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共立女子 未来への伝統 卒業式と入学式で

☆3月18日、共立女子で卒業式が行われた。3・11以降、人間にとって失われたものを回復しようという転機が訪れているが、その象徴が「ヒロシマ―フクシマ」という言葉に表現されている昨今である。実は、同校は、この歴史的な「喪失感」の回復に関係している。同校の渡辺校長は、卒業生に「贈る言葉」をこう語った。

さて ちょうど 皆さんの生まれた年にEUは成立しました。EUと共立女子学園は 不思議な縁で結ばれています。それは EUの父といわれているクーデンホーフ・カレルギー伯爵の本を 初代学園長 鳩山春子の長男である 鳩山一郎元総理が翻訳し 『自由と人生』という題で出版しました。「友愛思想」に共鳴した鳩山一郎の意思をついで 昭和四十二年に当時の学園長であった鳩山薫が 人間の相互尊重 相互理解 相互扶助を基調とした 「友愛」 を校訓に加えて現在に至っています。カレルギー伯爵はこの年に来日し この共立講堂で講演も行なっています。

六年前 憧れのセーラー服に身をつつみ 入学してきた皆さんは 中高完全一貫の一期生の生徒となりました。中高一貫の成果は 見事に結実したと言っていいでしょう。皆さんは 本校の伝統と校風を高め 輝かしい一ページを歴史に書き加え 今ここに 胸を張って巣立ってくれることを嬉しく思います。 これまでの活躍に対し 賞賛と拍手を送ります。皆さんの業績は 在校生が本校の伝統として しっかりと受け継ぎ 更に発展させてくれることと思います。

日本や世界は大きく変化しています。 皆さんが これからあゆみはじめる現代社会の その中で私たちに求められることは何でしょうか。それは相手や 人に尽くす心です。そしていつの時代にあっても 他人の痛みを理解できる おもいやりの心です。

かつて 大航海時代に コロンブスやマゼランは 北天に輝くゆるぎない 不動の北極星をみちしるべにして 未知の大陸や 新航路発見へと 大海原に漕ぎ出していきました。共立には「誠実 勤勉 友愛」という校訓があります。これをみちしるべとして 新たな世界に挑戦して欲しいと思います。

☆この3つの校訓のうちの一つ「友愛」は、カレルギー伯爵来日のときに追加されたのはいうまでもない。近代の民主革命の3つのキーワードの「自由」「平等」「博愛」のうちの「博愛」を鳩山一郎が「友愛」と訳したのである。

☆EUの父クーデンホーフ・カレルギーの母親は、日本人「ミツコ」である。それゆえ、日本人の血も流れているのであり、世界の痛みを引き受けるミッションを抱いたのだろう。唯一の原爆の被爆国である日本は、核なき世界を目指そう。自由はアメリカとフランスが革命で手にした。平等はロシア革命が果たした。しかし、友愛革命は、これから日本が起こす使命があるとカレルギー伯爵は語ったのである。

☆そして、今度は「フクシマ」である。ますます「友愛革命」の使命を負わねばならない歴史的必然性の中に日本はある。

☆今年共立女子から東大に合格した卒業生に私は会ったことがある。彼女が中3のときである。何かのインタビューのときに立ち会っていたのであるが、そのときにインタビュアーから、クーデンホーフ・カレルギーと共立女子の関係について話を聞いた彼女は、そんなことがあったなんて、知りませんでしたが、国際関係の仕事を考えていたので、共立女子との出会いを感じます。そして誇りさえ感じますと語っていた。どうやら、今もその夢を実現しようとしているようだ。

☆4月6日、共立女子では新中1の入学式を催した。満開の桜の中で。渡辺校長は、次のように語って心から迎えた。一部をご紹介しよう。

共立女子中学校の母体である「共立女子職業学校」は大日本帝国憲法が制定される以前まだ女子教育が低調で 小学校卒業後に進学する学校がない時代に設立されました。 「質実勤勉で実際に役立つ婦人」 つまり 女性が自立し 社会人として活躍することを目指したのが 本学園の建学の精神であり これは 時の移ろいにも 社会の変化にも流されることなく 現在まで 継承され続けて来ております。

本校は 創立以来 長い歴史と 伝統を持つ 学校として これまで 多くの卒業生を 送りだしてきました。建学以来の校訓は 皆さんが これから学ぶ 共立の教育について 基本的な 考え方を 示しております。その校訓とは 「誠実」「勤勉」「友愛」の三つのことです。「誠実」とは 心をつくし 自己を律することです。 「勤勉」とは 努力し 何事にも意欲的に取り組むことです。 「友愛」とは 思いやりの心をもって 他人の痛みをわかることです。この 長い伝統に 培われ 卒業生たちによって 今日まで 築かれてきた 「誠実」「勤勉」「友愛」という 良き校風を 皆さんも 受け継いで 楽しく そして充実した 中学校生活を 送られることを 望んでいます。

さて 今日から中高一貫教育の六年間が始まります。 この六年のなかでは 良い時もそうでない時も あると思います。能の大成者である世阿弥は 「初心忘るべからず」と言っています。 最近では 「初心に帰る」とか 「初々しい気持ちを忘れないように」という意味で 使われることが 多いのですが、そうではなく 「初心」とは 「若いときの未熟な状態」を指しており 「初心忘るべからず」とは、能を上手に舞うことができても 自分に未熟な時期があったことを 忘れるなと常に謙虚な心を持つことが大切だと言っているのです。

 
皆さんは 一人ひとり 素晴らしい素質と 優れた能力を 持って 入学してまいりました。これからはさらに 素直さと 自立の精神をもった 心やさしい 個性あふれる女性として 成長してくれることを願っております。長い人生において 良い時に慢心することなく悪いときにはくじけず 生きていってほしいものです。

わたくしたち教職員は 心をひとつにして 力を合わせ新入生の皆さんや 保護者の方々のご期待に十分に応えられるように指導にあたってまいります。

☆「坂の上の雲」にも登場するのが、「共立女子職業学校」である。ここに通い、卒業後に母校で教鞭をとった一人に、正岡子規の妹である律がいる。時代は日露戦争である。日本が近代に進むとき、その矛盾を耐え抜いた女性の人生に活路を開いた女学校であった。

☆第二次世界大戦後は、「友愛」という校訓を追加するのであるが、この「友愛」は「共立」という言葉の中にすでに存在した。それを発見したのは国語科である。共立の伝統的教育に作文教育があるが、その作文集の名称は「ともだち」という。「共立」を訓読みすると「ともだち」になるからである。

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