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ダイソー矢野社長の自己変革の話

☆「日経ビジネスONLINE2012年4月3日(火)」の記事『潰れる恐怖から店をオシャレにしました」 ザ・ダイソー矢野社長の“進化” ブランド・ジャパン2012 9位の「ダイソー」』(広野 彩子さん) は、興味深い。

☆矢野社長の歯に衣着せぬ言い方や飾らない表現に真理が表れている。幾か所か抜粋してみよう。

お客様の変化について、セリアが緻密な分析でつかんどった分、うちが遅れをとったということです。しかも遅れがあまりに大きかった。これは大変だ、と思って必死に巻き返しを図ってきました。

6年ぐらい前までは「ダイソーはつぶれる」という確信を持っていました。というのも、生まれてきたものは皆死ぬのが宿命だからです。そもそもダイソーなんて底の浅い商売ですから、やがてつぶれるに決まっている、と分かっていた。でもいつの間にか、「それでももういいかな、つぶれたら誰かが買ってくれるかな」と思うようになっていました。

☆「底の浅い商売」とは謙虚なのか自虐的なのかわからないけれど、まずは己の姿を正直に理解していたところがスゴイ。もちろん、本当は、底が浅いどころか、商売を行っているスタッフの心意気は広く深いということに誇りを持ち続けていたところが凄いのであるが。

変化に気づくことの遅れにつながりました。好調な時の油断を戒めることわざはたくさんあるけれども、少しでも努力を怠ったり、基本的なことを忘れたりした瞬間、あっという間にこうなるのだと思いました。

店はボロボロ、什器も古くなり、商品もボロボロ。これまでの人生でも相当努力してきたつもりだったけれど、年を取ると、それ以上の努力をせんといかんのだと分かりました。放っておいても売れる時代環境を味わったので、そのことが会社を蝕んだように思います。正直、勘違いしてしまった部分があった。

僕のやることは最近、ことごとく否定され始めていたんです。僕の考え方は、過去の積み重ねからきた理論なので、今の世の中では全く通用しない。本当に、難しい時代になりました。進化しないと世の中でうまくやっていけない、と曲がりなりにも知っていました。それこそ、誰もそのようなことを声高に言わなかったころから知っていました。

でも、私の「進化」は「常識の範囲内の進化」に過ぎなかったんです。進化というのは、大きく自分を否定して、「このままじゃ生きられない」と心底感じて、完全に変わっていくことを指すんですね。

☆これは本当に難しい判断。「常識の範囲内の進化」ではなく「完全に変わるのである」という判断。ここは、私学人に聞いてみたいところである。完全に変わった学校もあるし、それを途中であきらめた学校もある。前者はやはり進学実績もよいし、学内の雰囲気がとにかくよい。それに比べ、後者はガタガタである。

☆前者の理事長・校長は、会う人会う人に皆様のおかげですとステークホルダーを大切にする声をかけ、後者の理事長・校長はスケープゴートをつくって責任回避をする。

船が沈みかけていたのを、社員が持ち上げてくれた。ダイソーの弱いところは、店長のやる気次第で変わるところでしょう。以前と同じことをしたがりますしね。若くて優秀な社員が、そこのところを頑張って、一気に変えてきてくれました。船が沈みかけていたのを、努力を重ねて社員が何とか持ち上げてくれた。売上高も、2012年3月期で3423億円と過去最高を見込んでいますし、純利益も12%増の見通しです。

☆これは、今では、ダイソーは学びの組織になっているということを示唆している。学校も同じである。担任や学年主任次第で、生徒のモチベーションは変わる。以前と同じことをしたがる担任や学年主任を変える学びの組織を形成できるか、そこがカギであるということだろう。

日本は酷い国になったと思います。当社が年商30億円ぐらいのとき、ダイエーに場所を借りに行くときは身が引き締まったものでした。怒られるし、指導されるし、厳しく色々と教えていただいた。しかし、ダイエーの経営が2000年前後におかしくなる前後から、ダイエーの社員が「飲み食い中心」、つまりは接待中心の選択をし始めた。

船が沈み始める頃から、自分だけは生き残りたい、いい思いを少しでも味わいたい、そんなことを思うようになる。人間の心理ですね。つぶれる会社というのはまず社員の心、ソフト面からおかしくなって、それが間もなく店や商品などハードに現れるんです。ひょっとしたら日本という国の状態も、今そうなのではないでしょうか。

☆ソフトパワーを大切にしない組織は危ない!!ということ。

今の日本で期待できるのは、女性の力でしょうね。今回の商品改革も、青野美恵子専務が中心になって取り組んできた。一つひとつの商品に対する思い入れがわしらとは全く違う。彼女が1つの商品の説明を始めると、もう止まらない。それにもっともっと良くしたい、理想通りの商品にしたい、という執念と私情がこもっている。一方で男は、ぼーっとしているし気が利かないし、「もっと良くしたい」という「もっと」がないですね。

(戦争のない)平和な時代は、女性のチャレンジ精神と向上心が重要です。女性についていけるよう、男の方の軌道修正が大変ですよ。今は、女性の時代だとつくづく思います。

☆女性がリーダーシップを発揮できる組織!がダイソー。底の深い商売ではないか。

 

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