かえつ有明 伸びる学力の表現に向けて
☆すでに「東洋経済を読む 本当に強い!中高一貫校2012」で紹介したように、6年間で伸びる学校ランキングで3位に入っているかえつ有明。今春、6年前に新生かえつ有明が誕生してようやく一期生が卒業した。そしてその大学進学の大きな成果に学内外驚いた。
☆6年間、生徒の知識を情報の収集や記憶の段階から、いかに思考する段階に広げ深めていくかという新しい学び方に、教職員は一丸となって挑戦してきた。そのうえでの成果だけに、21世紀型教育実践の手ごたえをしっかりと感じているようだ。
☆この実感は、現在校生にも浸透し、学校は活気のある雰囲気に包まれている。まずは、5月26日(土)、部活を中心とするオープンキャンパスが開催されるので、そのプラスイメージを共有してくることをおススメする。受験生にとっても、成功する雰囲気とシンクロすることは、語りえぬ貴重なモチベーションを内側に灯すチャンスであるからだ。
☆さて、その内側に灯るモチベーションだが、これはどこから生まれてくるのか?言うまでもなく、6年間で学力を伸ばし豊かな成長に導いたかえつ有明の学びの方法にある。
☆それがいかなるものであるのか、学習部長の足立先生にインタビューする機会を得た。
「生徒が自ら学んでいける環境を作ること。この一言に尽きますが、その環境が何かということになると、非常に複雑なシステムがスムーズに回転するように教職員が一枚岩になって運営してきたということになるでしょうか。」
☆このパラドキシカルな表現で、ピンときた。麻布や開成の先生方の表現に似たものを感じるのである。要するに通り一遍ではない言い方。個性が大事だというけれど、一般に語られる個性は結局個性でないからねなどという表現がそれだ。
☆湯川秀樹なら現実は複雑だけれど、それを生み出す原理はシンプルだよと語るそれである。ポランニーだったら、暗黙知と形式知だと。そういう知性の雰囲気があふれている学校がかえつ有明なのだろう。そんなことを思っていたら、横から副校長石川先生が参入してきて、こう語った。
「教科を担当するという演出家、担任というディレクター、進路指導というプロデューサーのようなロールプレイをしてきたことが、チームかえつとして、一枚岩になれたことかな。その舞台裏の複雑系が、主役である生徒一人ひとりのタレントを生み出してきたと思うよ。優秀な役者は、受け身ではよい表現ができないんだね。基本は演出家やディレクターなどに学びつつ、自らの才能を開花していける自立した判断力や学ぶ力が育たないとということだよ。」
☆そして足立先生は、こう続けた。
「生徒には、いろいろな表現のチャンスがあります。クラブ活動、行事、サイエンス科の探究活動、そして実は成績も表現の機会。大事なことはその表現を、私たちが真摯に受け入れ、反応を返すことです。ある意味、私たちは、生徒たちの応援団だったりファンクラブのメンバーだったり、観客だったり。教える側から見る側に転じるわけです。そのとき生徒は教わる側から表現する側に転じるわけで、その立ち位置の逆転が、モチベーションを育て、興味や関心、好奇心を生み出しているように思います。」
☆そういうコミュニケーションはどうやって作り出しているのだろうか。尋ねてみると、
「とにかく、教職員が対話や議論をすることです。それに面談の場面では、コーチング的な手法も取り入れています。今年からはもっと力を入れようと思っているのですよ」と。
☆一期生の進路分析についても尋ねてみると、
「今分析中です。すでに分かっている部分もありますが、もう少し全貌が把握できたところで学校説明会などでも公開していくことになると思いますから、お待ちください。この分析内容は、シラバス、定期テスト、面談、進路指導など多様な領域で、活用していくものになるでしょう。そしてそれがかえつ有明の知恵をさらに豊かにしていくと思います。」
☆伝統とは、ただ年月が重なっていくだけではなく、OB・OGの知の遺伝子をしっかり継承していくサイクルをつくっていくことなのである。そのサイクルは生態系のように内的には複雑ではあるが、葉を広げ、花を開き、実を結ぶその姿は、実に美しい。かえつ有明の美学がそこにはある。
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