次の事業に注ぎ込み、多岐にわたる事業(今日の名だたる一流企業の礎を築いたのですが、これについては今年は繰り返しません。銅像の裏の銘板を読むなり、図書館の記念誌やインターネットで調べるなりしてください)に手を広げました。そして驚くべきことに、江戸時代の終わりから明治にかけて、早くも遠く世界や日本の近代化に目を向けていた、今日言うところのグローバルな視点の大きさ、確かさと行動力には驚かされます。思うに總一郎は、理屈や権謀術数とは無縁の「行動の人」「実行の人」でした。
学園創立にあたって總一郎がまずしたことは、絶大な信頼を寄せて同志社大学から招いた水崎基一先生(遅刻坂を登りきったところにある黒い胸像)をアメリカに派遣して自分が目指す学校のモデル校とした実学中心のゲーリーシステムの視察でありました。そしてその後は、總一郎は創立の趣旨や教育についての自分の意見をまったくといっていいほど残していません。あとは初代校長・水崎先生を信頼して全てを任せました。金は出すが口は出さない。理屈ではない「行動の人」の面目躍如といったところです。一方、水崎先生は格調高い文語文で『建学の趣意書』を一冊の本として残していますが、その内容のごく一部を口語文に直して紹介すると、たとえば、「(浅野綜合中学)設立の当初から自分の頭に深く刻んでいたことは、実に中学教育は生徒の一生の性格を確立すべき最も重要な時期であるということである。人の性格は13、4歳から18,9歳までの間にその根本を築くものだが、この時期こそまさに少年の中学生活である。だからこそこの時期は人生においてもっとも重要な、(生徒が)困難を伴う青春の時期として、教育者が最も苦労しなくてはならないはずである・・・」、またそれに続けて「本校も最初から、この責任の重さを感じて、いろいろな面からまず人を作ることを中心として、その精力を傾けてきた・・」、さらには「学校もまた一つの社会であるから少年の時代に為すべきいろいろなことを経験させ、社会常識を養うことは中学教育において特に留意しなくてはならないと信じて、この10年の間そのことに努力してきた」とあります。
☆ここには、創設者浅野總一郎の起業家精神、学習組織のリーダーシップ、疾風怒濤の精神の尊重が語られている。つまり、「起業学」「学び学」「思春期学」の準備が示唆されていると読める。
☆そういう意味では、「①予備校的な授業の実行。②英語力の強化。③多言語による論理的思考とリベラルアーツによる教養の育成。」の軸足の中で、③に大きくシフトしようとしているということだろうか。
☆はじめからそうだったよと考えるのか、それは共有ビジョンではあったが、今後は外から見ている受験生やその保護者にも見えるように意識してアピールしていくと考えるかは同じようで違うのである。
☆3月5日の「プレゼン実習」のような学びのアピールは、後者の流れが生まれ始めているということを暗示しているのかもしれない。
☆一方で、後者の障害になる動きが存在するのも世の常であるから、その阻害要因を除くために、
①内省的オープンマインドの醸成
②メタ思考のプログラムの開発
③心理学から社会学的・科学的発想へのチェンジ
④イノベーション創発の行動力
⑤コミュニケーション革命
☆のような動きが見えてくるかどうか、今後に期待したい。
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