« 聖学院 知られざる実力を公開② 「思考力セミナー」 | トップページ | かえつ有明 今春卒業生が中学3年だったころ »

「10代からの哲学」ベースの入試に期待

☆4月の新刊に「中学生からの対話する哲学教室」 [玉川大学出版部 2012年4月] シャロン・ケイ (著)、ポール・トムソン (著)、河野 哲也 (監訳) がある。

Philosophy_for_teens

☆立教大学教授の河野哲也さんが監訳。昨年は東大や早稲田の現代文の入試で、河野さんの「意識は実在しない」の冒頭部分が出題されたから、今回の本は中学入試でも活用されるだろう。

☆もちろん、現代文の読解と言うよりも、各教科のものの見方で出題されるか、聖学院の「思考力テスト」やかえつ有明のサイエンス科の「作文入試」などのように、日常の知識だけで、広く深く考える問題で取り扱われる可能性大である。

☆あるいは教職課程の教養の試験でも活用されるかもしれない。基本的にはコールバーク/ハーバーマスの道徳とコミュニケーションの理論をブレイクダウンしたものだろうから、あるいはサンデル教授の正義論をもっと基礎的なところから組み立てているから、教育関係者は注目せざるを得ない本なのである。

☆それにしても、日本語版解説では、日本の公立の先生方は、今回の学習指導要領で話し合ったり議論したりするような言葉力と思考力を本格的に求められるようになったから、そういう意味では、このアメリカの公立学校の教科書は大いに役立つだろうけれど、まだまだ対話や議論、まして学び合いの仕掛けを授業で展開するのは難しいだろうから、サイレントダイアローグ・ワークシートでまずはチャレンジしてみようと、ワークシートの付録までつけてくれている。なんてケアが行き届いているのだろう。

☆それはともかく、中学入試でこの教科書にあるようなビッグ・クエスチョンを投げかけるようになると、偏差値重視の入試制度は少しは変わるかもしれない。

☆ストラスブール大学の学生10人くらいにちょっとインタビューしてみたが、PISAのような学力観は、フランスが拠点で行っているのだから、さぞかし興味関心が高いだろうと思ったが、まったくその逆だった。

☆フランスでは高校の卒業資格テストであるバカロレアそのものが、すでにオール小論文形式だから、情報を収集分析するだけではなく、論理的に組み立てたり、批判的な視点をきちんと入れているのは、PISAのように思考をカテゴライズしなくても、当たり前なのであると。

☆アメリカの大学も、SATなどの量的スコアもアプリケーションの条件の一つであるが、一方でステートメントのような自分の体験に基づきながら公共的な判断力をアピールするライティングの力も条件の一つである。

☆したがって、思考力や判断力を育成する「哲学」そのものを学ぶチャンスを作っているのは、制度上も無理のないことなのである。

☆ところが、日本の場合、そのようなグローバルな世界につながる意志のある学校しか、このような新しい学びは必要ではないのである。大学入試制度が違いすぎるからだ。

☆逆に言えば、このような哲学対話ベースの中学入試を出題しない私立学校は、ビジョンとしてグローバル人材をと唱えても、現場の教育ではそのビジョンは空回りしているということだろう。

☆もともと入試問題とは、問いの塊である。知識をどれくらい覚えているかを問いかけるのか、思考そのものを回転させる問いを投げかけるのか、そこでその学校の教育の質が見えてくる。

☆サンドラ・ブロック主演の「幸せの隠れ場所」をみると、以上のことがよくわかるだろう。

|

« 聖学院 知られざる実力を公開② 「思考力セミナー」 | トップページ | かえつ有明 今春卒業生が中学3年だったころ »

教育イノベーション」カテゴリの記事