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高校早期卒業制度 2年間で

☆朝日新聞(2012年6月2日)によると、

文部科学省は1日、高校を2年~2年半程度で卒業できる「早期卒業制度」を導入する方針を固めた。成績が一定以上の生徒を対象とし、大学進学を前提とする。優秀な高校生が早く大学に進める環境を整え、国際社会で活躍できる人材の育成を促す狙いがある。

☆学校教育法の改正によって、

例えば高校を2年で卒業して大学に「飛び入学」したり、2年半で卒業して秋入学が主流の海外の大学に進学したりすることが可能になる。

☆ということのようだ。すでに「飛び入学」(1997年)の制度はあるが、飛び入学者は「高校中退扱い」だったため、なかなかこの制度活用は進まなかった。そこで、それをも払しょくしようということのようだ。

☆4日に開かれる国家戦略会議で方針を報告し、中央教育審議会での議論を経て学校教育法の改正を目指すとのことだ(日本経済新聞2012年6月2日)。

☆もし改正されることになると、これは実際には、凄まじいことになる。学力格差を競う競争が激しくなり、受験市場は活性化する。少子高齢化で危機に直面し続けてきたが、浪人生が一度に2倍になる可能性がある。

☆さらに、通信制高校進学者がさらに増えることになるだろう。全日制の高校では、実際には2年間で卒業するのは難しい。通信制だとそれが可能である。そうなると、日本の高校を卒業して秋入学の体制に向けて準備できるだけではなく、海外大学へのアクセスの準備もできる。

☆TPPが進めば、それはますます大きく展開していくだろう。それにEUの大学は、イギリスは例外としても、多くは英米よりも学費は安い。それに英語とフランス語やドイツ語ができれば、高校卒業していればアクセスしやすくなるから、そちらも増えるだろう。

☆また、いわゆる中堅私立中高一貫校の中には、国内難関大学コースと国際教養コースをつくり、東大と海外大学の道をさらに強化するだろう。国内大学の模擬試験の偏差値が低くても才能のある生徒が、海外の大学に進むことによって、世界を洞察する能力を深く広くする人材を輩出することになる。

☆この流れができれば、企業も就活方法を変えるはずだ。国内大学からの就活対応と海外大学からの就活対応は積極的に別スタイルのものをつくるだろう。

☆これによって、国は高校への財政出動を3分の1カットでき、さらに半分くらいの国立大学の廃校を進めることができる。これによって、実質教育の民営化を進めることになる。表面的には、教育に対し「大きな政府」であるが、それは義務教育までで、それ以上は手離れよくするということである。

☆私立中高一貫にとっては、5年間は学習指導要領の拘束があるが、最後の1年はなにをやってもよいことになる。この創意工夫は公立学校は難しい。一方難しいことはせずにひたすら学習指導要領の項目をこなしていく通信制高校も私立中高一貫校とは別のスタイルで実質指導要領から自由になる。もちろん私立の通信制高校の話であるが。

☆制度変更によって、教育の市場を活性化しようという文科省の慧眼の成せる業か諦めの心境なのかは知る人ぞ知るである。

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