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中央大学理工学部 画期的能力開発アセスメント開発①

☆今月16日(金)、中央大学後楽園キャンパス3号館で、『中央大学「段階別コンピテンシー育成教育システム」報告会』が開催。

☆文部科学省の平成21年度「大学教育・学生支援推進事業」【テーマA】大学教育推進プログラムに採択された中央大学理工学部の教育取組である「段階別コンピテンシー育成教育システム」の事業成果及び今後の展望の報告である。

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(当日配布資料から)

☆育成する人材のコンピテンシーについて、中央大学のサイトでは、次のように説明されている。

コンピテンシーとは行動特性のことで、平易に表現すると、知識の習得だけではなくそれらを活用するために必要な力のことです。中央大学理工学部では、卒業後にこのような姿で活躍してほしいという人材像に基づいて、全9学科に共通する「コミュニケーション力」などの6つと、各学科個別の「専門性」、あわせて7つの主要コンピテンシーを指標として、システムを構築しました。

☆世の中わかりやすく表現しなければ、理解してくれないという配慮から、上記のような説明になっているけれど、はっきりと言うと、従来のハードパワー中心の日本の教育と研究では、グローバルリーダーは育たないから、ソフトパワーを育成するための能力を開発したということだろう。

☆ハードパワー中心の産業社会では、難しいことは研究者がやればよいのであり、経営者や営業マンは、できるだけわかりやすく表現せよとか能書きはいらないといわれてきた。しかし、ジョブスのプレゼンは見事だけれど、けしてわかりやすくはない。でも聴取は共感する。なぜか、わかりやすい表現を押し付けるのではなく、聴取者が自分で考えながら聴解していくプレゼンだからである。

☆しかし、それにはソフトパワーを大切にする、つまりはリベラルアーツを大切にする社会的あるいは教育的、すなわちソフトパワー中心の学校化社会が必要なのである。

☆日本にはその学びの背景が喪失しているから(かつてあったといえるかというと吉田松陰のような時代にはあったかもしれない)、そこを人工的に創らねばならない。中央大学理工学部の試みは、そこにあったのではないか。

☆知識よりも思考だとか、やはり知識がなければ思考はできないという相変わらずの評論がなされている昨今にあって、両者を統合するベクトルプログラムをさっさと創ったということである。その成果が発表されたわけであるが、たいへん興味深い結果と期待が投じられたようだ。

Img010_2(当日配布資料から)

☆段階別コンピテンシーとは、7つのトピック・コンピテンシーと30以上のディテール・コンピテンシー、それに5つの段階(レベル)の階層構造というかマトリクスになっている。上記のレーダーチャートはそれらの諸関係がわかりやすく表現されているから、イメージしやすいだろう。

☆これによって、学生は、自分のコンピテンシーの成長とそれに伴う知識獲得力や活用力などの相関を実感できる。また、すべての項目を最高レベルにもっていくことを目的にすることもよいが、限られた大学時代においては、直面する課題や対応する課題に応じて、自分の強みや弱みのバランスをとりながら、戦略的に(教育的には方略的に?)コンピテンシーを構成して立ち臨むことが可能になる。

☆態度主義や心理主義、道徳主義的、権威主義的な研究の指導やモチベーションのカウンセリングから、認知科学的な、つまり何をやったらよいのかスキルベースで目標達成の計画を学生自身が組み立てられる(再構築)人材育成プログラムが開発されたわけである。学びのコペルニクス的転回!高等教育のみならず中等教育にも有効なプログラムだし、ギャップタームや秋入学などの制度論的大学・教育改革とはまた違う、認知科学的大学・教育改革という位置づけになるのではないだろうか。

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