大学入試から見る中高一貫校[29]
☆聖学院の大学合格実績も、すでに昨年を超えるようである。来週にも全貌が見えてくるだろう。さて、実績向上の理由であるが、聖学院は、「学習する中高大組織を探そう」で書いたような「学習する組織」だからである。
☆聖学院生のメンタル・モデルは「オンリーワン・フォー・アザーズ(他者のために生きる個人)」である。このことは同校サイトの教育理念で説明されているが、たとえば、タイ研修旅行に行って戻ってきた生徒が持ち帰ってきたミッションを聞けば、そのメンタル・モデルが根付いていることがわかる。
☆また、教師の自己研鑽・熟達の目標が「サーバント・リーダーシップ」であることも同校サイトの教育理念でわかるが、たとえば、数学の教師が大切にしている生徒とのコミュニケーションのあり方にもそのリーダーシップが表れている。同校サイトにはこうある。
(大事にしていることは)生徒が考え質問する時間を教師と共に学べることです。質問こそ「学ぶ力」と「学ぼうとする力」を強化するのです。
☆学習する組織は、ビジョンを共有しているものであるが、聖学院が共有しているビジョンは、同校サイトの「聖学院中高の授業の質」のページを開けば、随所に描かれている。それは21世紀型教育の構築と実践で、「学んだ力・学ぶ力・学ぼうとする力」×「共に生きる力」のことである。
☆従来の日本社会の教育(いや現状の日本教育も)は、「学んだ力」という知識偏重型教育であったが、それではグローバルな世界で通用しないという先見性を実は建学当初から聖学院は持っていた。それを学内で共有ビジョンとして形にしてきたのである。
☆さて、学習する組織を形成する要素として、「チーム学習」という学び合いがある。教師間のチーム学習は、聖学院の場合は、たとえば、教科会議でのミーティングなどで実行されているのは、やはり同校サイトで紹介され続けている。
☆問題は教師と生徒、あるいは生徒と生徒との間のチーム学習である。一般にこれは部活とか生徒会活動とか体験学習とかにはあるが、授業の中に埋め込まれることは少ない。しかし、聖学院の場合、有志が参加して「学び合い」の授業を研究している。先の「聖学院中高の授業の質」のページには、こうある。
「授業フォーラム」――教科横断的に有志の教員が主体的に集まって実施している――で、英語を共に学ぶ「学び合い」の授業実践についてプレゼン・議論して研究を深めています。教師と生徒、生徒と生徒だけではなく、このような教師どうしも「共に学ぶ」過程が、生徒一人ひとりのモチベーションを高め、言語能力を豊かにする英語教育の質を形成しているのです。
☆そして5つ目の学習する組織としての要素は「システム思考」の存在である。これは知識と知識、知識とイメージを論理的にリンクスしながら、さらに社会や世界の矛盾を発見し、解決する思考のことであるが、平方先生によると、これについては、今後同校サイトで発信していくということである。授業においてシステム思考のプログラムはいかにして可能なのか?今後も聖学院の教育について目が離せない。
P.S.
ピーター・M・センゲの「学習する組織」の改訂版には、こうある。
システム思考がその潜在的能力を発揮するには、共有ビジョンの構築やメンタル・モデルへの対処、チーム学習、自己マスタリーというディシプリンも必要である。共有ビジョンを構築すると、長期的に全力で取り組む姿勢が育まれる。メンタル・モデルは、私たちの今の世界観にある欠点を掘り出すために必要な開放性に焦点を当てる。チーム学習は、人々の集団が、個人のものの見方を超えて、より大きな全体像を探すことができるスキルを高める。そして、自己マスタリーは、私たちの行動が自分たちの世界にどのように影響を及ぼすかを継続的に学習しようとする個人的な動機づけを育む。自己マスタリーがないと、受身的な思考回路(マインドセット:「ほかの誰か、または何かが自分の問題を生み出している」)にどっぷりと浸かってしまい、システム的な見方をひどく恐れることになりかねない。システム思考は、学習する組織の最もとらえにくい側面――個人が自分自身と自分の世界をとらえる新しい方法――を理解できるようにするものである。学習する組織の核心にあるのは、認識の変容である。自分自身が世界から切り離されているという見方から、つながっているとする見方へ、問題は「外側の」誰かか何かが引き起こすものだと考えることから、いかに私たち自身の行動が自分の直面する問題を生み出しているのかに目を向けることへの変容だ。学習する組織は、「いかに私たちの行動が私たちの現実を生み出すか、そして私たちはいかにそれを変えられるか」ということを人々が継続的に発見し続ける場である。
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