変わる私立中高一貫校 21会 in 富士見丘③
☆21会のメンバーは、SATやIBについて熟知しているので、≪KNOWLEDGE≫が、たんなる暗記しなければならない「知識」という意味以上の広がりや深さを持っているという了解をしている。
☆今回は、渡辺校長からMITメディアラボのシーモア・パパート教授の理論の話が出たりしたので、同じくMITのオットー・シャーマー博士の「U理論」というマネジメントやリーダーシップのイノベーション理論をたたき台にして戦略を話し合った。
☆また渡辺校長はあえてドラッカーの著書を道標にして語られていたが、これは最近「もしドラ」などで再び人気の経済学者であり、コンサルタントであるからであるが、ドラッカーの背景には、ハンス・ケルゼンやフロイト、シュンペータ―などがあり、要素分解主義vs.関係総体主義の問題意識が根底にあり、イノベーションを重要な概念として認識していたからでもある。
☆U理論もその認識の延長上にあるし、ドラッカー同様に、経済領域だけではなく、教育の領域でも応用が可能な理論である。オットー・シャーマーは、「学習する組織」の著書ピーター・センゲとも親しく、21世紀型教育の根底思想とアイデンティティを有しているのである。
☆上記の図は、その「U理論」をもとに絵にしたわけだが、それによると、≪INFORMATION≫は文脈を持っていないから≪KOWLEDGE≫ではないというのである。その意味で、≪INFORMATION≫は、日本の教育界で使う暗記しなければならない「知識」に相当する。
☆そしてU理論における≪KNOWLEDGE≫は、IBの≪TOK=Theory of Knowledge≫の意味に相当すると21会では考えている。かえつ有明の石川副校長によると、同校の高校で行っているTOKのプログラムは、知識の理論とは決して訳さないのだと。TOKのKは知識ではなくむしろ思想とか思考とか認識の意味に近いのだと。
☆なるほどU理論で、オットー・シャーマーは、≪KNOWLEDGE≫を図のように三層構造でとらえている。上層が「形式知」で、中層が「暗黙知」で、下層が「解体知」ということになるのだろうか。
☆一般に流布している「知識マネジメント」は上層と中層の二層構造だけれど、U理論はさらにその下層の構造を設定している。富士見丘の教頭大島先生は、この構造の三層目はフロイトの無意識やユングの集合無意識に近い発想で、21世紀型というよりはむしろ古典的かもしれないと高い見識を披露されていた。
☆21会としては、大島先生のクリティカルな視点を熟慮し続けることを忘れずに(宮台真司さん的には、ここは「未規定性」というこなのだろう)、しかしながらこの三層目を受け入れることは、目先の形式知、いやそれすらないU理論でいう意味での「インフォメーション」で報告書や審議会のレポートを編集している文科省のような官僚表現に対応するという意味で、きわめて重要である。
☆吉田先生及び渡辺先生のスピーチは、決して「インフォメーション」レベルではなく、たしかに三層構造がきちんと含まれていた。
☆受験市場の中には、よく校長の話が長いから短くしろなどという暴言をはく方がいるが、それはあくまで「インフォメーション」としてしか表現をとらえていないからである。しかし、グローバリゼーション、リベラルアーツ、イノベーションという21世紀型教育を語るとき、インフォメーション以上の話をするとなると、U理論の示唆する≪KNOWLEDGE≫の三層構造を話すわけである。これがある意味教養であり、私立中高一貫校の表現は、バランスや妥当性はもちろん重要であるが、インフォメーション以上の三層構造の≪KNOWLEDGE≫であってよいのである。
☆もちろん、それを共感できるように表現しなければならないわけであるから、動画やPPTのイノベーション活用は重要になってくる。ともあれ、≪INFORMATION≫と≪NOWLEDGE≫を明快に使い分けしていこうという話になり、U理論や21会のいうナレッジを、今後≪NEW KNOWLEDGE≫と表現することにする。
☆そこが明快になれば、現段階では、≪NEW KNOWLEDGE≫より≪INFORMATION≫にまずは反応する消費者に対し、戦略的に≪INFORMATION≫に≪NEW KNOWLEDGE≫をぶら下げながら広報活動ができることになる。
☆あるいは、メディアツールの違いによって、≪INFORMATION≫か≪INFORMATIONと多少のNEW KNOWLEDGEの融合態≫か≪NEW KNOWLEDGE≫か、いずれかを役割分担しつつリンクする方法を組み合わせることができる。
☆教育のイノベーションと生徒獲得戦略のイノベーションを21会は生み出すことになるだろう。とにかくそうしない限り、21会校の数は、全国の公立私立合わせた中学の数のまだ0.05%に過ぎないのだから、まだまだ多くの受験生・保護者とそのエッセンスを共有できないのである。もっとも、そういう難しい課題がイノベーションを生み出すものである。
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