富士見丘 EUにもネットワーク
☆ストラスブールでのワークを終えて、今フランクフルト。帰国の準備をしながら、あまりネットを見る時間がなかったので、私立学校の動向をサーチしていたら、富士見丘のサイトにこんな記事が載っていた。
5月16日(水)、富士見丘高校1年~3年の有志41名が駐日EU代表部を訪問し、交流イベントに参加しました。駐日EU代表部は日本における欧州連合の拠点で、EU全体の外交を担当、日本との交流・理解を深めることを目的としています。
学校からバスで南麻布に移動、駐日EU代表部に到着すると、他の参加校3校とともにホールでEUについてレクチャーを受けました。EUは「多様性の中の統合(United in Diversity)」をキーワードに、いわば一つの国家としてまとまった活動を行っています。
☆富士見丘は、ロンドン大学キングスカレッジ、クイーンズランド大学の指定校推薦制度を導入したり、アラブ首長高連邦と交流したりとかなりの国際派であるが、英語以外の多言語主義のEU本体とコミュニケーションをとりはじめたとは、またまた驚愕。
☆今たまたま当地にいるということもあるが、EU危機の歯止めがなかなかきかない昨今であるから、ますますこのコミュニケーションは興味深い。EUの政治の拠点ストラスブールは、公平性が第一の都市という感じで、いっしょにワークをサポートしてもらったストラスブール大学の学生も、今回のオランド大統領就任には、賛成派が多かった。
☆しかし、EU経済の中心フランクフルト(ストラスブールから車で2時間30分)は、ストラスブールではそれほど表にでていない(シティは観光地だからでもあっただろう。当然格差はある)格差の図式が明快に映し出されている。
☆フランクフルトの中央駅からかなたを眺めれば、虚空は高層ビルが、EU金融市場の象徴のごとくそびえている。しかし、写真では写っていないが、裾あたりは、どことなく荒廃している。警察がなにやらホームレスを囲んでいる姿も目に付く。
☆実は、ストラスブールという地にEU議会があるのにはそれなりにわけがある。それはこのアルザスの地で、チャーチルが1つのヨーロッパをという演説をしたということに因んでもいるのだろうが、それよりも、アルザスという地政学的歴史そのものが重要である。
☆単純にドイツとフランスの幾度もの戦争があったということだけではない。その戦争によってアルザス人がドイツ軍とフランス軍に分かれて戦わねばならなかったという第二次世界大戦の凄惨な人間の悲劇があったからだ。
☆戦争はそれだけで、悲劇であり許せないのであるが、人間の存在のアイデンティティを引き裂き、その傷が深く時を超えて心をえぐり続けるという凄惨な生き様を強いるという意味で絶対にしてはならない。
☆そして、このアイデンティティを引き裂く行為は、大きな戦争ばかりではなく、姿を変えて襲いかかって来る。それゆえ、それを防ぎ、その凄惨さを忘れないためにも、EU全体が負い目を追っているアルザスの首都ストラスブールにEU議会や人権裁判所を設置したのである。
☆それに、これを心の底から感じ、想像力が豊かであることが、このときばかりは幸せではないと身も心も震えて感じる場所がアルザスにはある。マジノライン―メモリアル―ナッツビルの強制収容所という一連の場所である。
☆ここで起こったことは、その状況は違うかもしれないが、今も続く戦争、パワハラ、いじめ、偏差値、優勝劣敗などと同じ痛みの構造である。
☆しかし、わたしたちは、日常生活の中で「ゆでがえる」状態になっている。この状態から脱するにはどうしたらよいか。1つの国、1つの言語、1つの文化に居つづける自分をまずは解放することだ。
☆そのためには、英語圏だけではなく多言語圏の国と交流をすることが極めて重要である。経済的なグローバリゼーションにはたしかに問題がある。しかし、一国主義の政治も問題があることは説明するまでもない。
☆本当にグローバルなリーダーを育成するには、この痛みの構造を理解し、解放する構造のアイデアを生み出し、活動できる人材の環境を設定しなければならない。そこに挑戦しているのが富士見丘なのである。
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